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【連 載】                                2015.6.10
 日揮グループが提供する「戦略的な保全PDCAサイクル構築支援」
 第4回 保全戦略策定支援システム Meridium Enterprise APM と
     RCM / RBI / RAM 業務支援サービスの紹介
日揮(株) 岡田 邦夫


はじめに

 これまで保全のPDCAサイクルを構成するソリューションとしてCMMS (製品名PLANTIA)、EAM (同Infor EAM)、検査管理システム (同A-MIS) について述べてきた。
今回は、国内でも特に標準化やシステム化が遅れていると考えられるCとAの部分に着目し、その支援ツールであるMeridium Enterprise APMにつき紹介する。



1.Meridium Enterprise APM の進化

 2015年4月21日から3日間、米国オーランドにてMeridiumのユーザー会議が開催され、世界中から500名近いユーザーやパートナーが集まった。日本からも石油会社2社から計6名の参加があった。

 この席上で次世代のソリューションとしてMeridium Enterprise APM V4が発表され、注目を浴びた。V4はこれまでのサーバー・クライアント形式からHTML5によるWebアプリケーションとして生まれ変わり、ユーザーインタフェースもより直観的でグラフィカルなものに刷新された。(第1図)

    第1図

 Meridiumは1993年に信頼性解析ソフトとして生まれてから、石油、化学、電力の大手に採用されて右肩上がりの成長を続け、現在では80カ国1,200サイト以上に導入されている。CMMS / EAMを補完する形で保全・運転データの解析やリスクに基づく保全戦略の立案に特化した機能を開発し続け、優れた機能とユーザーベースで比類ない地位を築いてきている。


2.Meridium Enterprise APM の構成

 Meridium Enterprise APMは第2図のように、全体の基盤となるAPM Foundationを基に、5つのソリューションとそれを支えるモジュール群から成り立っている。各ソリューションは次の機能を含む。 [カッコ内はモジュール名]

 第2図

1)APM Health:
設備の監視データと連携し、健全性を可視化して監視。回転機の状態監視や静機器の健全性を保つ運転範囲 (IOW) を管理。

2)APM Strategy:
[RCM (信頼性重視保全) ]などに基づき保全戦略を立案し、工事の実施是非を判断[Asset Strategy Management]してCMMS / EAMに計画を立案。

3)APM Failure Elimination:
ワイブル分析[Reliability Analytics] 、パレート分析[Metrics]などの手法を用いてデータを分析し、トラブルの原因を究明[Root Cause Analysis]して対策を立案・展開。

4)APM Mechanical Integrity:
[RBI (リスク基準検査) ]に基づき検査戦略を立案し、目視[Inspection Management]や肉厚[Thickness Monitoring]の検査予定を管理して結果を記録。検査のPDCAサイクルを支援。

5)APM Safety:
HAZOPによるハザードの分析[Hazards Analysis]、[SIS (安全計装システム)]の管理、計装品の校正管理[Calibration Management]といったプロセス安全管理の支援。


3.Meridium Enterprise APM の新機能

 V4となったAPMの特筆すべき点として、下記が挙げられる。

(1) API 581による定量的RBI
 これまでAPI 580に基づいた半定量的RBI機能を提供してきたが、顧客ニーズに応じて、年内に発行が見込まれているAPI RP 581第3版に準拠した定量的なRBI機能が新たに実装された。

 定量評価を行うには最初に用意すべき情報が多く、手間がかかることから敬遠されてきたが、一度データが入ってしまえば後は環境の変化や腐食速度など限られた情報の更新だけで評価でき、長期的にはユーザーの手間を減らすことができる。海外の石油大手も581に注目しており、今後適用が進むものと思われる。


(2) ビッグデータ対応
 先述のユーザー会議では、ファイブフォース分析などの競争戦略論で有名なマイケル・ポーター教授が基調講演を行い、インターネットに「スマート」に「つながった」製品がいかに競争力をもつか、について説いた。Meridiumも「インダストリアルなモノのインターネット (IIoT)」を提唱しており、APM Connectと呼ぶ新たな機能によりCMMS / EAMなどのシステムはもちろん、状態監視や運転データと連携し、分析した結果に基づいて対策をとる一連のプロセスを支援できるようになった。またAPMはiOS,Androidなどのモバイル端末にも対応している。


(3) クラウド対応
 APM Nowと呼ばれるクラウドサービス (SaaS) も発表された。これにより、初期投資を抑えて迅速にAPMの利用を始めることができる。費用面から保全管理システムの導入をためらっていた顧客にとっては朗報で、数カ月単位で投資効果を得られることが期待される。

 Meridiumはさらにクラウド型のベンチマーキングサービスとして、Asset Answersを展開している。これはSMRP (米国保全信頼性学会) が定義するKPIを同業他社と比較できるサービスで、自社の弱点や改善機会を把握し、対策をとって業務改善につなげることができる。プラントレベルだけでなく機種や製造型番など機器レベルでの比較も行えるのが特徴である。


4.導入効果

 Meridiumは体系化された保全のベストプラクティスに基づいてシステム導入による効果を推定できる評価プログラムをもっており、ワークショップを通じて現行の業務実態と比較し、どこに改善の余地があってどう改善できるかを提案することができる。APMの導入効果としては、設備利用率で3-5%の向上、保全費で10-20%の削減、といった値が報告されている。


5.日揮グループのサービス

 本連載の第2回でも記したように、近年の海外EPCプロジェクトでは操業を開始するDay Oneから保全業務を始められるよう、EPC期間中にRCMやRBIによる保全戦略を立案し、詳細な保全計画を立ててCMMS / EAMに投入しておくことが求められる。日揮のO&Mチームおよび日揮プラントイノベーションではこれらの要求に対応できる要員を配し、顧客要求に応えている。

 RCMでは主に回転機械および計装・電気設備の信頼性を保つため、各設備の機能およびその阻害要因となる故障モードを洗い出し、リスクを評価したうえで最適な保全手法を選び出す。日揮ではRCMを効率的に実施するために開発したツールを活用しながら、RCM手法に長けたファシリテーターおよび各設備の専門家を擁してスタディを実施している。

 RBIは静機器・配管の健全性を保つための検査戦略を、腐食、材料、検査の専門家がAPI 580 / 581に基づいてスタディし立案する。新設の設備では肉厚などの履歴データがないため、APIの手法や知見に基づいて腐食や劣化を想定し、10年後のリスクを評価して必要な検査計画を策定している。

 RCMとRBIは国内では法規との兼ね合いもあって適用事例はあまり多くないが、海外ではある規模以上のプラントでは必ず使われていると言ってよいほどの普及度である。国内でもベテラン技術者の退職に伴い、より科学的で、定量化された手法による計画立案が求められており、今後導入が進むものと考えられる。日揮グループでは国内でこれら手法の導入支援をっている。

 また、RAM (信頼性、アベイラビリティ、保全性) 分析にも力を入れている。RAMはプロセスフローをモデル化し、シミュレーションによって設備の構成や保全手法を最適化するスタディである。EPCでは設備の冗長構成などによるアベイラビリティを検証するためによく行われるが、日揮グループでは保全手法に着目し、状態監視や時間基準保全などから費用対効果で最適となる保全策を立案するサービスを提供している。CMMS / EAMに蓄積された故障履歴データを解析することで、各設備特有の故障発生パターンおよび発生確率が得られ、アベイラビリティやコストにおいて最適な保全を立案することが可能となる。


おわりに

 日揮情報システムはMeridiumの日本でのパートナーとしてシステム導入を支援しており、さらに日揮グループが有効活用のためのコンサルティングおよび教育支援サービスを提供している。

 保全業務のPDCAのうち、特にCとAの部分でお困りの場合はぜひ日揮グループのサービスを活用していただきたい。


  ※ Meridium Enterprise APM および Asset Answers は
    米国 Meridium, Inc.社のソフトウェアおよびサービスである。




       
















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