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【連 載】IFSが提供する企業向けプロジェクト管理と設備管理ソリューション
 最終回 進化するBIMとそれを支える業務システムに求められること
    IFSワールド コリン・ビーニー 2016.3.25

1. はじめに

BIM(Building Information Modeling)は、設計、エンジニアリング、および建築(以下AEC:Architecture, Engineering and Construction)業界では、必須の概念である。ご承知のように、BIMの発祥は、3Dモデリングだ。

このBIMが、この数年でかなりの進化を遂げている。近年、次々と新しい軸(Dimension)が付け加えられ、今では、6次元にまで達している。公共のプロジェクトにおいては、BIMの活用が義務付けられている国もあるほどだ。今回は、この増えていく軸を支えるにあたり、プロジェクト管理や設備管理といった業務システムに求められる要件を探る。


2.BIMの進化

3D BIMでは、CADなどを活用し、2次元で描かれた図面を3次元化し、建造物の完成イメージを視覚的に確認するというのがその主な用途であった。4次元では、単なる完成イメージだけではなく、施工に必要な人や物の調達のタイミングを見極めるために、プロジェクトを時間軸でとらえる概念が加えられた。5次元ではさらに、施工に関わるコスト見積もりの要素が加わった。6次元では、施工が完了した後の維持管理の概念がプラスされた。

 ■BIMの進化

  ■デジタルデータをベースとしたBIMが
   ライフサイクル管理を実現する
この6次元の概念が確立し、設計から施工、維持管理といった建造物のライフサイクル全体を管理する下地ができた。

また、この進化の過程で、情報の共有方法が、紙ベースからデジタルベースに移行した。

つまり、プロジェクトの過程で大量のデジタルデータが発生する。建造物のライフサイクル管理を実行するには、これらのデジタルデータをハンドリングするITの活用が必須だ。



3.AEC業界の特殊性

とはいえ、AEC業界には、他の業界にはない特性があり、それを理解したうえで、ITシステムを選定していく必要がある。例えば、製造業では、受注をうけ、部品表(BOM: Bill of materials)をベースに資材の発注、製造工程へと進む。この受注、調達、製造、在庫管理、会計、納品といったプロセスは、一般的なERPシステムが得意とするところだ。受注生産型の生産形態でも、製品コンフィギュレーター機能などで、対応が可能だ。

ところが、AEC業界では、受注の段階で、BOMをベースにその先の業務を進めることはできない。ふたつとして同じプロジェクトはないため、数量明細書(BoQ: Bill of Quantities)を使用し、都度、作業範囲(スコープオブワーク)を見積もる必要がある。

例えば、ある自治体あるいはスポーツ組織が、新しいサッカースタジアムの建設を計画しているとしよう。これを、できあいのセットで買うことは不可能だ。スタジアムは、立地条件や希望の収容人数にあわせて設計される。駐車場の配置や公共の交通機関からのアクセスは、会場に設置する椅子の数、トイレの数、トイレの洗面台など、全てを一から設計しなければならない。

つまり、スタジアム建設のスタート時点では、製造業のように、在庫リストから部材を調達するという業務プロセスではなく、作業範囲の見積もり、レビュー、承認、必要に応じて見直しといった手順でものごとが進んでいく。しかも、駐車場を拡張するといった大規模な変更から、ある部材については代替品を使いたいといったような小さな変更まで、プロジェクトの最中に何度となく変更が入る。


4.ITシステムに求められること

このような業務プロセスを支援するには、作業範囲の見積もり、下請け業者の管理、プロジェクトに纏わるコスト、スケジュール、品質、リスクまでを管理できるシステムが求められる。

以下に、考慮すべきポイントを列挙する。

 ・BIMプロセスの基盤となる3D CADで作成されたモデルが、プロジェクトの進行中に
  発生した変更を反映できること

 ・見積もりのために必要な下請け業者、機器、プラントのレンタル費、必要な資材、
  社内外の人件費などの要素をハンドリングできること

 ・見積もりには、外注管理が伴う。元請けが調達した部材を、製造業者に提供し、
  製造してもらうようなケースも多々ある。このような外注管理ができること

 ・プロジェクトの進捗管理、コスト管理

 ・建造した施設の情報を、維持管理のための設備マスターとして管理できること

 ・施工が完了し、試運転を経て、建造物がオーナーに引き渡される際には、
  設備情報をオーナーに、電子データとして提供できること

本誌の読者であれば、前述の要件は、プロジェクト管理システムと設備管理システムがあれば、ほぼ網羅されることはおわかりだろう。しかし、個別のシステムをバラバラに導入していては、ITコストがかさみ、業務の合理化、コストの抑制といったBIM本来の目的が、本末転倒となりかねない。

さらに、複数の組織が長期にわたってプロジェクトに従事することを考
えると、企業レベルでの情報統合を目的として開発されたERPやEAMに、AEC業界向けのソリューションが組み込まれているシステムが最適だろう。


5.まとめ

BIMをベースとしたデジタルデータの活用で、建造物のオーナーは、ライフサイクル管理が容易になり、プロジェクトを実行する側は、業務の合理化を図ることができる。例えば、イギリスでは、政府が建設業界向け指針として、2025年までに33%のコスト削減、50%の工期短縮という目標を掲げている。その達成のために、2016年には、BIMを義務化するとの発表がなされている。EUでも同様の動きがある。

IFSでは、このようなトレンドを踏まえ、プロジェクト型産業や資産集約型産業のニーズを組み込んだ包括的なソリューションを提供している。当社のAEC業界向けソリューションは、バブコック・インターナショナル・グループ、ブルックフィールド・アセット・マネジメント、スカンスカ、テクニップなど、世界各地の企業に利用されている。


 【問い合わせ】
  IFSジャパン(株) TEL:03-5419-7903
  E-mail:info.jp@ifsworld.com



       






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