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 2023.6.10
  資産の自己最適化でネットゼロに対応
  AIとMLを活用、意志決定を改善

資産の最適化ソリューションを提供するアスペンテック。その事業内容に変更は無いものの、ネットゼロの時代を迎え、資産最適化には再定義が必要だ。この状況下、アスペンテックは、ユーザーやパートナーと共同で「Aspentech Emission Management」という新たなソリューションを開発した。AIとML(マシンラーニング)をが新たな資産最適化を実現する。

資産の最適化ソリューションを提供するアスペンテック。

かつてはプロセスシミュレータを中心としたソリューションを提供してきたが、2020年12月にOptiPlantを買収した。その目的は、プロセス産業のオーナーオペレーターやEPC企業向けのソリューションを強化することだったが、買収はプラント資産の最適化ソリューションを提供するベンダーへと、ポートフォリオを変えた。

そして今、世界がネットゼロやサステナビリティを志向するのに伴い、資産の最適化は従来とは異なる要素を持つようになった。かつては、資産の生産性や効率を主に対象としていれば良かったが、サステナビリティの時代を迎え、資産の最適化の中身が変わった。その変化をアスペンテックも確実にキャッチアップしている。


人口増に伴うエネルギー需要の増加の中でネットゼロが目標

わが国では、人口減少が始まっているが、世界に目を転じれば、人口はまだまだ増加する。

2022年に世界で80億人だった人口は、2050年には97億人に達する見通しだ。そして人口が増加すれば、エネルギー需要も増える。世界のエネルギー需要は2050年には50%増加し、発電量は75%増加する見通しだ。

また人口増加に伴い、世界のリチウム電池の生産量は2020年の600%に、世界の化学薬品生産量は300%へと増大し、2050年までに150兆ドルのエネルギー分野への投資が必要だとされている。

世界的に人口が増加すれば、それに伴いエネルギー消費も増え、当然のことながらCO2排出量も増加するため、カーボンニュートラルの実現は難しくなる。

しかしアスペンテックは、これまでに培ったノウハウを結集、カーボンニュートラルの時代においても、資産の最適化を実現するソリューションの開発に取り組んでいる。

 アスペンテックの排出量管理ソリューション
(エネルギーの利用料と二酸化炭素排出量のトラッキング、予測、意思決定を実現)

アスペンテックは創業以来40年間に渡り、全世界の3,000社以上の顧客とともに、数多くのイノベーションを成し遂げてきた。現在は、3,700名以上の社員がイノベーションに取り組んでいる。これら人材が創出する顧客価値は実に590億ドルに達する。この価値は、まさしく1,600万トンのCO2の排出削減に匹敵する。

40年間以上にわたって培った技術ノウハウを結集して、アスペンテックはネットゼロ時代に向けた資産の最適化ソリューションの開発に取り組んでいる。



目指す資産の自己最適化

アスペンテックには、資産のライフサイクルにわたるソリューションとして、その各段階でそれぞれソリューションを保有している。

設計段階の「パフォーマンスエンジニアリング」、運用段階の「製造とサプライチェーン」、そして維持・管理段階のアセットパフォーマンス管理、それぞれの各段階でソリューションを保有している。

これらのソリューションに、2021年10月のエマソンとの経営統合により、サブサーフェスエンジニアリングとデジタルグリッドのソリューションが加わった。

サブサーフェスエンジニアリングのソリューションでは、地下における地質学を対象とし、デジタルグリッドは、送配電に関わるもので、アスペンテックのエンジニアリング関連のソリューションはラインナップを拡充した。

アントニオ・ピエトリ会長 兼 CEO
この拡大したソリューションに、アスペンテックは、マシンラーニング(ML)とAIを組み込み、ソリューションのいっそうの強化を図ることを狙った。

分野に対する専門性に、AIとMLによるデータ管理と高度な分析を加味したソリューションの提供に注力した。


ヴィカス・ドーレ ゼネラルマネージャー
アスペンテックの、ヴィカス・ドーレ サステナビリティ・インダストリー・ビジネスユニット ゼネラルマネジャーは「従来のエンジニアリングソリューションモデリングの能力と、AIとMLの能力を活用することで、純粋にAIだけを活用する時以上の大きな力が生まれると確信している」と言う。

こうした取組は、アスペンテックの「インダストリアルAI戦略」の一環だが、今後、ユーザーの資産の最適化を図るうえでも重要な戦略になる。

一連の取組により、アスペンテックは、「Aspentech Emission Management」という、新たなソリューションの開発に到達した。

「Aspentech Emission Management」は今年3月に発表されたが、従来のモデルの最適化に加え、インダストリアルAIにより、意思決定を改善することを狙った。この開発には、アスペンテックのユーザーと共同で取り組んでおり、ユーザーの最適化が目指された。

そこで目指した「ユーザーの最適化」は、資産自体が自ら最適化を目指すもので、「自己最適化」とも呼ばれるものだ。この「自己最適化」を実現するには、資産の運用の間に得られる様々なデータの挙動の情報から得られる自己学習やその能力が必要になる。これらを自己学習して、自己結合する能力が求められる。こうしたプロセスを経て、持続可能な資産になっていくのである。

例えば、水素エコノミーへのアプローチでは、水素エネルギーの分析に、アスペンテックのシミュレーションテクノロジーが活用できる。またEPCやオペレーション段階においても、アスペンテックにはすでに、それぞれソリューションがある。

ただサステナビリティ分野への技術的な対応には、様々な技術とそれに伴う知見を融合する必要がある。これらの要素を融合しやすくするために、ユーザーが的確な方法を発見しやすくするため、アスペンテックでは、モジュラーを作成し、ユーザーがテクノロジーを容易に選択できるようにしている。

こうしたモジュラー構成は、アスペンテックの将来を担う、新世代のエンジニアたちにとっても、役立つはずだ。

アスペンテックは「資産の最適化」の内容が時代とともに変化するのに伴い、より困難な課題を解決する必要があることを認識している。そして、そのためのソリューションの実現には、一社の努力で対応するのが困難と考え、これまでにもユーザーをはじめ、主要な大学や学会とも協力してきた。こうした協力関係は今後、ますます重要になると考えている。

またアスペンテックは、「ミレニアル世代」と呼ばれる若い世代の活用にも注目している。


将来を担う「ミレニアル世代」

「ミレニアル世代」とは、2000年以降に社会に進出した世代だが、若い時からスマートフォンなどによりITに親しんできた世代だ。

アスペンテックでは、2025年までに75%の社員やエンジニアが「ミレニアル世代」になる。「ミレニアル世代」の人材開発については、二段構えで取り組む。

まず、ユーザーエキスペリエンスについて、新たな期待がある。この点は、「ミレニアル世代」の特徴でもあり、この能力を損なうことなく、尊重する。そのうえで、サステナビリティのような複雑なチャレンジに対して、対応できるような能力を短期間で培うようにするということだ。

「ミレニアル世代」の新たな能力を尊重しつつ、アスペンテックの培った複雑な課題に対応してきた経験を理解することで、新たなソリューションに対応する。

「ミレニアル世代」の特徴とアスペンテックの企業としての経験を融合することで、未来のニーズに的確に応えることを狙う。



㈱重化学工業通信社
 

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