【連 載】 2015.5.25
日揮グループが提供する「戦略的な保全PDCAサイクル構築支援」
第3回 検査データ管理システムおよびデータの活用
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日揮プラントイノベーションではプラントの保全・診断業務を実施しており、その業務の一環として、検査システムの開発・販売を行っている。代表的なシステムであるAdvanced
Maintenance Inspection Support System (AMIS) は国内外で100事業所以上への販売実績があり、すでに10年以上利用していただいているお客様も多い。ユーザの方々からは、A-MISで管理されている保全履歴の解析や、データ採取の効率化など、より、いっそうのデータ活用のための要求が出てきている。本稿では、これらの新しい顧客ニーズへの取り組みの一部を紹介する。
まず、A-MISの機能概要を簡単に紹介する。A-MISには以下の機能が準備されており設備管理におけるPDCAサイクルに沿った運用が可能である。
① 台帳管理機能
A-MISは、静機器・配管類の管理をメインに設計されたシステムで、それら設備の設計情報、検査図面および図書関係 (強度計算書や詳細図面など) を管理できる。 |
② 検査計画機能
目視・非破壊検査や肉厚測定検査における検査計画を検査目的、検査部位・方法ごとに立案することができる。特に、目視・非破壊検査計画は検査経歴の機能と連動しており、検査経歴画面に計画内容が表示されるため、計画に沿った検査結果を簡単に登録することができる
(検査実施漏れ防止にも利用できる)。 |
③ 検査履歴の管理機能
目視・非破壊検査および肉厚測定検査それぞれの履歴を管理することができる。肉厚測定経歴では、定点化された測定結果の腐食率を自動計算し余寿命予測が行える機能が準備されている。 |
④ 検索機能
A-MISでは検索機能が充実しており、ユーザが指定した条件に該当する結果を簡単に抽出することができる。特に、本システムは “情報の見える化”
に力を入れており、閲覧機能では、PFDおよび検査図面上に、肉厚測定点の「腐食率」「余寿命」「残肉厚」などを、それぞれの判定レベルごとに色表示することも可能である。この機能により、一目でプラントのコンディション、問題点の抽出が行える
(第1図)。 |
第1図 PFDを活用した閲覧画面 |
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これらの機能を活用することにより、石油精製・石油化学プラントの検査履歴を効率よく管理することが可能となっている。
2.現場用モバイル端末 (A-MIS LOG-BOOK) |
(1) LOG-BOOKの概要
石油精製・石油化学プラントでは、年間数千点から数万点の肉厚測定検査が行われる。A-MISでは、データ取り込み省力化のためにExcel取込機能を準備しているが、現場側の作業はほとんど人手に頼っている。この結果、多くのマンパワーを必要とするだけではなく、入力ミスなどの人為的ミス、データの改ざんなども発生する可能性があり、これら現場データ採取業務の省力化が強く求められていた。ここで紹介するA-MIS
LOG-BOOKはモバイルPCを利用した現場作業省力化ツールである (第2図)。
第2図 A-MIS LOG-BOOK 外観 |
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(2) 機能・特徴
① データ取込機能
A-MIS LOG-BOOKでは、A-MISサーバからモバイルPCへの各種情報の取込が可能となっている。特に、現場で必要な検査図面、過去保全履歴、関連図書なども簡単な操作でモバイルPCに取り込むことができる。これにより、検査に必要なほとんどの情報を現場用モバイルPC内に取り込むことができ、現場作業のペーパレス化を実現している。 |
② 厚さ計との無線接続
超音波厚さ計とA-MIS LOG-BOOKを無線接続し、厚さ計の送信ボタンを押すことにより、測定値がモバイルPC側に転送される。厚さ計との無線化により、高所作業など計測者と記録者の距離が離れている場合でも、問題なく作業が実施できる。 |
③ 写真撮影 / 報告書作成機能
保全業務では現場での写真撮影の機会が多く、撮影した写真の整理に多くの時間を要している。本システムでは、本体内蔵カメラや、専用の外部カメラを用いて写真の撮影、管理が可能である。システム内に取り込まれた写真は、機器/配管名称、測定ポイント番号、撮影日時などの情報と紐づけられて管理されるため、事務所へ戻ってからの写真の整理作業が大幅に削減される。また、写真へのコメントの記入や、写真記録の自動作成機能なども準備されている。この機能は、検査だけではなく工事、日常点検などでもそのまま活用できる。 |
(3) 導入効果
実際に現場で利用し、下記のような導入効果が確認された。
① 図面および前回履歴の準備
タブレット端末に測定点情報、検査ポイント図面、検査経歴など計測に必要な情報が全て取り込まれるため、現場での完全なペーパレス化が実現できた。 |
② 厚さ計との連動
モバイル端末と厚さ計が無線接続できるため、現場での作業性が大幅に向上した。 |
③ 検査結果データの登録作業
検査結果はモバイル端末に保管されるため、計測後、事務所に帰ってからのA-MISへのデータ取り込み作業工数も大幅に軽減された。 |
A-MISには、設備台帳、保全履歴などの多くの設備情報が保管されている。これらの情報を活用する手段として、A-MIS標準の検索機能やレポート作成機能が準備されているが、より高度な解析のニーズに応えるために、A-MISと専用の解析ソフトウェア
(SPSS) との連携を実現させた。これにより、A-MIS単体では実現が難しかったデータの解析を実現することができるようになった。
(1) 適用例
適用例を以下に示す。
① 保全データ相関関係の確認
A-MISには、肉厚測定点ごとに、元肉厚、材質、サイズ、運転温度・圧力、配管形状・・・などのいろいろな情報が管理されている。経験値だけでこれら複数の条件と腐食率の関係を予測するのは困難であるが、解析ソフトウェアを利用することにより、これらデータ間の相関関係などを導き出すことが可能となる。これにより、将来的には、設備仕様、運転条件などから未測定箇所の腐食傾向を予測することも可能ではないかと考える。 |
② 運転データとの関連性確認
従来、保全データ (肉厚測定などの検査データ) をDCSに集められる運転データや成分分析データとの関係を見ることは行われてこなかったが、SPSS内で、検査データと運転データを結び付けることにより、運転状況の変化により腐食減肉がどのように変化していくのかというような解析も可能となるのではないかと考えられる。 |
(2) データ解析の効果
このように今まで、ベテラン保全マンの経験により実施されてきた診断・予測業務も、データ解析技術を組み込むことにより、より定量的に評価できるようになり、検査作業費の削減、作業効率の向上の効果が出せると考える
(第3図)。
第3図 A-MIS、SPSS連携イメージ |
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A-MISは、国内外で100事業所を超え、設備管理システムとして利用いただいており、その中で出て来たデータ収集の効率化、データ解析などのニーズに応えるため、上記のような機能の開発を行っている。今後とも最新のICT技術を活用し、より操作性の良いシステムに成長させていきたいと考えている。
次回は日揮より、保全戦略策定支援システムMeridium APMとRCM/RBI/RAM業務支援サービスを紹介する。
※ ExcelはMicrosoft社のソフトウェアである。
※ TOUGHPADはPanasonic社のタブレットである。
※ SPSSはIBM社のソフトウェアである。
※ T-MICは自社で開発した熱交換器チューブ履歴管理システムである。
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