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【連 載】                                2015.4.25
 日揮グループが提供する「戦略的な保全PDCAサイクル構築支援」
 第1回 PDCAサイクルとPLANTIA
日揮情報システム(株) 森田 真澄


はじめに

 日揮グループ3社、日揮、日揮プラントイノベーション、日揮情報システムでは各社の強みを活かし、協働でプラントオーナーに戦略的な保全のPDCAサイクル構築支援を展開している。 本活動は既設のプラントにおける保全業務を対象とするだけではなく、新設プラントのDAY ONE (運用・運転開始) から始まる保全業務も対象とし、既に幾つかの成果を上げている。

 本連載では日揮グループがPDCAの各局面で提供する業務支援サービスと業務支援アプリケーションを紹介する。今回は、戦略的な保全のPDCAサイクルの説明と、PlanとDoで使用する自社開発アプリケーションのPLANTIAを紹介する。



1.戦略的な保全のPDCAサイクル

 プラントのリスクと保全コストを下げ、信頼性を高める戦略的な保全のPDCAサイクルは第1図に示す通りであり、このPDCAサイクルを保全業務に確立し定着化させる支援を行っている。
   第1図


(1) Plan - 保全計画
保全の計画立案ではCMMS(コンピュータによるメンテナンス管理システム)やEAM(エンタープライズ・アセット・マネジメント)を使用して計画を管理する。 国産CMMSとして広く使用されているPLANTIAを今回の後半で紹介する。

(2) Do - 保全作業
保全の作業実施ではPlanで立案された計画に従い行われる点検、検査、保全工事、もしくは故障への対応として行われる作業の実績をCMMSやEAMに格納する。 そのデータはCheckである保全分析で使用される。

配管や圧力容器など静機器を対象とした点検、検査で使用するアプリケーションに、日揮プラントイノベーションが自社開発したA-MISがある。

(3) Check - 保全分析
CMMSやEAMに蓄積されたデータを分析するための手法やアプリケーションは様々あるが、本連載では米国Meridium社のMeridium APMを紹介する。

RAM (Reliability,Availability,Maintainability) は、対象とする設備、プラントの信頼性、稼働率、保守性を分析し、経済的な保全手法や周期を求める手法である。

RCM (Reliability - Centered Maintenance:信頼性重視保全) は対象機器・設備を部品レベルまで体系的に分類し、各々の機器・部品にて予測される故障モードを特定し、リスクに応じた最適な保全技術・方法を選定して保全計画を立案する手法である。

RBI (Risk-Based Inspection:リスク基準検査) は、圧力容器や配管のような耐圧機器にて考慮すべき腐食や劣化損傷を分析し、リスクを評価し最適 な検査手法や時期を検討して計画する手法である。

RAMとRCMは日揮、RBIは日揮プラントイノベーションが分析の業務支援をプラントオーナーに提供している。

(4) Action - 戦略立案
保全分析の結果を受けて保全戦略 (方式、範囲、周期など) として取りまとめ、実施の是非を判断したうえでCMMSやEAMの保全計画に受け渡す。 Meridium APMはこの保全戦略の管理機能を備える。


2.PLANTIA

 日揮情報システムが30年以上前に自社開発し、今も進化し続けるPLANTIAは、装置産業のみならずメンテナンス業、組立加工業、水環境業など、設備資産を保有もしくは保守サービスするお客様に活用いただいている。 その導入実績は国内外で160社300事業所以上に及ぶ。

 お客様より厚い信頼を得ているのは、その先進的な機能と使い易さ、業務への早期定着のための支援サービス提供で、保全業務の最適化、保全費低減で確実に投資対効果が得られる点である。 以降、PLANTIAの機能と業務への早期定着化のための支援サービスを紹介する。


(1) PLANTIAの機能
 戦略的な保全のPDCAサイクルでPlanとDoの業務を支援するPLANTIAは次の主要5機能を備えている。

 ① 機器の仕様や保全方式を管理する「機器台帳管理」。 機器を視点に主要5機能に直接
   画面遷移する機器関連情報画面を提供している。(第2図)

 ② 保全戦略に基づく保全の周期や作業内容を管理する「保全周期管理」。 保全周期は星
   取表形式で表示し、期間の単位は日別から年別まで柔軟に変更ができる。(第3図)

 ③ 運転部門から保全部門への専門保全の作業依頼を管理する「修理案件管理」。

 ④ 保全部門で実施計画を立案し、作業ごとに担当者、作業期間、予備品、経費を割り当て
   て、作業費用を積算する「保全計画管理」。

 ⑤ 作業実績 (作業結果、停止時間、修理時間、添付ファイルなど) を登録する「保全履歴
   管理」。


 第2図

 第3図

 補助機能として製造部門が巡回点検で使用する「日常点検管理」があり、Apple社iPadの標準ブラウザーSafariに対応している。 iPadがネットワークに繋がっていれば、フィールドにて自主保全の結果登録や保全部門への専門保全の依頼がリアルタイムに行える。

 また、システム全般的に表示項目の増減、表示項目名の変更、表示の並び、表示幅など、プログラムを書き換えることなく、お客様のシステム管理者による設定で変更を可能としている。 表示言語は日本語と英語、中国語をログイン時に選択できるようにしている。

 蓄積された保全データの活用を容易にするため、データベース内の構造はお客様に公開しており、市販のBIツールなどでデータを抽出、加工することができる。 また、表形式の各画面にはワンクリックでExcelファイル形式に出力するボタンを備えている。

 これらの機能はお客様の声を30年以上にわたり製品に反映してきた一例である。尚、PLANTIAの最新バージョン(Ver4.2)は「生産性向上設備投資促進税制」の対象ソフトウェアである。


(2) 早期定着化支援サービス
 PLANTIAやその他のCMMS、EAMをお客様の保全業務に早期に定着化させ、効果を最大限引き出すために、次の支援サービスを提供している。

 ① 現行システムやExcelファイルで管理されている保全データをPLANTIAに移行する、
   もしくは紙媒体に記録されている情報からデータを起こす「保全データの整備と初期
   登録業務支援サービス」。

 ② 業務担当者への教育実施や業務マニュアル作成支援などの「社内適用促進サービス」。

 ③ 自社の優位性が高い作業にPLANTIAを適合させるため、標準機能をカスタマイズする
  「PLANTIAカスタマイズサービス」。

 これらのサービスは、お客様の業務と装置を知り尽くした日揮グループならではのサービスである。

 次回はCMMS、EAMの導入と活用事例を紹介する。


 <参考文献>
  (1)平岡 潤一郎「リスクベースドメンテナンス」
     (日揮技術ジャーナル Vol.4 No.4 (2015))

  (2)永田 義昭「プラントライフサイクルマネジメント (PLCM) について」
     (日揮情報システム発メールマガジン http://www.jsys.co.jp/mailmag/plcm/ )

    ※ Meridium APMは米国Meridium社のソフトウェアである。
    ※ iPadは米国Apple社のスマートデバイスである。
    ※ Excelは米国Microsoft社のソフトウェアである。




       



















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