【連 載】IFSが提供する企業向けプロジェクト管理と設備管理ソリューション
第4回 スマートメーターの導入プロジェクトを支えるITシステム
IFSワールド コリン・ビーニー 2016.3.10 |
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電力自由化の波がついに日本にもやってきた。多くの事業者がエネルギー業界への参入を表明し、電力料金比較サイトも登場した。この電力自由化で重要な役割を果たすのが「スマートメーター」だ。世界各国がスマートメーターの導入へと向かっているが、実際には、政府や企業は、当初の想定よりはるかに多くの課題に直面している。
ヨーロッパでは、すでに2億8,100万台の電力メーターが設置されている。各国の政府は、それぞれに期限を定め、積極的にスマートメーターを推進している。2014年の終わりには、17カ国がスマートメーター設置に関するロードマップを発表した。
IFSの本社があるスウェーデンは、ヨーロッパの中でもいち早く、2000年代にスマートメーターの設置を完了した。イギリスは、2020年の終わりまでに80%の設置を完了するという目標を掲げているが、導入初期に何度かプロジェクトが行き詰まっており、目標の実現性には疑問が残る。
スマートメーターを導入するには、単にメーターを交換するだけでなく、そのためのインフラ構築が伴う。関係する組織や業界が多岐にわたるため、多種多様の課題が存在する。
例えば、高層ビルが密集した地区では、需要家にリアルタイムにデータを提供するためは、通信ハブと会話できる機能を持ったメーターが要求される。各電力会社は、地域特性ごとに無線やPLCといった通信方式を決定し、その通信方式に対応したメーターを用意する必要がある。
新築の建物では、工事をする立場からみると、比較的容易に新しいメーターを設置できるが、需要家にはメーターを選ぶ選択権はあるのか。その費用は誰が負担するのか。米国では、無線通信による健康被害を恐れ、スマートメーターの設置を拒否する需要家もある。各家庭の情報がスマートメーター経由で第三者に提供されるではないかといった情報保護上の懸念もある。
それぞれの立場で、様々な課題が存在することはご理解いただけたと思うが、ここでは、これだけの数のメーターをスケジュール通りに設置し、適切に運用していくというプロセスに焦点を当てて、このシリーズのテーマであるプロジェクト管理と設備資産管理といった視点から、その課題とIT活用のポイントを紹介する。
4-1.導入プロジェクトの推進と計画 / 工事を管理する |
スマートメーターを設置するプロジェクトでは、要求仕様の決定、機器の選定、調達から、協力会社を含めた工事スケジュールの立案・調整、工事要員および工事の指示手配、予算の管理と実績の確認まで、様々な要件に対する決定と指示管理を行う必要がある。
従ってプロジェクト管理の仕組み
を使った情報の管理と共有が非常
に重要となる。
スマートメーターの運用・管理を行うためには、設置したメーター本体や構成情報に加えてその付帯設備(コンセントレーターやPLC端末など)情報、設置先や契約情報など様々な関連情報をシステム上に登録し管理していく必要がある。これらの情報は設置したメーターを使用するサービスに必要なばかりでなく、その後の保守サービスの基礎となる。
保守サービス管理者向け画面 |
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フィールド作業員向け
モバイル画面 |
運用を開始すると機器の不具合や修理などアフターサービスの要件が発生する。一般に保守サービスの業務では、保守契約の管理から保守作業の計画・実施、保守パーツや資材の在庫管理、要員の計画とスケジュール管理、作業報告と実績や履歴情報の管理といった業務支援が求められる。
当然、現場の作業員には、モバイルを活用した指示、報告、情報参照などの機能も必須だろう。
メーターからの情報を取得し、関連組織へ情報を展開していく仕組みについては、前回紹介したノルウェーの鉄道運行会社の例が参考になる。ポイントとなるのは、機器から送信される膨大なデータから必要な情報を見出してタイムリーに対処することだろう。
Microsoft Azureのようなビッグデータのハンドリングに最適化された仕組みを活用すれば、メーターからの大量の情報をフィルタリングして分析を行い、本当に重要な情報だけをIFS
Applicationsに連携することが可能だ。
グローバルに展開するテレコム事業者が、昨年、同社のスマートメーター関連プロジェクトにIFSのソリューションを採用することを決定し、現在、導入を進めている。同社は、既にIFS
Applicationsを他の業務で利用していたが、スマートメーターの保守サービス管理と設備管理業務にもIFSの利用を拡大する。
具体的には、IFS Applicationsのサービス系のソリューションを活用し、スマートメーターからネットワーク経由で、自動生成されるデータをもとに事象を把握し、フィールド・サービス要員への作業割り当ての業務を行う予定だ。
2014年の経済産業省のスマートメーター制度検討会の資料によると、日本でも10電力会社のデータを総計すると、2025年までに8000万台のスマートメーターの設置が計画されている。
東京電力は、2015年6月に、「2020年度までにすべてのお客さまへのスマートメーターの設置完了(約2,700万台)を目指す」としている。オリンピック前にすべての設置完了が目標だ。
スマートメーターは、スマートシティを支えるひとつの道具にすぎない。スマートシティを実現するには、全てをネットワークでつなげることができる新しい社会基盤が必要だ。実際、地球上では、スマートシティに関連したプロジェクトが、数えきれないほど生まれている。しかし、これらのプロジェクトの成功は、前述のようなミクロなレベルでの業務管理の上にのみ成立する。
次回は、ビルディング・インフォメーション・モデル(BIM)をテーマに、設備のライフサイクル管理について考えていく。
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E-mail:info.jp@ifsworld.com
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