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 2023.1.6
 AVEVA ピーター・ハーベックCEOに聞く
 プラントライフサイクルに最適ソリューションを提供するAVEVA
 オペレーションでは、サステナビリティもサポート

 かつて、3次元CADなどのエンジニアリングITソリューションの有力ベンダーとして、多くのユーザーを獲得したAVEVA。

そのAVEVAは、シュナイダーエレクトリックとの経営統合を経て、2021年にOT(オペレーショナル・テクノロジー)では、世界最大シェアを誇る「PI System」を持つOSI softを買収、この買収をきっかけにプラントライフサイクルソリューションをカバーするベンダーとなった。

これにより、プラントライフサイクルを通じて、デジタルツインを提供できるなど、幅広いソリューションに対応が可能になった。プラントライフサイクルソリューションを武器に今後、どのように展開するか、ピーター・ハーベックCEOに聞いた。

  Peter Herweck 氏
 (ピーター・ハーベック)




















プラントライフサイクルの統合管理を可能にしたAVEVA



ENN 2018年3月に、シュナイダーエレクトリックとAVEVAが経営統合した時、「ユニファイド・エンジニアリング」が標榜されていました。当時は、AVEVAの持つ「E3D」などの3次元CADと、シュナイダーのシミュレーションソフトの機能を統合し、設計の生産性を向上することが目的でした。

しかし2021年に「OSI soft」を買収すると、AVEVAはOT(オペレーショナル・テクノロジー)ソフトを扱うベンダーに変貌しました。この大きな変化の背景には、何があったのでしょうか。

ハーベック たしかに、AVEVAとシュナイダーが経営統合された時は、「ユニファイド・エンジニアリング」を前面に打ち出した展開をしていました。

しかし、オーナーオペレーターにとっては、エンジニアリングとオペレーションを統合して一つにすることが重要でした。長年に渡り、オーナーオペレーターのお客様は、「OSI soft」の「PI system」を使用しており、これらユーザーとAVEVAは協力関係にありました。

またOSI softの創業者である、Pat Kennedy氏は以前から、データプラットフォームを構築し、その上に、デジタルツインを置く考えを持っていました。AVEVAとの統合は、このPatの考えを具現化するのに最適な方法と考えられました。

「OSI soft」には、「PI system」があり、AVEVAには、3次元CAD「E3D」などのエンジニアリングツールや、オペレーション管理パッケージソリューションの「Wonderware」もあります。これら3つのソフトのデータが「AVEVA Data Hub」に行き、そのうえにデジタルツインを構築できます。

ENN プラントのライフサイクルを考えた場合、AVEVAのプレゼンスについては、いかがですか。

ハーベック 「PI system」はプラントOTの分野で世界最大シェアです。「Wonder ware」はオペレーション管理パッケージソリューションでは第2位のシェアです。またエンジニアリングITツールは、AVEVAとヘキサゴンがシェアを40%ずつ取っていて拮抗しています。

ENN AVEVAはプラントのライフサイクルをカバーする商品群をお持ちですが、AVEVAグループ以外のソフトウェアとの互換性はいかがですか。

ハーベック ヘキサゴン、アスペンテック、ベントレーシステムズなど、競合他社のソフトウェアとの互換性についても問題ありません。

様々なベンダーのデータをまとめることができ、ソフトウェアからのデータばかりではなく、DCS(分散型制御システム)、PLC(プログラマブルコントローラ)、RTU(遠隔端末装置)、IoTシステムなどのデータにも対応できます。

これらデータを「PI system」「Wonderware」に上げることができます。


サステナビリティをサポートするAVEVAのソリューション


ENN 世界的に脱炭素化が求められていますが、この点への貢献はいかがですか。

ハーベック すべての企業は、CO2の排出を削減する必要がありますが、AVEVAはこの問題に対して、ソリューションを提供できます。

お客様のデータの可視性を向上することで、オペレーションのバランスを取り、蒸気がたくさん排出するプラントがあれば、蒸気をいかに電気に換え、CO2の排出を削減するかを検討できます。AVEVAのソリューションを活用すれば、お客様のプラントのオペレーションからCO2の排出量を削減するためのサポートが可能です。

これには、プロセスシミュレーションのソリューションを活用するのですが、モデル化することで、CO2の排出量の計算が可能です。

ENN プラント操業の自動化への対応については、いかがでしょうか。

ハーベック 世界中で熟練度の高いオペレータが不足しており、自律型プラントの実現へのニーズは高まっています。リモートで運転できるようにするため、オートメーション化をさらに加速する必要があります。

ENN 具体的に、自律型プラントはどのように実現されるのですか。

ハーベック オペレーションデータの透明性を実現することが大前提になります。お客様の経験を提供するために、可視化することを重視しています。

これまで、プラントの保全担当者は、ポンプの故障のために工場に入ると、現場に行き、状況を確認したうえで、一端、現場事務所に戻り、修繕の準備をして再び工場の現場に入っていました。

しかし、AVEVAのソリューションを活用すれば、工場の現場に行く前に、バーチャルで3Dデータを確認して、リアルタイムの情報を認識したうえで、予想をしてから、現場に入ることができます。

またウェアラブルカメラを装着して現場に入れば、現場にいないオペレータにトラブル箇所の画像を送信できます。

さらに、修繕情報など、設備の情報を持つ「iPad」や「iPhone」を持って現場に持ち込んで、修繕するポンプに対応することもできます。

技術者不足で、専門家が少ない中、デジタルでコミュニケーションを取りながら、オンサイトで、専門家が未熟なエンジニアを支援し、専門家がオペレーションセンターで遠隔サポートすることが可能です。

すべてのソフトを統合することで、様々なことが可能になります。


魅力的なアジア・太平洋市場


ENN アジア・太平洋および日本市場の位置付けについて、教えてください。

ハーベック アジア・太平洋市場は、世界の成長エンジンとも言える地域です。その中で、日本は世界第3位のGDPを誇ります。GDPの多くは産業から生まれており、多くの日本企業がグローバル展開をしており、非常に魅力的です。

特に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、デジタル化がいっそう加速しました。同時に、お客様はデジタル化により、サステナビリティの取組を加速しています。

ENN アジア太平洋地域の取組事例を教えてください。

ハーベック アジア太平洋地域は、労働力不足、コロナの感染拡大に伴うサプライチェーンの再調整、またリモートワークなどの労働形態の変化などに直面しています。

これらの問題に対応するには、正しい意思決定をしなければなりませんが、そのためには、データの透明性が必要です。

日本には、ENEOSの成功事例があります。ENEOSは、「AVEVA Asset Information Management(AIM)」を活用して、デジタルツインプラットフォームを構築しました。

「AVEVA AIM」は、設備の資産情報を一元管理し、設計から運転・保守までのプラントのライフサイクル全体に渡って情報を記述し、コンテキスト化します。これにより、すべての製油所でデジタルツインを構築し、同時に上流のシステムにおいて、3Dデータを活用し、パフォーマンスを最適化しました。

また共通のプラットフォームでデータを共有することで、エンジニアリングから運転管理まで、情報共有が可能になりました。

この事例は、異なるチームでも、デジタルがチームのコラボレーションを強化するのに役立つことを示しています。まさしく、デジタルが働き方を変えると言えます。


デジタルツインで最適OTを実現


ENN リアルの世界にあるプラントをバーチャルな世界に表すデジタルツインは、プラントの運転管理に効果的な役割を果たすようですね。

ハーベック これは、アジア太平洋地域の事例ではありませんが、ドイツの有力化学メーカーであるBASFもデジタルツインを効果的に活用しました。

実際にデジタルツインを活用することにより、これから現場で働こうとする作業員を教育しましたし、無駄なコストの発生を抑えた持続可能なパフォーマンスを推進しました。

AVEVAは、世界中の企業の650名のリーダーに聞き取りを行ったのですが、その結果、データ活用については、87%の企業が不完全なデータで意思決定を行い、78%の企業がデータ共有が最大の価値と認識しているという結果を得ました。多くの企業は、データに基づく意思決定をしたいと考えているにもかかわらず、不完全な無意味なデータの洪水に溺れている状況にあります。

「AVEVA Data Hub」は、生きているデジタルツインを中央部に置き、どのようなデータを共有すべきか、コントロールします。AVEVAのアーキテクチャは、そのために構築されています。

またシステムが互いに学習し合います。このプロセスは「様々なシステムが互いに連携し学習し合うことで得られるインテリジェンス」と呼ばれていますが、これにより、設計・運用・パフォーマンスの最適化を支援します。


    AVEVAが提供するIndustrial Informationを核にして
 ライフサイクルを統合したソリューション


ENN 昨年9月に、設備資産ライフサイクル管理ソリューションを持つ米Aras社と戦略的ライセンスパートナーシップを締結しましたが、その意義を教えて下さい。

ハーベック Arasの持つライフサイクル管理機能は、AVEVAがサポートするすべての作業の大規模なデジタルトランスフォーメーションにおいて、重要な役割を果たします。私たちがサポートするすべての産業の大規模なデジタルトランスフォーメーションにおいて、重要な情報に基づくため、エンジニアリング・デジタルツインの正確性と信頼性をお客様に提供します。

Arasとのパートナーシップにより、これをさらに推し進め、お客様は革新的なクラウドベースの設備資産ライフサイクル管理ソリューションを活用し、デジタルトランスフォーメーションを加速できます。

ENN 今後、重視する取組について、教えてください。

ハーベック 重視しているのは、デジタルツイン、没入型体験/バーチャル体験、インダストリアルメタバースです。またインダストリアルメタバースにも本格的に取り組みます。

ENN ありがとうございました。



 2021年5月に、最高経営責任者(CEO)としてAVEVAに入社。前職のシュナイダーエレクトリックでは、グローバル産業自動化事業を統括し、AVEVA取締役の副会長も務めた。

日本の三菱電機で、ソフトウェア開発エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後シーメンスに入社。工場およびプロセス自動化分野で複数の役職を歴任し、最高戦略責任者として企業戦略と遂行を推進。

2016年にシュナイダーエレクトシックの執行役員会に任命され、産業自動化および産業ソフトウェア事業(2018年にAVEVAと合併)を指揮。


Peter Herweck(ピーター・ハーベック)氏





















ドイツ、中国、米国、フランス、スイス、日本など、世界各国で幅広い分野の経営職や上級管理職を務める。

ウェイクフォレスト大学スクールオブビジネスでMBAを取得。フランスのメッツ大学およびドイツのザールランド大学で工学の学位を取得。ハーバードビジネススクールAdvanced Mnagement修了。






㈱重化学工業通信社
 

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