【連 載】レーザー計測のプラントや工場保守への応用 2015.3.25
第5回 事例と今後の展望
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次に3D計測の活用事例を紹介する。
点群データの活用(第22図)
一番シンプルな活用方法は、点群の利用である。 計測した時点で点群データが得られる
為、時間も掛らず最も早く、簡単に現場状況と設計データの検証が行える。
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第22図: |
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ポリゴンデータの活用(第23図)
点群データは、計測数によりファイル容量が大きくなるとPC上のパフォーマンスが
悪くなり、データ確認が困難になることがある。 この場合、ポリゴンデータの活用は、
ファイル容量が大幅に削減できるため有効である。
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第23図: |
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パノラマ画像の活用(第24図)
パノラマ画像 (PanoMap) は、点群データを画像に変換したデータのため、ポリゴン
データより更にファイル容量を軽減させ、机上PCで写真のようにデータ確認できる。
3DCADデータがインポートできるため、干渉チェックも可能となり、簡易的な配
管アズビルト3Dモデルの作成も可能である。
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第24図: |
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オルソデータの活用(第25図)
オルソデータは、計測したデータの側面、平面を確認する意味では非常に有効な
データである。下図は、貫通孔の建築図(設計図)と現場で施工された結果を比較
した事例である。設計図にあるはずの貫通孔が現場に無い事を事前に把握してお
くことで現場での後戻り工事を削減することができる。
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第25図: |
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本技術の適用効果は、米国3次元計測調査機関であるSpar Point Research社の報告によると、工期短縮 (Time)、品質向上 (Quality)、費用削減 (Cost)、安全 (Safety)である。
1つのプロジェクトで全ての効果を得ることは難しいが、本技術を理解し、正しい手法で適用することにより期待する効果が得られる。
(1) エンジニアリング品質向上
海外事例によると、3次元計測を活用した建設プロジェクト全体への効果は、総費用が5~10%が削減され、工期は約5~10%短縮されたと報告されている。プロジェクト規模が大きければ大きいほどこの効果は増すが、逆に規模が小さいと大きな効果は得られにくい。
改造工事の場合、設備の正確な3次元情報をもとに改造計画や設計が行えるため、プレハブや工事計画など格段に精度が高まり、後戻り作業が減少する等のエンジニアリング品質向上が望める。
3次元計測の活用によるユーザー側の期待する効果を纏めると、大凡以下となる。
① 現地調査時間の削減
② リードタイムの短縮
③ 正確な寸法情報による効率的な設計や施工計画の立案
④ 現地-設計間の情報共有
(2) 施行品質向上
3次元計測の最大の効果は、現地作業の工程短縮および後戻り工事の削減である。 現場作業中の不適合は、工程やコストへの影響が大きく、現状の据え付け状態を正確に把握することにより後戻り工事を削減することが期待できる。
① 後戻り工事削減:
正確な寸法情報から施工計画を行う為、施工時の干渉を削減
② 工期短縮:
配管プレハブの精度が高まる為、現場での組立て作業や溶接作業等を大幅に削減
③ 施工計画管理:
3次元モデルを活用した建設シミュレーションによる工期短縮や安全確保
下記は、3D計測技術適用の際に必要な検討項目の代表例である。
目的に応じて正しい活用方法が重要である。
(1) 目的に応じた測定機の選定
(2) 現状手法の課題
(3) 計測できない範囲の事前確認
(4) 目的&期待する効果の整理
(5) 測定範囲の確認
(6) 要求精度
(7) 成果物
(8) スケジュール (現地、成果物の工程)
(9) 機密保持 (コンプライアンス)
当社の3D計測サービスの実績について紹介する。 一般産業系を主体として、発電プラント、石油、化学、鉄鋼、造船、自動車主体に約800件のプロジェクト実績
(屋内、海外;東南アジア、北米、南米、中東地区) がある。 3D計測の目的、用途は主に下記
① 配置検討
・機器や配管更新工事等のルート計画
・干渉チェック
・機器搬出入計画
・機器類等の取合位置確認
② 設計検証・診断
・機器配管類の耐震・応力解析
・変位量の検証 (配管、サポート)
・劣化診断 (機器類)
③ データ管理 (保全管理/予防保全/PLM)
・設備データアズビルトによる総合データ管理
・P&IDとの連携
・保全データとの連携
今後は、ハンディスキャナ、ドローン、MMS等の活用も行い、当社内の活用 (EPC、改修プロジェクト) も拡大させる予定である。
プラントや工場施設への本技術の本格的導入には未だ課題を残している。 先に述べた点群データ量の問題や3DCAD化までの処理過程で多くの時間を要する事に加え、国内の3DCAD普及率が低いことも1つの要因として挙げられる。 一方では、リバースエンジニアリングの需要拡大により当技術の認知度が向上すると共に、計測機本体の低価格化と小型化、処理ソフトウエアの飛躍的な進歩等、普及の土壌も少しずつ整って来た。
今後、3Dレーザ計測機並びに関連ソフトウエアの継続的な技術開発、およびプラントエンジニアリング技術者が将来的に有用な技術と確信を持って取り組む事が、国内市場における本技術普及のカギとなる。
現在、高度成長期時代に建設された工場や公共施設の老朽化が進んでおり、本技術がその改修や更新工事に活用され、更なる発展を遂げることを期待したい。
<参考文献>
(1) 河村幸二, スパーポイントリサーチ
「3次元計測とモデル化による配管エンジニアリングの革新」
(配管技術2007年10月)
(2) 岩田章裕,東芝プラントシステム
「プラント向け3次元レーザ計測技術の活用」(配管技術2010年4月)
(3) 河村幸二, スパーポイントリサーチ
「3次元計測の最近技術と市場動向」(精密工学会2013年 Vol.79,No.5)
(4) ENN / エンジニアニング・ネットワーク
「一般化した3次元計測技術」(2013年6月25日号 Vol.314)
「設備診断サービスが老朽プラントを救う」(2012年7月25日号 Vol.294)
※PanoMap®は当社および米国CSA社の共同開発ソフトである。
※PanoMap®は当社および米国CSA社の登録商標である。
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