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【連 載】                                2015.6.25
 日揮グループが提供する「戦略的な保全PDCAサイクル構築支援」
 最終回 PDCAサイクル構築のその先へ
日揮情報システム(株) 森田 真澄


はじめに

4回にわたり日揮グループ3社、日揮、日揮プラントイノベーション、日揮情報システムの強みを活かし、協働で進めている「戦略的な保全のPDCAサイクル構築支援」を紹介してきた。最終回となる今回は、総括とその先について説明する。



1.戦略的な保全のPDCAサイクル

日揮グループはプラントオーナーもしくはメンテナンスサービス提供企業向けに、プラントのリスクと保全コストを下げ、信頼性を高める戦略的な保全のPDCAサイクルの確立と定着化を支援している。

本活動は既設のプラントにおける保全業務を対象とするだけではなく、新設プラントの操業開始日 (Day One) から始まる保全業務も対象としている。

当グループがPDCAサイクルの各局面で提供する業務支援サービスと業務支援アプリケーションを紹介する。

     第1図 戦略的な保全のPDCAサイクル


(1) 保全計画 (P) と保全作業 (D)
戦略的な保全のPDCAサイクルの前半となる保全の計画立案と作業実施では、次の業務支援アプリケーションを導入し、業務への定着化を支援している。
・設備保全管理システム PLANTIA
・設備資産管理システム (EAM)
・検査管理システム A-MIS
導入時に業務の標準化と効率化、データの一元化を図り、保全部門の業務最適化を支援している。

(2) 保全分析 (C) と戦略立案 (A)
前半でCMMS / EAMに蓄積した保全データを分析し、保全戦略策定を行う保全戦略策定支援システム (APM) の導入と業務への定着を支援している。APMは日揮情報システムが日本でのパートナーを担っているMeridium Enterprise APMを採用している。

また、保全の分析手法であるRAM (Reliability, Availability,Maintainability) 分析、RCM (Reliability-Centered Maintenance:信頼性重視保全) 分析、RBM (Risk-Based Inspection:リスク基準検査) 分析手法やツールを使用して、お客様先で蓄積された保全データを分析し、保全戦略の立案を支援する業務支援サービスも提供している。

(3) 効率的なPDCAサイクル構築
PDCAサイクルの前半に課題があり円滑に後半に進まないケースがあるが、当グループでは豊富な経験を活かして効率的なPDCAサイクルの構築を支援している。

例えば課題として、
・実績データが登録されない。
・実績データは蓄積しているが、データ活用の仕組みがない。
・定型帳票でのKPI出力に止まり、実績データを保全戦略の立案に活用していない。
 などがある。これらの原因として、

・データ登録現場での登録ツールの不備、必要以上の登録項目。
・登録されたデータのビジネス (保全部門、プラントマネジメント) への貢献度が
 不透明。  などが考えられる。

効率的にPDCAサイクルの構築を進めるには次の2点が重要と考える。一つは、サイクルの確立そのものがプラントのリスクと保全コストを下げ、信頼性を高める戦略的な保全業務プロセスの構築となることの意識付け。もう一つは、P D C A サイクル後半で必要となるデータを厳選して、精度、鮮度が高まるデータ登録の仕組み作り。

当グループではお客様の保全業務の状況に即した効率的なPDCAサイクルの構築をご提供している。ぜひ活用頂きたい。



2.保全と運転業務の連携

戦略的な保全のPDCAサイクルを確立する上で、設備 / 装置 / 機器を運転する部門との連携が重要であり、組織を越えたシステムの構築が必要である。

          第2図 保全 / 運転 / 操業データの連携

(1) 自主保全と専門保全
保全のPDCAサイクルを回す業務担当部門は製造部と独立した工務部や設備管理部、もしくは製造部内の工務課や設備管理課であることが多い。共通して言えることは保全部門が設備を運転している運転部門と分かれていることである。

お客様の中には運転部門と保全部門の間を技術者にジョブローテーションさせ、部門間の風通しを良くしている企業もあるが、多くは保全のPDCAサイクルは保全部門、即ち専門保全部隊の業務プロセスとみなされている。そのため、CMMSやEAMに運転部門で実施した自主保全の作業履歴が登録されないケースが見受けられる。これは保全データ不足の原因ともなる。

そこで日揮情報システムは運転部門と保全部門の業務プロセスを繋げ、プラント内で行われる保全作業とデータを一元化する仕組みを提供している。


(2) 運転管理システム j5 OMS
CMMS / EAMを管理する保全部門の課題として、運転部門が実施した自主保全の作業履歴が蓄積されない、また、運転部門の課題として保全部門に依頼した専門保全作業の進捗が見え難いなど、部門をまたがる情報共有の問題点が指摘されている。

当グループが推奨する方法は両部門の業務プロセスを繋げて、業務と情報を一元化する方法である。その一つとしてj5 Japanのj5 OMS (Operation Management System) とPLANTIAの連携ソリューションを提供している。

業務での活用イメージは、運転部門によりj5 OMSにて修理もしくは点検依頼を起票し、部門の承認を得た後、保全部門で受け付けし、保全もしくは修理計画の立案、実施、実績登録をPLANTIAで行う。PLANTIAにある実績データをもとに進捗をj5 OMSに戻すことで、先の課題が解決できる。

本ソリューションは運転部門と保全部門のみならず、その他のプラント内組織を有機的に結び付け、風通しの良い企業文化の醸成を実現する。


3.操業データとの連携

前述の運転管理システムとCMMS / EAMとの連携に加え、操業情報管理システムとの連携を求めるお客様の声が高まっている。

(1) 操業情報管理システム
OSIsoftジャパンが提供するPISystemを代表とする操業情報管理システムに蓄積された装置の操業データとPLANTIAが管理する保全データを突き合わせて分析したいニーズは以前から寄せられていた。

操業データは秒単位で装置が発生する動的なデータであり、保全データは保全担当者が作業した際に登録する静的なデータである。これらのデータを関連付けるのは今まで困難とされてきたが、この2つのデータの間に運転データを加えることにより、より精度と信頼性の高い分析が出来るようになる。

例えば、運転員が直面した装置の状況に関する作業記録を起点に、その時点の装置の振る舞いを操業データから、その装置の過去の保全履歴を保全データから紐付け、装置の不具合を装置に関する複数のデータから分析することが可能となる。

(2) プラントを支える3つのデータ
今まで保全データ、運転データ、操業データは、個々の業務遂行にのみ使われてきた。この3つのデータを結び付けることにより部門を越えて業務が繋がり、更なるプラント運営の高度化、業務課題の解決に使われて行く。

当グループでは保全業務領域の特定業務アプリケーションの導入および業務支援サービスに限らず、プラント全体の情報化、業務支援を提供して行く。


おわりに

今回の連載を通して、戦略的な保全のPDCAサイクル構築に向けての支援サービスとアプリケーションを紹介してきた。日揮グループ3社、日揮、日揮プラントイノベーション、日揮情報システムは今後とも保全業務からO&M (Operation & Maintenance)、保全データからプラントビッグデータまで幅広く、プラント運営の最適化を支援して行く。

業務課題解決からプラント運営の最適化まで、何なりとご相談頂ければ幸いである。



 ※ PLANTIAは当社の設備管理システム (CMMS) である。
 ※ A-MISは日揮プラントイノベーション社の検査管理システムである。
 ※ Meridium Enterprise APMは米国Meridium社の保全戦略策定支援システム (APM) である。
 ※ j5 OMSは英国j5社の運転管理システム (OMS) である。
 ※ PI Systemは米国OSIsoft社の操業情報管理システムである。


       



















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