【連 載】IFSが提供する企業向けプロジェクト管理と設備管理ソリューション
第3回 設備管理におけるIoTの活用
IFSワールド コリン・ビーニー 2016.2.25 |
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IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が騒がれて久しいが、まだ多くの企業が、ビジネスの収益に結びつく活用方法を模索している段階ではないだろうか。設備管理の分野においては、設備や機器の状態についての情報を、インターネットを介して、収集するというのが一般的なIoTの活用方法であろう。
しかし、設備にまつわる情報は、何年も前からSCADAやDCSなどで入手することが可能で、機器の値がある数値に達するとアラームを発するといったレベルの管理は、設備管理の現場ではインターネットの普及以前から行われていた。
IoTの登場で、一体何が変わったのか。今では、テクノロジーの進化と廉価になったセンサーで、あらゆる種類の情報が、以前では考えられないほど容易に収集できるようになった。
それらの情報を活用するためのITインフラも整備されてきた。このような環境の変化により、現場のみで利用されてきた情報を、業務システムと連携することで、企業の経営に役立てようという動きが活発化している。
本誌の読者の多くが携わる資産集約型のビジネスでは、設備や機器の稼働率が収益に直結する。異常な状態を事前に検知し、不具合の予測を行い、早めに手を打つことが、設備のダウンタイムを最少にとどめ、損失を回避する(=収益を向上させる)のに有効なのは、周知の事実だ。
今回は、ノルウェーのオスロ市が所有する地下鉄運行会社Sporveien社が、IoTを活用してドアの故障検知とIFSの設備管理ソリューションを統合した事例を紹介する。
Sporveien社は、115の車両を保有しているが、実際に稼動している車両は92両という状態が続いていた。1車両には、ドアが6つあるので、車両の運行時間中は、常に552のドアが、駅に停車するたびに開閉を繰り返している。これらのドアのうち、どれかひとつに不具合が発生しても、運行スケジュール全体に影響が出る。車両が老朽化するにつれ、メンテナンスの必要性も増す。
それぞれの車両には、コンピュータと各種のセンサーが装備されており、約3,000ポイントの状態を管理している。ドアだけでも、ひとつあたり25ポイントを監視している。これらのポイントのいずれかで不具合を感知すると、コンピュータは、その状態のスナップショットを記録する。
図1. Microsoft Power BI を利用した車両ドアの不具合分析画面 |
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不具合が検知されると、整備士が、手元にあるポータブルコンピュータを、ネットワーク・ケーブルを使って車両に設置されたコンピュータに接続し、そこにあるデータを読み、不具合の分析を行っていた。人に依存したプロセスで3,000ポイントの状態を処理するには無理があるため、管理者、メンテナンスチーム、整備士の間のコミュニケーションにはたびたび情報の漏れや遅延が発生していた。不具合への対処も、根本的な原因の追究にいたらず、その場しのぎの対応にとどまっていた。その結果、同じような不具合が再発し、車両の稼働率の低下につながっていた。
3.Microsoft Azureを利用し、プロセスを自動化 |
Sporveien社がIoTの活用でまず取り組んだのが、ドアの開閉時間をもとにした異常検知だ。ドアには、ベアリングつきのレールが使用されており、摩耗が進むと、開閉に時間がかかる。まず、その時間をリアルタイムに分析して異常を検知する。それをトリガーに、整備士が速やかにメンテナンスを行い、車両の稼働率改善を図ろうというものだ。
それぞれの車両には、Wi-Fiが装備され、車両ごとにユニークなIDがつけられた。センサーが検知した不具合のスナップショットは、社内のデータベースにアップロードされる。その中から、ある条件に適合した情報のみが、Microsoft
Azure経由で、IFS Applicationsに送られる。Azure上にあるEvent Hubsは、毎秒数百万のイベントをほぼリアルタイムで記録し、Stream Analyticsが、それらのデータを即座に分析する。
図2. IoTからIFS Applications への情報の流れ |
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ここで重要なのが、Stream Analyticsに設定する条件だ。タイムリーなメンテナンスを実施するには、このロジックを適切に設定する必要がある。例えば、「同じドアで1日3回以上、スロークロージング(ドアの開閉に一定以上の時間がかかる)が起きた場合、メンテンナンスの指示を発行する」といった具合だ。この指示がIFS
Applicationsに送られると、IFS Applicationsは、自動的に作業オーダを生成し、それをもとに、メンテナンスチームは、メンテナンスのスケジュールを作成する。
異常な箇所は特定されているので、必要な箇所のみメンテナンスを行うことができ、電車を停車する時間を削減できる。今後の課題は、メンテナンスの緊急性を把握することだ。緊急性の低いものは定期保守に組み込み、2016年の夏までに現在92車両の稼動を、106両にすることが目標だ。
設備の保全においては、その作業の質と効率性が求められる。メンテナンス作業の質が向上すれば、何度も同じ不具合が発生することがなくなる。人に依存した不具合診断や情報の伝達が自動化されれば、ミスが減る。Sporveien社の取り組みは、IoT活用のほんの一例だ。IoTは、設備管理におけるダウンタイムの低減という永遠の課題への解決策となることが期待される。
今回は、IoTの活用に焦点をあてたため、IFSの機能についての解説は割愛したが、当シリーズの第一回で、IFSが提供する設備管理ソリューションを紹介しているので、そちらを参照されたい。
次回は、電力自由化で先をいくヨーロッパでのスマートメータの活用事例を紹介する。
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