【連 載】 2015.5.10
日揮グループが提供する「戦略的な保全PDCAサイクル構築支援」
第2回 CMMS、EAMの導入と活用事例
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日揮グループ3社、日揮、日揮プラントイノベーション、日揮情報システムは各社の強みを活かし、協働でプラントオーナーに戦略的な保全のPDCAサイクル構築支援を展開している。
前回は戦略的な保全のPDCAサイクルと自社開発した設備保全管理システム (CMMS) のPLANTIAを紹介した。 今回は、PLANTIAと設備資産管理システム
(EAM) の導入と活用事例を紹介する。
PLANTIAは30年以上の販売実績があり、顧客の60%が装置産業である。 近年、顧客数を伸ばしているのは、プラントメンテナンス業、メーカー系維持管理サービス業など保全サービス会社である。
対象となるプラントも石油・石油化学・石油開発から、廃棄物処理や下水処理などの環境プラントに広がっている。(第1図)
第1図 PLANTIA導入顧客の変化 |
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プラントを構成する設備、装置、機器の設備 (資産) 管理、保全作業管理で発生するデータ (保全データ) は、プラントオーナーが運用するCMMSやEAMに蓄えられる。
しかし、業務を外部に委託している場合、実際に保全業務を行うサービス会社が管理しているケースがある。 管理する狙いは主に次の三つ。
・作業報告資料の基礎データ
・作業の標準化と効率化
・業務量の平準化
① 作業報告資料の基礎データ
PLANTIAに格納されている保全・検査作業の実績データを保全履歴画面に表示し、ボタンひとつでExcelに外部出力する。 そのデータより作業報告書を作成している。 |
② 作業の標準化と効率化
作業手順書や作業マニュアル、その他関連資料をPLANTIAに標準ドキュメントとして登録し、保全・検査作業時に参照して、作業の標準化を図っている。 スマートデバイスで作業現場にて参照することで、業務の効率化も図れる。 |
③ 業務量の平準化
作業計画を市販のスケジューラーで時系列に表現することで、業務量の変動が可視化できる。 保全の周期と作業負荷、リソース状況からプラントオーナーに次回の作業を提案型で営業することが可能となる。 |
加えてメーカー系維持管理サービス会社の場合、保全データを活用して、メーカーの製品開発にフィードバックすることも考えられる。 保全サービス会社様には、他社との優位性を発揮した戦略的営業にPLANTIAをご活用頂きたい。
海外の新設プラントの場合、プラントオーナーからの指定等により海外のEAM製品を採用するケースがある。
次に海外でのEAMの導入事例を紹介する。 導入先はガス集積・分離プラントやLNGプラントで、いずれのケースも新設プラントであり、日揮が手掛けるEPCプロジェクトに並行してEAMの導入プロジェクトを遂行した。
(1)プロジェクト概要
当プロジェクトのスコープはプラントの操業開始日 (Day OneにEAMを稼働させるためのEAMの導入、データの収集および登録である。
Day Oneまでのプロジェクト期間は日本での作業が約3年間である。(第2図)本プロジェクトの入力情報はEPCからの成果物となるため、EPCのマイルストーンと進捗に依存する。
よって、既設のプラントにCMMSやEAMを導入する場合より期間が長くなる。 |
第2図 海外新設プラントへのEAM導入スケジュール |
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プロジェクト体制はEPCプロジェクトから受注するサブプロジェクトであり、当社がプロジェクトマネジメント、システム導入、EPCプロジェクトのエンジニアリングからのデータ収集とEAMへの登録を担い、保全計画作成は日揮プラントイノベーションの支援を受けた。
採用したEAMは米国Infor社のInfor EAMで、導入作業の効率化に優れた製品である。 |
(2)新設プラントへの導入ポイント
海外の新設プラントへのEAM導入ポイントは主に二つある。 一つはDay Oneに保全業務を開始するに十分な業務プロセスとシステムとのマッチング、もう一つは初期データの準備とシステムへの投入である。
① 保全業務プロセスとシステム
EAMを保全業務に適用するには、先ず初めに業務プロセスを固める。 (第3図)
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第3図 顧客の組織と役割にEAMを適合した業務フローの設計 |
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その保全業務プロセスは新設プラントの場合、次の様に決まる。
プラントオーナーが他の既設のプラントを運営している場合、実施されている保全業務を参考に適用する。 一方、プラントオーナーが新しい事業主体で、他に適用する業務プロセスがない場合、業務経験者の知見とEAM自体が保有する前提業務フローをベースに幾度かのワークショップの中ですり合わせて決める。
そして、保全業務プロセスとEAMが具備する機能を的確にマッチングして、システムの骨格を構築する。 この作業がEAM導入プロジェクトを成功に導くポイントの一つである。 |
② 初期データの準備と投入
EAMをDay Oneから業務で使用できるようにするには、初期のデータ準備とEAMへの投入が必要である。(第4図) |
第4図 初期データの準備とEAMへの投入 |
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投入するデータは機器リスト、機器属性、保全戦略 (方式、範囲、周期など)、保全計画と検査計画、予備品情報、マニュアルなどの参考ドキュメントである。
多くのデータはEPCプロジェクトからの受領情報をもとに生成されるが、先に決定した業務プロセスから決めるデータも存在する。
これら多種多様なデータの質を高めるために、データクレンジングと言われるデータの選別と補正を行い、EAMに投入する。 この作業がEAM導入プロジェクトを成功に導くもう一つのポイントある。 |
EAM導入プロジェクトにおける、業務に最適なシステムの骨格を構築するスキル、保全業務とデータに精通したスキル、これらを活用してプロジェクトを成功に導く日揮情報システムの総合力を皆様のビジネスでご活用頂きたい。
次回は同じく日揮グループである日揮プラントイノベーションより、検査診断管理システムおよびデータ解析サービスを紹介する。
<参考文献>
(1)宮崎 賢一「Day Oneからの安定操業実現に向けて -Infor EAM
(設備資産管理ソリューション) 導入事例紹介」
(INFOR DAY OCTOBER 15, 2014・TOKYO)
※ Infor EAMは米国Infor社のソフトウェアである。
※ Excelは米国Microsoft社のソフトウェアである。
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