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 2022.1.24
建築・プラント設備・建築設備のBIMデータを一元管理する花田設計事務所
新設・改造の設計から維持管理まで、プラントのライフサイクルをカバー

 建屋内部で稼働するプラントを設計する場合、必要となるのが、建築設備とプラント設備の空間調整だ。これを効率よく確実に設計するには、建築側とプラント側の設計を一元管理する必要がある。それを最も効率よく実現するには、同じ拡張子のデータを活用することが最善の方法だ。これをオートデスク社の製品により実現しているのが、兵庫県芦屋市の花田設計事務所だ。プラント設備と建築設備の空間調整からBIMでの維持管理を効率よく一元管理し、BIMデータの活用を実現している。その取組は注目に値する。

プラントには、屋外で稼働する大型プラントから、建屋内部で稼働するプラントまで、様々な種類がある。

様々なプラントの中で、建屋の内部にプラントを設置する場合、効率よく3次元CADで設計するには、建築と配管の干渉や、建屋内部の機械の配置を設計段階で正確に決める必要がある。これらを実現するには、建築・配管・機械の3次元CADデータが一元的に扱える必要があるが、花田設計事務所はプラント設備設計および建築設備設計をしているため、これを実現している。これにより、プラントのライフサイクルに渡るデータ管理を効率よく行っている。


建築設備とプラント設備の効率的な空間調整を実現

 
  花田設計事務所 花田 義勝 社長
花田設計事務所は、オートデスク社製品で一元的に対応することで、フォーマット間で属性データを共有しながら、様々なプラントの新設設計から改造・維持管理まで、カバーしている。

設計においては、オートデスク社の建築設計CAD「Revit」、プラント設計CAD「Plant3D」、機械設計CAD「Inventor」を活用し、それぞれのCADをレビューソフトウェアである「Navisworks」と常時リンクさせながら使用している。

また、既設の改造時に必要な点群データには、3Dスキャンソフトウェアである「ReCap」を活用。設計から維持管理まで、一貫してオートデスク社の製品でカバーしている。

例えば、屋内型プラントの設計であれば、建築をRevitにより3Dで立ち上げ、機械設計についてはInventor、そして配管設計ではPlant 3Dを活用する。この場合、建築設備とプラント設備の空間調整を行う必要があるが、花田設計事務所では、オートデスク社製品で建築・プラント・機械の設計を行っており、データはすべて「dwg」の拡張子で保有しているため、一元的な設計と管理が可能だ。もちろん、建築と設備の空間調整もスムーズに行うことができる。


オートデスク製品で統一している理由について、花田義勝社長は「『様々なソフトで設計したデータPlant 3DやRevitに統合して欲しい』 という要望が多くありますが、他社のフォーマットで設備のCADデータを持っていくと、Revitに変換した時に、属性が消えてしまう可能性がある」と言う。属性が消えれば、その再構築が必要で、手間がかかり生産性が落ちる。

また、プラント機械・配管設計会社と建築設備設計会社が別会社の時、BIMで統合すると、絶対に干渉が起こる。このため、「それをどこのタイミングで修正するか」という問題が発生する。しかし建築とプラントでは設計のスピードが違うため、タイミングを見つけ出すことは意外に難しい。結果的に手間がかかり、生産性が落ちる。

異なる種類のCADデータでも、フォーマットを統一することで、データを一元的に扱い、効率よく3D設計データを作成できる。

花田設計事務所では、建築とプラントの3D設計データを統合して、それをNavisworksで確認しているが、これら一連の作業がスムーズに行われている。

一昔前の現場では、建築設備とプラント設備で場所の取り合いにより揉めることも少なくなかった。実際「ここに配管を通すつもりだった」という場所を、建築設備側が遮っていることもあった。それでもかつての現場の職人は、豊富な経験を持ち、現場での対処が可能だった。しかし最近の現場にはこうした経験を持つ職人がどんどん減少している。それだけに設計段階で、干渉などの問題を取り除く必要がある。

また、オートデスク社の製品を活用することで、不慣れな職人も、的確な現場作業ができる。

Navisworksはレビューソフトだが、タブレット上で素材などの属性データを確認できる。このため現場でタブレットをクリックするだけで、部材を確認しながら作業を行える。また無償ソフトの「Navisworks Freedom」も用意されており、多くのパソコンやタブレットにインストールして、データを現場に持ち込むことで、作業効率も改善できる。

花田設計事務所では、Navisworksの活用については、1日間の講習を行っているが、「一連の取組により、3Dで施工ができるようになった」と花田社長は、取組に手応えを感じている。

花田設計事務所の強みは、「建築が分かる」うえに、「建築設備が設計できる」「配管設計ができる」「機械・製缶設計ができる」だが、計画段階から丸投げされても、配置計画から対応できる。

こうした対応が可能なのも、オートデスク社製品を効率よく活用することで一元的に対応しているからだ。


設備の改造には3Dスキャナーを活用

プラントの改造となると、対象となるのは、主に30年以上前に建設されたプラントだ。CADが普及する以前に手描き図面で設計されており、デジタルデータは無い。

そこでプラントを3Dスキャナーでスキャニングして点群データを取得。その点群データをオートデスク社のReCapを通じでデータをNavisworksに取り込んでいる。

花田設計事務所では、FARO FocusS 150を1台、Leica BLK360を2台活用しているが、点群を取得すると、点群処理ソフト「InfiPoints(エリジオン社製)」で処理し、ReCapデータとしてNavisworksに取込み、点群と3Dモデルを合成している。以前、点群データは容量が重く、PCに取り込むとパフォーマンスが著しく下がるようなことがあったが、Navisworksの拡張子である「nwf」状態で、常に各3Dソフトをリンクさせながら3D設計することで、PCに負担をかけることなく作業できる。

 点群設計ワークフロー

改造から設計については、3Dスキャナーを活用しているが、現場の現況確認と維持管理など、設計を伴わない計測には、3Dリアリティーキャプチャーソリューション「Matterport」を活用している。Matterportのデータは、ウェブブラウザがあれば、スマートフォンでも確認でき、その操作はグーグルのストリートビューと同じだ。

そのうえ、出力は弱いもののレーザーによる測量も行っているため、精度は低いが、ある程度の寸法を計測できる。この機能を活用して、ウェブ会議で画面を共有しながら、改造の打合せも可能だ。現況を確認するため、3Dスキャナーとは異なり、「撮り忘れ」「測り忘れ」が起こらない。効率のよい現況確認が可能だ。

また、オートデスク社のクラウドベースのドキュメント管理ソリューション「Autodesk Docs」を活用すれば、URLで取得できるため、それを埋め込んでリンク付けできる。URLデータがあれば、何でも紐づけできるため、設備や整備の資料についても容易にデータ管理が可能だ。

3DCADのみならず、オートデスク製品を適材適所に活用することで、設計から維持管理まで、ライフサイクルに渡り、効率よく対応できる。


3D計測専門の子会社を設立

プラント設備や建設設備の各設計に対応する花田設計事務所だが、現場での3DスキャンやMatterport撮影のニーズが増え、プラント以外の一般施設のニーズにも対応するため、2021年2月、子会社D×R(デイ―・バイ・アール)を設立した。従来、花田設計の社員が3Dスキャンに対応していたが、仕事量の増加に伴い、社員だけでは十分に対応できなくなった。このため、3次元スキャニング専門の測量会社を設立した。社名のD×Rには、「デジタルとリアルを掛け合わせて、未知数の物を作り出す」(花田社長)という意味が込められている。

「今後はデジタルがもっと加速しデジタルツインな社会になる。VR、AR、MR(HoloLens2を活用)の技術も持つ弊社はこの技術も設計に応用していますが、もっとこの分野を事業展開していきたいです」と、力を込める。


【問合せ先】
 有限会社花田設計事務所
 〒659-0067
 兵庫県芦屋市茶屋之町2-21
 メイピース芦屋901号
 TEL:0797-80-7745
 https://hanada-sekkei.co.jp/


【取材協力】
 オートデスク株式会社
 〒104-6024
 東京都中央区晴海1-8-10
 晴海アイランドトリトンスクエア オフィスタワーX 24F
 Email: mfg.inside@autodesk.com

  https://www.autodesk.co.jp/




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