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 2023.10.06
 【山 九】
  各種システムを自社開発、顧客ニーズに応じて最新技術も駆使
  日工検など、グループ企業との連携も強み

山九は、2011年以降、メンテナンス事業の効率化を目的に自社で開発した「SANKYU-工事進捗情報サービス(SX-Progress)」を開発し、石油・石油化学などの顧客の大規模定期補修工事(SDM)に順次導入してきた。

その後も、顧客や現場ニーズに応じて、各種システム開発やドローン、3Dデータ活用など様々な取組みを展開している。



効率向上を目的に自前でソフトを開発

山九が「SANKYU-工事進捗情報サービス(SX-Progress)」に取り組んだのは、当時、SDM期間の情報伝達には、メールや電話を使用していたが、この伝達方法では、ミスが多発したからだ。この問題を解決する答えが、「SX-Progress」の開発だった。

当初の「SX-Progress」は携帯電話で使用できるシステムとして開発されたが、自社開発でもあり、独自に改良を重ねてきた。現在では、「i-Pad」のようなタブレット端末をはじめ、様々なツールでも使用でき、プロジェクト関係者の情報伝達に活用されている。

また最近では「SX-Progress」に加え、「重機配置システム(SX-Layout)」を自社開発した。重機配置の管理は紙面やホワイトボードを使って行っていたが、掲示や記入に場所や時間の制約があるため、広い敷地においてタイムリーな情報交換、状況把握を行うことは困難であるなどの問題があった。

 重機配置システムイメージ図

「重機配置システム(SX-Layout)」は、インターネットに接続し、重機の配置情報をタイムリーに確認できるシステムであり、場所の制約がなく現場でも入力や確認ができるため、時間のロスを削減できるようになった。また、重機の使用状況を容易に把握できることから、危険度の高い重機作業を即座に確認できるのが特徴だ。

顧客の中でも、自前で技術開発に取り組み、高度なデジタルツールを開発しているケースもあり、そのシステムを活用することもあるが、自社開発であれば柔軟な対応を行うことが可能となるので、顧客や社内の現場に対し、業務を効率化できる。


スマートグラスやドローン、3Dレーザスキャナも活用

山九のメンテナンスのデジタル化の特徴は、顧客の新たな要望に応えながら開発を進めてきたことだ。

例えば、顧客が「地上から100mの高さのフレアの事態を目視したい」と要望すれば、山九の作業員がスマートグラスを装着して高所に登る。高所でスマートグラスにより得られる画像を顧客に送信し、顧客はその映像を現場に行かなくても共有することができて、リアルタイムでメンテナンス計画を立案することが可能だ。

また2020年3月に、グループ企業の日本工業検査(日工検)、ドローンによるサービスを提供しているルーチェサーチと山九の3社により、ドローンを活用した稼働中のプラントの検査サービスを開始した。ドローンの技術的な進化によりプラントの検査にも活用できるようになったことから、顧客の関心の高まりを受け、サービスが開始された。

しかしプラントの稼働中には、防爆の規制があり、プラント内部ではドローンを飛ばすことはできない。このため、稼働中のプラントに対しては、遠隔からの撮影しかできないなどの制約を受けることが多い。このため、プラントが停止しているときや、稼働中では、遠隔での撮影にドローンを活用している。

またメンテナンスの対象となった、ユニットや装置が3Dデータを所有していないケースもある。

こうしたケースでは、3Dレーザスキャナにより点群データを取得し、そのデータから3Dデータを活用し、高度なメンテナンスサービスを提供している。自社で独Z+F社の3Dレーザスキャナを持ち、顧客の要求に応じて使用している。作成された3Dモデルから、配管設計や計画を行ったり、資機材の搬入計画を立案している。



今後、より重視されるデジタル化

山九では今後も、メンテナンス事業におけるデジタル化に力を入れる。

スマート保全推進グループの織田 靖之マネジャーは「わが国のプラントは老朽化が進んでいるため、保全箇所が増えている。その反面、限られた人材で取り組まなければならない。そのためには、少ない要員で効率の良い保全を実施しなければならない。これらの状況に対応するにはデジタル化は不可欠。これまで紙でやり取りしていたことをデジタル化したり、デジタル化により労働時間を削減し業務を効率化させることが最重要課題である」と指摘する。

地味な取組を積み重ねるしかないが、顧客の要望に応えながら、最新のデジタル技術を活用したメンテナンス技術が実用化されている。

現在、スマートグラスやドローン以外に、半自動ジェット洗浄、また日工検が開発した、振動可視化とRT自動判別システムなどによる設備の検査・診断も行っている。

日工検を含めたグループによる技術開発に対応できる点は、山九の強みだ。



㈱重化学工業通信社
 

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