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 2022.7.25
プラントライフサイクルサポートをより高度化するAVEVA
「PI System」で履歴データ管理、OTに不可欠なソリューションを提供

プラントの設計に関するソリューションを扱っていたソフトウェアベンダーであるAVEVAが、その領域をライフサイクルに拡大した。そして同時期に、制御システムベンダーであるシュナイダーエレクトリックはソフトウェアへの取組に傾斜した。異なる製品を扱う両社だが、同じソフトウェアを扱うことで、ポートフォリオを拡大している。ライフサイクルソリューションが両社にとっての成長の原動力になる。

どんなプラントでも、建設期間は数年。LNGプラントのように超大型のプラントであれば5~6年を要するだろう。これに対し、プラントの稼働期間は20~30年と長期間に渡る。

かつて、プラントを設計するCADを扱ってきたベンダーは、プラントの設計効率を向上するためのソリューションに取り組んできた。

そうしたCADベンダーは近年、プラント建設のみならず、ライフサイクルをカバーするソリューションをラインナップし始めた。プラントの建設から、稼働後のO&M(オペレーション&メンテナンス)まで、ライフサイクルに渡るソリューションの提供を始めているが、その狙いは数十年間に渡るプラントの操業期間に伴うビジネスチャンスにある。


シュナイダーとの統合で「Unified Engineering」を展開

プラント設計用のCADを扱ってきたベンダーの中でも、AVEVAは、プラントライフサイクルソリューションへの展開を最も積極的に進めている。

1967年に英国のケンブリッジにCADCentreとして創業、プラント設計用の3次元CAD「PDMS」は、米インターグラフ(現ヘキサゴンPPM)と市場を二分するほど普及した。そして2001年にAVEVAに社名を変更した。

その後2004年には造船設計用CADを扱うTribonを買収し、造船設計用CADは、AVEVA Marineとして発売された。

AVEVAが「設計」からライフサイクルへとソリューションを大きく転換するきっかけとなったのは、2017年9月のシュナイダーエレクトリックの産業用ソフトウェア部門との統合だった。

同部門には、プロセスシミュレーターをはじめ、MES(製造実行システム)、EAM(企業試算管理)システムがラインナップされており、統合に伴い、「Unified Engineering」を前面に打ち出した事業展開を始めた。

両社のソリューションを統合することで、概念設計、基本設計、詳細設計などを一つの環境に統合し、シングルデータハブからすべてのシミュレーションとエンジニアリングを処理する体制が整った。これにより、複数の部門にまたがるチームがリアルタイムで共同作業を行い、エンジニアリング効率を向上、リスクの最小化と資本装置収益率の最大化が可能になった。

AVEVAプラントライフサイクルソリューション

3次元CADとプロセスシミュレーターの機能が統合されることで、プラント設計を一元化したのが「UnifiedEngineering」の成果の一つだが、これによりエンジニアリングの生産性が向上した。

シュナイダーとの経営統合は、シュナイダーからの意向に応じる形で実現したが、制御システムなど、産業用のハードウェアからソフトウェアへと事業領域を拡大する意向を持ったシュナイダーは、AVEVAとの経営統合により、新領域に一歩踏み出したことになる。


AVEVAの大きな転換点となったOSIsoftの買収

3次元CADからプロセスシミュレーターへとソリューションの領域を拡大したAVEVAだが、2020年8月のOSIsoft買収は、プラントのライフサイクルへと事業ポートフォリオを拡大するもので、AVEVAにとっても、創業以来の大きな転換となった。

OSIsoftは、設備の稼働にとって、ソフトウェアがより重要な役割を担うという認識を持たせてくれるインパクトのある買収だった。

特に、OSIsoftの「PI System」を使用すれば、ユーザーは、オペレーションデータを収集、標準化、保存し、アプリケーションや分析、AIプラットフォームやML(マシン・ラーニング)プラットフォームにリアルタイムでストリームできる。

また「PI System」は、オペレーションデータの単一記録システムとして機能し、企業全体で大規模なクラウド対応スケールとデータ共有を行える設計になっており、洞察に基づいた業務上の意思決定を下せるように、サポートできる。

「PI System」のイメージ
2020年8月の、AVEVAの買収に関するニュースリリースによれば、「これまでに『PI System』は、電力・公益事業会社の1,000社以上、フォーチュン誌が選出した石油・ガス企業トップ40社のうち38社、金属・鉱業企業トップ10社のすべて、製薬企業トップ10のうち9社、また世界最大手の化学・石油化学企業の50社中37社が納入、活用している」とある。

これら一連の実績を見ても、「PISystem」が多くの支持を集めている事が分かる。


OTに欠かせない履歴データ管理

「PI System」の「PI」とは、「プラント・インフォメーション」を意味する。「PI System」は、データフォーマットにとらわれることなく、様々なリアルタイムデータを収集・管理できる。

レガシー機器、DCS(分散型制御システム)、ERPなど、何百種類ものアセットのデータを保存できる。膨大なデータを扱うが、データの収集時と蓄積時の2回に渡り、データの圧縮が行われるため、格納の容量がコンパクトに維持される。

しかもユーザーは格納された、データに迅速にアクセスできる。「PI System」は時系列データ、アラームデータ、イベントデータを扱うが、独自の「ブロックテクノロジー」で、標準的なデータベースシステムの数百倍の速さでプラントデータを取得可能なうえ、使用保存容量はごくわずかで済む。

必要なデータを好きな時に、欲しいだけ取得できる。その履歴データが、30年前のものでも、3日前のものでも、リアルタイムデータであっても、データを確実に取得できる。

またフロントエンドの高速データ収集と、標準Microsoft SQL Serverリレーショナルデータベースを時系列に対応する拡張機能を組み合わせている。同時にAVEVAの「スイングドアデータ保存アルゴリズム」により、データ保存アルゴリズムで、データ完全性を確保しつつ、デーや保存要件を大幅に軽減できる。

さらに、業界を問わず、厳しい要件で求められるデータ完全性を確保できる。停滞域幅のデータ通信、受信情報の遅延、システムクロックが一致しないシステムからのデータ受信にも対応できるうえに、高解像度データを毎回正確に取得可能だ。

「PI System」は、OT(オペレーショナル・テクノロジー)において、不可欠なソリューションだ。

プラントに使用される機器のセンサーなどから送られてくるデータを、フォーマットに関係なく蓄積でき、そのデータには、好きな時に短時間でアクセスできる。

このソリューションにより、将来的にAI化を進めたり、プラントの自律運転へと発展させることもできる。

仮に、プラントがトラブルに見舞われたとしても、履歴データにより、トラブルから脱出することができれば、安定創業につながるが、それがAIにより自動で実現できるのであれば、自律運転も可能になる。


プラントの設計からライフサイクルへとポートフォリオを拡大したアヴィバだが、操業に必要なソフトウェアは、制御システムや計器メーカーであるシュナイダーの成長にとっても重要な役割を果たすはずだ。

そして、将来訪れるプラントの自律型運転においても。AVEVAのソリューションが果たす役割は大きい。




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