2021.2.24
60秒で1,000本の高速自動ルーティングが可能
ベテラン配管エンジニアのノウハウをデジタル化 |
昨年8月、千代田化工建設とスタートアップのARENTが折半出資により設立したPlantStreamは、プラントの空間設計に特化した自動設計システムを世界に向けて販売している。
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PlantStreamの主な機能 |
プラント設計は、上流のプラント設計、機器、電気、制御設計の設備設計、そして空間設計の2種類の設計にに分けられる。設計の手順から考えた場合、上流のプラント設計が終了してから、設備設計や空間設計に移行できるのが理想だが、実際には、プロセス設計の完了を待たずに、空間設計に着手する。この場合、上流設計で修正が発生すると、下流の設計変更管理に多大な労力と時間がかかり、生産性を悪化させる要因となる。
特に、空間設計のうち、配管設計では、上流の設計情報、プラントの運転・保守のしやすさや、環境負荷に加えて、施工の生産性など、プラント毎に異なる制約に対応するため、そこにはベテランのエンジニアのノウハウが必要なのが現実だ。
しかしベテランエンジニアも徐々に一線から退く時期を迎えている。そこで、ベテランのノウハウをいかにITに置き換えるかが課題となっていた。
PlantStreamは、ベテランのノウハウのデジタル化を実現。これにより、プロットプランから配管詳細設計まで、空間設計をシームレスに一元化した。
上流設計と空間設計のデータ連携により、瞬時にプラント全体の配管やケーブルを三次元モデル化する革新的なシステムを実現。これにより、従来二次元で行われていた配置計画の検討を三次元で行い、定量的な相対比較が可能になった。この結果、基本設計業務においては、従来は困難であった複数の設備配置計画の検討を短期間で行うことができ、より競争力のある配置計画の提案や最適配置が可能になった。
これらの機能により、プロットプランの検討が格段に効率よくできるようになった。実際、各ユニットやパイプラックなどの要素をドラッグ&ドロップで自在に配置することができる。3D表示であるため、直感的に捉えやすく、風向きを考慮した細かな配置操作も容易にできる。
しかも60秒で1,000本という高速で、配管を自動ルーティングできる。この自動ルーティングだが、パイプラックの並び順や段数割、流体・つながり先に応じた並びなど、エンジニアの現場ニーズを汲んだ、設計が可能だ。FEED/EPC時点で要求される高品位な3DモデルをFS/プレFEEDの早い段階で確認でき、精度の高い積算を可能にする。さらにその設計品質の高さにより、FS/プレFEEDのデータを後の工程へとシームレスに引き継ぐことができる。同時にパイプラック上の配管の最適な並びが上抜きから下抜きの選択まで、配管設計の基本を隈なく満たし、ルーティングの質の高さも実現している。
さらに、システムは複雑な機器周りの配管にも対応できる。
機器周りの配管は、限られたスペース内で施工性、操作性、保守性、安全性など、多くの要求事項に対応する必要がある。そこで予め、機器とその周辺配管レイアウトの雛形を搭載。要求に沿ってパラメータを調整するだけで、直感的に3Dモデルの編集が可能だ。複雑な機器周りの配管設計を可能にしているのが内蔵されたブロックパターンだが、これにより容易に変更にも対応できる。
そして何よりも、ワークフローの一元化により、これまで仕様変更などから生じていた他設計結果との調整作業のほとんどが設計現場から一掃される。その結果、基本設計業務における空間設計の工数を約80%も削減できる。
これら設計情報は、日本インターグラフの「Smart3D」やアヴィバの「PDMS」に出力され、詳細設計へと展開される。
これら配管設計の機能は、「技術的に難しい」と言われているケーブルの設計にも対応できる。
昨年8月の会社設立以後、PlantStreamは、エンジニアリング企業やプラントメーカーに売り込んでいるが、今後は、ハイエンドのCADソフトと言われる「Smart3D」や「PDMS」のみならず、普及型の「AutoCAD
Plant3D」などの「.dwg」へのエクスポートへの対応にも取り組む。
ハイエンドのユーザだけを対象にしていては、市場は広がらない。幅広いユーザへの開拓も視野に入れながら開発を続ける。
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