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【連 載】CSTが提案するプラントライフサイクルデータマネジメント     
  第7回 エネルギー管理におけるPLDMの役割を考える
    千代田システムテクノロジーズ株式会社 川合岳児 大上宝朗 2015.12.10

1. はじめに

1973年の石油ショックを契機に化石燃料資源の有効利用に資する為、日本で省エネ法が制定されて、すでに30年以上が経過した。1993年の省エネ法改正以降、日本の産業部門は年率1% のエネルギー消費原単位削減を目標にエネルギー管理に努め、世界各国からエネルギー利用効率のトップランナーと目されている。

またグローバルなエネルギー管理の指針として、2011年6月に制定されたISO 50001のエネルギーマネジメントシステム(以下、EnMS)がある。EnMSとは、再生可能エネルギーも含むエネルギー使用に関して、方針・目的・目標・手順を設定し、体系的・計画的にエネルギー使用に係わる活動を管理・実施できるようにした仕組であり、かつ、実践の仕組作りに必要な要求事項を定めた「規格」である。

今後、EnMSは世界標準として広く各国で活用されることが予想されており、2014年末時点のEnMS認証サイト数はグローバルで6,778件である。(その内日本は59件)
(出典:http://www.iso.org/

EnMSは他のISO規格と同じく、外部機関による認証取得と自己適合宣言が可能な規格であり、すでにある認証のマネジメントシステムと体系を合わせる事ができる。CSTは、EnMSに特化した運用組織や文書の構築からその導入と運用、初年度のマネジメントレビューまでをサポートする。

CSTでは、このEnMS導入支援サービスをC-EnMSと名付けて提供しており、本稿ではその内容を紹介し、プラントライフサイクルデータマネジメント(PLDM)をベースにしたEnMSの展開について提示する。



2. エネルギー管理における課題

CSTはEnMS導入支援サービスを2014年1月から開始して以来、その過程で日本の産業部門でエネルギー管理に従事している方々、環境マネジメントを担当されている方々と意見を取り交わさせていただいてきた。これらの活動を通じてお客様から得られた次の課題から、省エネ法に基づいて管理されている日本においても、エネルギー管理の手法の一つとして、EnMS普及の余地は充分あるとの認識に至っている。


① エネルギー使用を取り巻く急激な環境変化へ追従できていない。環境変化の例としては、
  設備の老朽化、熟練技術者の引退、技術革新の進歩、低炭素社会の要請、エネルギー
  サービスの多様化などがある。


② グローバルへ展開する日本の事業者においては、国内工場と海外工場の間でエネルギー
  管理レベルを統一できていない。


③ 総エネルギー使用量が1,500㎘/年度未満の中小規模の事業者は省エネ法の対象外であ
  ることから、エネルギー管理が十分に浸透していない。

④ 大規模の産業部門においてもエネルギー供給側(ユーティリティー部門)と需要側
 (製造部門)の連携が十分ではなく、事業所内個々の組織や装置に注視すると、必要
  以上のエネルギー供給と消費が散見される。

EnMSは上記の課題を解決できる1つの体系であり、省エネ法等国内のルールと整合させることにより、さらに合理的かつ有効に実施することができる。例えば、規格の適合に際し、省エネ法に基づく管理体制、長期計画・管理標準等の策定の考え方、具体的な改善措置を盛り込むことを通じて、これら2つの規範に沿ったエネルギー管理を同時・相乗的に実行することが可能である。



3. C-EnMSについて

C-EnMSはCSTが提供するEnMS導入支援サービスである。前述のエネルギーを取り巻く環境が激動する中でも、お客様のエネルギー使用の最適化、又は既に最適化されたエネルギー使用の維持向上を促す事を目的としている。

具体的にはEnMS導入支援サービスを通じて、次のステップで実施する。

STEP1:組織横断の既存体制を活用または新たに構築し、図1のように過去数年分の
      データから著しいエネルギー消費と管理区画を定義して、区画毎にエネルギー
      原単位等のエネルギー利用効率の評価指標(以下、EnPI)と目標値を設
      定する。

  図1.管理区画と評価指標の設定イメージ

STEP2:区画毎の評価結果を他の同類な区画(製品、設備、建屋、工場、他社)と
      比較を行い競い合わせることにより、従来見落とされていたエネルギーロスと
      改善策の発掘、エネルギー利用効率をより意識した生産計画、設備運転、保
      守保全をユーザーに促す。

STEP3:図2のマネジメント向けPDCAと管理区画毎の現場向けPDCAを組み併せて、
      環境変化に迅速に対応しつつエネルギーの利用効率改善を継続出来るシステ
      ム作りを支援する。

  図2.エネルギー利用効率改善を継続する為のPDCAサイクル


4. 最近の事例

ここでは海外の化学工場に向けて実施した事例を紹介する。

既存活動のヒアリングとサンプルデータを分析した後、トップマネジメントからエネルギー供給側および需要側も含む組織横断のEnMS運営体制をCSTから提案して、EnMS導入支援サービスを開始した。

そして、お客様のEnMSメンバーをCSTがサポートする形でエネルギー診断を実施し、その結果をインプット情報として、エネルギーレビューを行った。エネルギーレビューの結果、12項目の改善機会を抽出して、その活動計画をEnMSメンバーとともに作成し、マネジメントレビューで承認いただき、その計画に沿って初年度のEnMS運用を実施した。
(STEP1)

その後、内部監査など重要なマイルストーンに立ち合い、EnMSとの整合性をチェックし、コンサルタントとして必要に応じてコメントと提案を行った。(STEP2)

また上記した改善機会の半数は設備改善を要するものであったため、蒸気減圧時のエネルギー回収、スチーム設備老朽化対応などコンサルタントがお客様の要件をまとめた上で、エンジニアが基本設計を行い、提案するサービスも提供した。上記改善機会の内、設備改善を要さないものとしては、メンテナンス・エネルギー調達・エネルギー可視化・意識改革に関する改善を提案した。(STEP3への準備)


5. エネルギー可視化システムとPLDM

改善機会の中でも、お客様が特に注力したのは、エネルギー可視化システムの構築で、先ずは電力可視化から取組むことにした。

図3のように、もともと電力消費量は敷地内のプラント単位に毎日記録されていたが、それが十分に活かされていなかったため、CST提案のもと新たに定めた管理区画毎にEnPIを設定して、毎日の生産量と突き合せしながら管理区画単位で電力消費量を把握してもらうようにした。

  図3.エネルギー可視化システム提案の前後比較

これにより、お客様による一連のEnMS運用と組み合わさった結果、製品AとBを製造中に電力消費が多いことが、初めて明らかになった。

現状は毎朝、電力消費量を手動でEXCEL上に転記して分析しているが、この運用は、記録から分析までに時間を要して、計算ミスなども生じるため、これらの課題を解決できるよう、敷地内に点在する既存の電力メーターをサーバーに繋いで、自動的にデータ収集およびWEB上で集計および各種分析が行えるよう、電力可視化システムの自動化を提案した。

この自動化システムでは、EnPIの考え方を取り入れて自動収集した日次の電力消費量を、手動入力された関連変数(エネルギー消費に影響を与える生産量や気温など)と対比する事で、管理区画および製品毎の電力利用効率を毎日チェックできるようにしている。
これにより、電力消費増減の要因特定及び早期の対策実施が容易になると期待されている。

さらにCSTのPLDMコンセプトに基づいた将来の構想として、上述のEnPIの他、再生可能エネルギーを含む各種エネルギーの需給データだけでなく設計データや各種関連データ(生産計画や運転記録、保全実績など)も自動収集した上で、エネルギーロスを生じている可能性のある機器をリアルタイムでフォーカスしながらエネルギー消費量を可視化するシステムの構築も提案できるのではないかと考えている。

また、これまでに紹介したソリューション(テクマスナビ
®、3Dレーザースキャン、CeSMO®など)を組み合わせていただく事で、より効果的なエネルギー診断およびエネルギーレビューが行えると考えている。


6. まとめ

このようにCSTのEnMS導入支援サービスであるC-EnMSは、運用改善および設備改善によって、お客様の既設環境とCSTの計装電気技術ならびにICT技術をシームレスに繋ぎ合わせて、お客様の必要とする適切な仕組みを素早くリーズナブルに提案できる。

またPLDMコンセプトに基づいたEnMS導入支援サービスを提供することで、ISO 50001に準拠した運用改善だけでなくよりスマートなエネルギー可視化システムも提案できると考えている。

また最近ISO 50001に関連した規格が続々と制定されている。CSTでは国内業界団体を通じて、制定前のこれら規格に対してCSTの意見が反映されるよう提言を行う活動をしている。

本稿で紹介したCSTの活動は今後も継続および改善していく。その結果として日本でもEnMSがこれまで以上に広く普及し、日本の競争力強化ならびに地球環境保全に貢献できれば幸いである。



             












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