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 2023.4.6
 Cognite 最高戦略・開発責任者兼共同創業者
 ジョン・マーカス・ラービック氏に聞く


 様々なデータを統合的に扱うソリューションにより短期間で成長
 ITエンジニアとドメインエキスパートが開発した理想の
 ソリューションを実現

オイル&ガス、石油化学などの産業では、様々なソフトウェアが利用されている。しかしソフトウェアの多くは、オンプレミス型で、連携が取れていないのが実情だ。

CogniteのCDF(コグナイト・データ・フュージョン)は、ソフトウェアの連携ばかりではなく、ロボットの眼から得られた画像、動画、音声など、様々なデータを統合的に扱うことができる画期的なソリューションだ。

2017年に設立されたCogniteだが、短期間でプラント系データ活用にイノベーションを起こしたと断言できる。最高戦略・開発責任者兼共同創業者であるジョン・マーカス・ラービック氏に聞いた。

ジョン・マーカス・ラービック
Dr. John Markus Lervik 氏


















フォーマットに関係なくデータを統合


ENN Cogniteは、どのような会社ですか。

ラービック 2017年にノルウェーのアーカーグループの企業として設立されたオスロに本社を置くソフトウェア企業です。サウジアラビア国営石油会社(ARAMCO)もCogniteに出資しています。

オイル&ガス、石油化学業界向けに、SaaSを活用したソリューションを提供しています。ソリューションをスケール化された形で展開しているのがその特徴で、全世界に600~700名の従業員がいます。

ENN オイル&ガスや石油化学業界のソリューションの使い方について、どのような問題があると御覧になっていますか。

ラービック 現在、DX化が求められるのと同時に、全世界の企業が脱炭素化を求められています。

こうした中で、多くのユーザーが様々なソフトウェアを活用しています。例えば、ERPやエンジニアリングシステムのCADなどが使われています。これらソフトウェアから得られるデータは、フォーマットが様々であるうえに、データがサイロ化されているという問題があります。

これらデータを扱う場合、効率の良いワークフローで活用するには、様々なデータを統合して、ユニファイドした形で使っていく必要があります。

ユニファイドされたデータを活用するには、SaaSが有効ですが、多くの業界において、活用されていないのが現状です。

ENN そこで「SaaSのスケール化した形での活用が重要」になるのですね。

ラービック デジタル化やスケールアップを実施しても、一度きりであれば、時間がかかるうえに、コストも高額になりがちです。

その場合、仮に「改善した」と言っても、ROIにおける効果が見られません。多くの御客様は複数のプラントを操業されていますし、場合によっては、100以上のプラントを所有されています。

こうした場合、御客様はそれぞれの工場に対し、より速く、ロールアウト(製品の開発・市場投入)する必要があります。

そのうえで、ROIの効果を持たせるには、より速い展開が求められます。

ENN スピード感を持って、ロールアウトを展開するには、どのようなことが必要になりますか。

ラービック 例えば、「工場1」「工場2」があるとします。

通常、これら2工場では、ERPシステムや工場が独自に作成した作業員の管理や予知保全などのアプリケーションが活用されています。これらシステムは、それぞれの工場が活用しているシステムには適合しています。

しかし多くの場合、工場間では、異なるシステムが活用されています。ここでデータ連携されていないと、データの抽出に時間もコストもかかります。

ここでCogniteのCDFを活用して、工場間で異なるシステムを一度、ユニファイド化します。ユニファイド化することで、工場のシステム関係なく、共通的なアプリケーションをどんどん作ります。

50以上の工場を持つ御客様でも、各工場でどのようなアプリケーションが使われているかを確認することなく、クラウド上のデータをそのまま活用することで、2週間でアプリケーションが作れるようになります。こうして、SaaSのスケール化が行われます。

ENN CDFでは、ロボットの眼から取り込んだ様々なデータを扱うことができます。

ラービック ロボットの眼が取得した画像データ、動画、音声、赤外線情報など、様々なデータを取り込むことができます。取り込んだデータをアルゴリズムを活用して、計算もできます。

またサイロ化されたシステムからデータを取り出して、ダッシュボードで見せることもできますし、様々なシステムからデータを取得して、デジタルツインに入れ込むこともできます。集めたデータを活用して、最適化します。

ある御客様では、プラントの日常点検において、自律型のインスペクションを行っています。

多くの製油所や石油化学プラントでは、従来型の働き方では、インスペクションが難しくなっています。人を集めたり、作業を行ううえでも、正確性を確保するのが困難になっています。

そこで、ドローンやカメラを使うことで、従来よりも多くのデータを収集し、AIで自律型の検査を行えます。これがCogniteのユニークな点です。


ITエンジニアとドメインエキスパートが共同でソフト開発


ENN 2017年に設立され、短期間でグローバル企業に成長しましたが、その要因をどのようにお考えですか。

ラービック 設立当初から、IT業界で高度なスキルを培ったITエンジニアと、製造現場のエンジニアリング経験を持った、ドメインエキスパートと呼ばれる世界的にも一流の人材に恵まれました。

特に、当社は、アーカーのグループ企業ですから、ドメインエキスパートを集めることができました。

このためソフトと業界に関する知識が豊富な人材を集めることができ、これらのコンビネーションがうまく行ったことが成功の要因の一つと言えます。

そしてもう一つの要因としては、従来のオンプレミス型のソフトウェアのアプローチに比べ、SaaSのアプローチを取ることで、早い時期に、システムを構築できたことが挙げられます。

これまで、業界で活用されてきたソフトはほとんどがオンプレミス型で、工場内にシステムを導入するというのが基本的な手法でした。この場合、御客様がアップデートを行う必要がありますが、時間もかかりますし、最新のソフトが入りにくい。

それと比較して、SaaSにより、クラウド上でソフトを提供すれば、SaaS上で週に2,000くらいのポイントを継続的に改善できます。SaaSのアプローチを取ることで、最初は十分な機能が揃っているとは言えないソフトかもしれませんが、御客様に導入していただき、様々な要求をうかがいながら、毎週・毎日、ソフト自体が、より良い物に変わっていきます。

多くのソフトの導入がオンプレミスで行われているのが、ソフトウェア業界の実態です。その機能を早い時期から、SaaSで提供したのが、Cogniteの先進的な所と言えると思います。


フラットな組織でイノベーションを生み出す


ENN 人材育成には、どのように取り組まれていますか。

ラービック 人材という点では、まず、ベストな人材を採用することを重視しています。また良い人材が在籍していると、良い人材が集まりやすくなります。このやり方で、ワールドクラスと言われる高い能力を持つ人材が集まります。

そして良い人材を集めたら、これらの人材のモチベーションを向上させることが重要です。この点では、当社の本社があるスカンジナビア半島も文化が良い働きをします。

例えば、スカンジナビアの文化では、チームワークが重視されます。その特徴はフラットな組織にも反映されています。その結果、スマートで有能な人材が集まっていると考えています。

フラットな組織で階層構造が無いことは、重要なポイントだと思います。民主的に考えているので、社員が自分の意見を主張することを恐れていません。

例えば、CEOとエンジニアという立場で会話する時でも、エンジニアは自分の意見をフランクに発言できます。これは、イノベーションの重要なポイントです。

私自身、エンジニアがCEOに意見するのは良い事だと思います。理由は、CEOだからと言って、すべてについて解を持っているわけではないからです。

意見が言えるというのは、フラットな文化があるからです。このフラットな文化により、イノベーションができると考えています。

ENN スカンジナビアで、チームワークが重視される理由は何ですか。

ラービック われわれスカンジナビアでは、「ワンチーム」と言っていますが、世界の方々との協力を推進しており、米国のようなトランザクションベースで仕事を進める企業とは異なります。

長期的に関係性を維持することを重視したり、チームにまたがった形で、チームワークやクォリティを尊重するところに重きを置いています。またチームをまたがった形でチームワークにより作業することを重視しています。

ENN グローバル企業になろうとしていますが、従業員の国籍については、いかがですか。

ラービック 65の国籍の人材を採用しています。この業界では、テクノロジーに取り組んでいますから、多様性を実現するのは困難な面もありますが、ジェンダーダイバーシティには配慮しています。


長期的関係を構築できる日本市場を重視


ENN 日本市場をどのように御覧になっていますか。

ラービック 私自身、2000年以降、20年以上に渡り、日本でビジネスをしてきており、非常に重要な市場だと考えています。

その理由はまず、経済規模が大きいことです。

もう一つは、日本市場への参入は難しいのですが、一度参入できれば、われわれが提供するイノベーション、技術、品質をしっかりと理解し、尊重していただけます。

さらに長期的な関係を構築できるのも、日本の御客様の特徴です。こうした御客様の要望にイノベーションで応えていますが、日本で培ったイノベーションを他国に提供できます。これらイノベーションの背景には、長期的なパートナーシップがあるからだと思います。

このため、日本市場において、今後もイノベーションが起こせると考えています。

ENN 今後、どのような課題を重視していますか。

ラービック オイル&ガスですが、上流と下流を含め、重視しています。製油所でも需要がありますし、石油化学分野にも注力します。鉄鋼・アルミでは、プロセスが必要なエリア、特にエネルギー系、電力、ユーティリティにもフォーカスします。

大きな処理工程があるプロセスを持つ業界にソリューションを提供することを重視しています。

ENN 世界的に求められる脱炭素化には、どのように取り組まれていますか。

ラービック 最近は、運転時のCO2排出量、カーボンフットプリント、メタンガスなどについて、御客様が報告を求められるようになってきました。この需要に応えやすいように、レポートを出しやすくしています。

そして、CO2の排出量を削減するには、創業の効率向上、効果、生産性などが求められますが、これら効率向上にも取り組み、排出量の削減そのものにも取り組んでいます。

ENN ありがとうございました。




ノルウェー科学技術大学(NTNU)で博士号を取得後、1997年にFast Search &Transfer(FAST)を共同設立し、2008年にマイクロソフトが13億米ドルで買収するまで、最高技術責任者と最高経営責任者を務める。その後、マイクロソフトのエンタープライズサーチ担当バイスプレジデントに就任し、2009年に退社。

2010年にソフトウェア会社 Cxenseを設立し、2014年にオスロ証券取引所に上場。また、2005年にForbesによってE-gangのメンバーとして認められる。

現Cogniteの最高戦略・開発責任者兼共同創業者、Cogniteの創業から2022年まではCEOを兼務。キャリアを通じ、働き方に革命を起こすべく、データの解放とテクノロジーによる革新への情熱を企業へ注ぎ込んでいる。


     ジョン・マーカス・ラービック
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