2021.11.22
ENN11月25日号 特集:「プラントライフサイクルをカバーする、エンジニアリングIT」
[日揮]
デジタルツインを活用した設備保全の高度化を実現
「INTEGNANCE VR」プロトタイプ版を提供開始 |
日揮は11月1日、国内製油所や石油化学・化学プラント向け保全サービスブランド「INTEGNANCE」事業の一環として、3Dビューア「INTEGNANCE VR」のプロトタイプ版の提供を開始した。
提供が開始された3Dビューア「INTEGNANCE VR」は、既存プラント全体を360度画像カメラで撮影した360°パノラマ写真上に関連データをタグ登録(アノテーション)することで、各機器や部材の相関関係を可視化する、いわばプラントの「ストリートビュー」を実現できる。これにより、プラント内のあらゆる情報に視覚的に迅速にアクセスできるため、広大な敷地を保全に関わる実務者の運用・保守業務を大幅に効率化できる。
「INTEGNANCE VR」では、360°パノラマ写真と3Dスキャンから生成する立体モデルである3次元形状モデルを組み合わせた3次元情報でプラントの各設備を認識できるため、事務所のパソコン上で現況測量が可能になる。
同時に、画像領域を分割するAI技術であるセマンティックセグメンテーションにより、プラントに数十万点あると言われる配管の自動抽出を可能にし、これまでデジタルツイン導入の大きな障壁となっていた「空間データの構築作業」を簡略化できるのが大きな特徴だ。
11月1日から、「INTEGNANCE VR」を、これまでに実証実験に協力した顧客に対して、ビューアのプロトタイプ版を無償で提供し、そのフィードバックを基にしたシステムの改善を経て、2022年度中の本格的な商用化を計画している。導入にあたっては、既存プラントの360°パノラマ写真撮影から実空間のレーザー計測などの、導入に必要なセットアップ作業も、一気通貫で日揮が支援する。
日揮は「INTEGNANCE VR」の開発において、スタートアップのArent社を共同で取り組んだ。
開発は、日揮がプラントの保全における課題とその解決方法の理想を提案して、Arent社がその提案に対して、ツールを活用して解決方法を提案するという形で進んだ。
Arent社は、千代田化工建設やJFEエンジニアリングとも協業しており、プラントの専門用語を理解できるほど、この分野には精通している。
Arent社が強みとする最先端の3次元テクノロジーを活用でき、AR(Augmented Reality:拡張現実)とMR(Mixed Reality:複合現実)などの複数の空間表現手法をVR(VirtualReality:仮想現実)と重ねることで、物理世界とデジタル空間の融合を実現する。
こうした最先端技術を活用することで、日揮は直感的で、圧倒的に利便性の高いデジタルツインを基にした、新しい保全スタイルの確立を目指している。
将来的には、「INTEGNANCE VR」を起点に、プラント事業所内の設備管理部門、製造部門、保安部門といったそれぞれの部門の業務を横断する仕組みを構築することで、複数の事業所をまたいだ全体最適を可能にする保全プラットフォームを実現し、国内にとどまらず、海外においても、プラントメンテナンスの課題解決に貢献する。
360°パノラマ写真と3Dスキャンから生成する立体モデルである3次元形状モデルを組み合わせた3次元情報を活用した「INTEGNANCE VR」を活用すれば、オフィスにいながらにして、プラントの状態を認識できる。
そのデータから、プラントの保全計画を立案できれば、これまでに以上に容易に的確なメンテナンスが可能になる。
デジタル技術が、より容易で的確なメンテナンスを可能にすると言えるだろう。
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