2022.7.25
アスペンテック Antonio Pietri社長 兼 CEOが語る新生アスペンテック
新生アスペンテック、複雑化するエネルギー供給にソリューションで対応
インダストリアルAIの活用で、サステナビリティと経済性を両立 |
今年5月16日、プロセスシミュレーターやプラントの最適設計を提供するソフト「Opti Plant」を持つアスペンテックは、世界的な制御システムベンダーであるエマソンのソフトウェア部門と経営統合された。
この統合により、アスペンテックのソリューションには、送配電を最適化するソリューションと地質シミュレーションソフトウェアがポートフォリオに加わった。
これまで、プロセスプラント向けソリューションで優位性を保ってきたアスペンテックだが、そのポートフォリオを拡大した。経営統合の狙いなどについて、アスペンテックのAntonio
Pietri 社長 兼 CEOに語ってもらった。 |
Antonio Pietri 氏
(アントニオ・ピエトリ)
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―― 新生アスペンテックとエマソンとの事業統合について。 |
Pietri : |
新生アスペンテックへのエマソンの資本参加に伴う一連の取引は5月16日に終了しました。この取引では、エマソンがアスペンテックの株式55%を保有することで決着しました。エマソンは60億ドル相当の現金と二つの事業をアスペンテックにもたらします。
株式のマジョリティはエマソンが所有しますが、アスペンテックは独立的な運営を継続し、NASDAQにおいても個別銘柄として上場します。 |
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アスペンテックの創業からの40年間の歩み |
Pietri : |
ここ数年間の産業界の競争状況を見ると、プラットフォームが重視されるように変わってきました。そこで、大きなバランスシートを持ったパートナーを探していました。エマソンは、売上高180億ドル相当の大企業で、バランスシートも非常に大きい。大規模なバランスシートを持つ企業をパートナーとすることで、当社も積極的に買収を行えるようになりました。新規事業への参画も可能ですし、変革を伴う買収にも対応できます。利益と持続可能性を両立する価値の提案が可能になりました。 |
Pietri : |
OSIとSSEの二つのソフトウェアに関する事業です。
OSIは、「オープン・システム・インターナショナル社」のことで、ここで提供されるソリューションは送配電を最適化することです。再生可能エネルギーがグリッドに入り込むことで、送配電が複雑化しましたが、こうした状況に対応可能なソリューションを提供できます。
もう一つは、地質シミュレーションソフトウェアです。今回の取引に伴い、地質シミュレーションソフトウェア(Geological Simulation
Software)は今後、SSE(Subsurface Science & Engineering)として提供しますが、これまでに、石油・ガスの生産のエンジニアリングで数多くの実績があります。このソリューションを今後は、CCUS(CO2回収・貯蔵)、地熱開発など、サステナブル領域に展開します。
従来のシミュレーターなどのソリューションに加え、エマソンから二つの事業がもたらされることで、新しいソリューションの提供が可能になります。同時に新生アスペンテックは、世界中に3,000社以上の顧客と持ち、41カ国、62拠点に3,700人以上のスタッフを抱えることになります。
さらに顧客が、われわれのソリューションにより創造できる利益は年間590億ドル相当、同時に年間1,600万トンのCO2排出量の削減が可能になると試算しています。まさしく利益とサステナブルを両立できるようになります。 |
―― 事業統合は、アスペンテックがエマソンに提案。 |
Pietri : |
2021年にアスペンテックが戦略的なレビューを行い、取引銀行などとも検討しました。その中で、エマソンが浮かび上がり、エマソンのトップと交渉し、事業統合が実現しました。
エマソンはソフトウェアも保有していますが、DCS(分散型制御システム)のベンダーです。現場で使われているバルブ、トランスミッターからデータを集められるという強みがあります。そうして集められるデータをアスペンテックのヒストリアンに格納することで、様々なことが実現できます。
将来的には、エマソンのハードにアスペンテックのソリューションをOEMで取り込むことができます。そうすれば、顧客はエマソンの製品を購入することで、アスペンテックの技術を活用できます。さらにサステナブルを目的に、アスペンテックとエマソンが共同で技術開発することも可能です。
このうえ、アスペンテックとエマソンの契約には、アスペンテックがまだ参入していない市場で、エマソンがアスペンテックの製品を再販できる内容も盛り込まれています。お互いにビジネスチャンスを拡大できます。 |
―― アスペンテックのユーザーには、経営統合はどのように
受け止められているか。 |
Pietri : |
これまで、お客様には好意的に受け止められています。またデータについても、アスペンテックは、常にお客様のプロセスやDCSなどのデータに依存する事業を展開していますから、レガシーデータについてもお客様が継続的にメリットを享受できるようにします。 |
Pietri : |
アセットのライフサイクルの最適化を図るという点では、引き続き、事業を継続します。
しかし新生アスペンテックは、これまでのパフォーマンスエンジニアリングとしての、製造・サプライチェーン・アセットマネジメント管理にとどまらず、今後はデジタルグリッド管理にも事業を拡大します。
この事業を行うには、新製品として市場に投入するインダストリアルAIがあります。これは、新世代のソリューションで、データ、専門知識、エンジニアリングを融合した最先端の製品になります。それを実現するために、長年の経験、マシンラーニング、AIによる新たなモデリング手法を組み合わせます。 |
Pietri : |
世界の人口は今後30年間で急増します。総エネルギー需要は2050年までに50%増加します。エネルギー需要の75%は発電によりもたらされるが、このうち、90%を再生可能エネルギーで賄う必要があります。そのためには、デジタル化が必要で、安全性、信頼性、効率性を高めなければなりません。
顧客は、リソースの配分とサステナビリティをいかに担保するかという問題に直面しています。人口増加と生活水準の向上に伴う資源需要の増加に対応し、持続可能性を図る。対応するには、オペレーショナルエクセレンスが必要ですし、そのためには、技術・デジタル化が不可欠です。これにより、安全性・信頼性・効率性を高めます。 |
―― サステナビリティを実現するには、何が必要になるか。 |
Pietri : |
サステナビリティには、3つの柱があります。
一つは、資源効率化です。効率化は非常に重要で、CO2排出を大きく削減できる技術は存在していますが、大規模には採用されていません。
もう一つは、エネルギー消費の抑制です。エネルギーの消費抑制でCO2排出量を低減します。
さらに3つ目は、脱炭素化です。脱炭素化は、CO2回収・隔離、水素・バイオなどの代替燃料の活用を意味します。
サステナビリティは気候変動だけの話で実現されるものではありません。プラスチックなどの、ごみの排出削減が必要で、アスペンテックは、そこにも注力しており、この分野にも投資しています。 |
Pietri : |
サステナビリティの実現には、30~40年という長期間を要します。実現するには、技術に加え、組織の整備も必要です。サステナビリティを目指すにあたり、強力な組織モデルや組織内の能力の維持も求められます。
組織の強化は、サステナビリティとはトレードオフの関係になるかもしれません。アスペンテックは、これらの関係がトレードオフの関係にならなうように、お客様を支援します。 |
Antonio Pietri(アントニオ・ピエトリ)氏
1996年、セットポイント社の買収に伴い、アスペンテックに入社。セットポイント社では、営業、サービス部門、コンサルティングなど、様々な職歴を経験し、ヨーロッパの製油所やプロセス製造プラントを対象としたアスペンテックの統合ソリューションの導入の管理に従事。
2002年に、ビジネスコンサルティング・バイスプレジデントとして、シンガポールに異動、その後、アジア太平洋地区マネジングダイレクターとして勤務。その後、アスペンテック上席バイスプレジデントとして、ワールドワイドオペレーション、プロフェッショナルサービスおよびカスタマーサポート&トレーニング部門を統括。
現在、代表取締役社長兼CEO。University of Tulsaで化学工学の学位を取得後、University of HoustonでMBAを取得。 |
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