【連 載】レーザー計測のプラントや工場保守への応用 2015.2.10
第2回 点群データ合成と3DCADモデルの作成
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データ合成 (Scan Registration) は、正確な寸法情報データを構築するために最も重要なものである。 レーザ計測機の計測精度が要求精度を満足していても、合成結果
(合成偏差値) が悪い値となると、エンジニアリングや施工計画における不適合の要因になる為注意が必要である。
「3項 現場計測」 に計測例を述べたが、100点を超える計測の場合、合成作業に必要なターゲット数 (基準点) は400点を超える。 このターゲットに対して各々共通点を特定し合成処理を行う作業は、通常非常に手間の掛かる作業となる。
しかし、例えそれが300点~500点を超える規模の計測であっても合成処理の誤差 (各基準点に対する偏差値) を限りなく低い値に抑えなければならない。
また、近年は現場で基準ターゲットを使用しなくても計測データ (点群データ) から面 (Plane) や交点などを抽出して自動合成が出来るソフトウエアも登場している。 しかし、屋内の場合は壁等の面や交点を抽出できる条件が整いやすいが、屋外の場合は交点の抽出が難しい場合が多く課題を残している。
なお、筆者らでは、合成処理に関し2009年度から基準ターゲットを使用しないターゲットレスによる合成手法の研究開発に取り組んでいる。 2010年から大規模施設のレーザ計測作業に適用し、現場作業時間の大幅な削減 (従来手法と比較して約半分の時間削減) を実現している。
本手法、原理についての紹介は割愛するが、このターゲットレス手法の最大の利点は現場作業時間の削減であり、現場計測時間が当社従来比約50%短縮された。
一例として、約3200㎡の施設に対し、レーザ計測作業の期間は準備含め2日間で終えている。
レーザ計測データ (点群データ) から作成するデータ形式は、3DCADデータが一般的である。 データ作成は、レーザ計測機メーカが提供している汎用ソフトウエアを利用する場合が多いが、近年サードパーティーのソフトウエアも増えており、3DCAD作成手順も比較的簡単になってきたが未だ課題も多い。(第5図)
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第5図:アズビルト3DCADモデル作成の課題 |
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1点目は点群のファイルサイズが大きい事で、解像度にもよるが一般的には1計測データが150MB以上のファイルサイズになるため、ハイエンドPCを使用してもハンドリングに苦慮することが多い。
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第6図:アズビルト3DCADモデル作成例 |
2点目は点群データからのモデリング作業であり、点群データから計測対象物の形状を特定しモデリングすることは非常に手間が掛かる。(第6図)
近年、面や円柱形の3DCADモデル生成を自動処理で作成できるソフトウエアも登場しているが、属性データ入力や形状生成等の課題もあり残念ながら実プロジェクトベースに適用されるまでに至っていない。
一方で、各メーカは本課題克服に向けた取り組みを行っており2000年代と比較すると飛躍的に3DCADモデル作成手法が改善され、今後の実用化が多いに期待できる。
ソフトウエアの最新動向としては、プラント向け3DCADソフト上のインタフェース (インテリジェント3DCAD) が改善されていることや各計測機メーカのバイナリファイルが直接3DCADソフトに読み込める等、計測機の技術促進と並行してソフトウエアについてもユーザーフレンドリーな改良や新機能開発が進んでいる。
プラントなどの3DCADモデル作成に未だ課題があることを前項に述べたが、当社ではこれら課題に対し、米国企業と共同開発した点群処理手法を適用している。(第7図)
第7図:当社の取り組み概要 |
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3次元イメージビューア
3次元イメージビューアは、レーザ計測により取得した点群輝度データ (Intensity) を有効利用したものである。 3次元イメージビューアは、ファイルデータサイズを点群データに対し約1/15程度に軽減、PC上でスムーズにデータを閲覧することができる。
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第8図:インテリジェント3DCAD
モデル作成例 |
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第9図:点群輝度データを有効利用した
ビューア |
位相差方式タイプの計測機は、XYZ座標および高解像度の水平360°の輝度データ (Intensity) を取得することができるため、本データを有効利用することにより、高解像度の画像上にて細部に渡る現場設備類のデータがパソコンで再現され、寸への展開が図れるものである。(第8図)
3次元CADデータ作成は、同じく3次元イメージビューアから配管を主体としたモデリング作業を実施する。 一般的に汎用のソフトウエアでは、点群データ上からモデリングを行なうケースが多いが、データサイズが大きいことやモデリング対象の設備を特定する際の視認性が劣る事に課題がある。
また、点群切出しを行ってから3DCADを作成するため、作業時のハンドリングが悪く時間を要す要因となっている。
3次元イメージビューアからの3DCAD作成作業の特長は、パノラマ画像上からモデリングを行えるため、デジタルカメラで撮影した画像と同様に視認性が良いことにある。
配管3DCADを作成する場合、配管全表面の1/4の点群データがあればJISやANSI規格に追従した配管3DCADデータの作成が可能であり、かつ3DCAD化したい配管に対し、1点クリックのみでJIS呼び径の配管3DCADモデルが作成できるのも3次元イメージビューアの特長である。
第10図:点群からのパノラマ画像 |
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① 点群データは扱わない (ファイル容量軽減)
② 画像上からの寸法測定 (視認性向上)
③ 専用フリービューアの利用 (CAD環境不要)
PanoMapは、ファイルデータサイズを点群データに対し約1/15程度に軽減、PC上でスムーズにデータを閲覧することができる3次元イメージビューアソフトである。
最近のレーザ計測機は、XYZ座標および高解像度の水平360°の反射強度画像データを取得することができるため、本データを有効利用することにより、高解像度の画像上にて細部に渡る現場設備類のデータがパソコンで再現され、寸法測定や3DCADモデル作成等の展開が図ることができる。
なお、PanoMapは、ファイル容量を軽減する目的で変換処理したデータを使用するため点群データを直接扱うことはできない。
次回は、PanoMapの基本機能や3DCADモデル作成について解説する。
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