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 2020.11.5
ベントレー・システムズ、「YII2020」をオンラインで開催
9月のナスダック上場後初のイベント、デジタルツインをアピール

 ベントレー・システムズが毎年秋に開催しているイベント「The Year in Infrastructure 2020(YII2020)」が今年はオンラインで開催された。メインイベントは10月20日前後に集中したが、カテゴリー毎にベントレー製品の活用を競うコンペティションのファイナリストのプレゼンテーションは10月5日から16日までリアルタイムでオンラインで視聴でき、その後も11月中旬まで関連プログラムが予定されている。新型コロナウイルスの感染拡大という想定外の出来事でオンラインの開催となったが、デジタルツインを前面に押し出しながら、進化を続けるベントレーの前向きな姿勢を随所に見せるイベントとなった。

 エンジニアリングITソリューションベンダーである、ベントレー・システムズが毎年秋、アムステルダム、ロンドン、シンガポールで開催してきた「The Year in Infrastructure 2020(YII2020)」。

 今年は当初、カナダのバンクーバーでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、初めてのオンラインでの開催となった。


振り返られた上場までの36年間

 毎年開催されているイベントだが、ベントレーは今年9月23日にナスダック市場に上場、上場後初のイベントとなった。

 ベントレーは1984年に、CADのプラットフォーム「MicroStation」の開発・販売を行う会社としてペンシルベニア州エクストンで創業した。

 基調講演でグレッグ・ベントレーCEOは「創業以来36年間、デジタル化に注力して、ここに辿り着いた」と、今回の上場についての感慨を語った。

 上場について説明するグレッグ・ベントレーCEO

 36年間、ベントレーはデジタル技術を駆使しながら、確実に成長してきたが、その成長過程にはいくつかの節目がある。

 2000年には、プロジェクトのライフサイクル全体を通じてエンジニアリングと建設のコンテンツを効果的に管理できる「ProjectWise」を市場に投入した。

 設計からプロジェクトのライフサイクルへとポートフォリオを拡大したベントレーだが、グレッグは「2009年にインフラを実現するためのポートフォリオが一通り完成した」と言う。

 ベントレーの「インフラストラクチャー」の意味には、道路や橋梁のような社会インフラから、交通システムに加え、プラントなどの生産設備が含まれるが、これらを設計・施工するためのソリューションが出揃った。

 この2009年は、ベントレーの転換期でもあった。グレッグは「インフラ資産の運用と保守のための付加価値を提供するための機会を逸していることに気が付いた」と振り返る。そこで、R&Dと買収により、プラットフォームとプラとフォーム外のソリューションの獲得に乗り出した。

 この展開の中で2015年、リアリティモデリングソフトの「Acute3D」を買収し、「ContextCapture」として売り出した。グレッグはリアリティモデリングを「非常に重要なアプリケーション」と強調するが、空間情報をハンドリングできるソリューションを獲得したことは大きかった。

 その後も、2018年にインフラ資産のライフサイクル全体に渡る可視化、変更の追跡・解析を可能にし、資産パフォーマンスを最適化するデジタルツインクラウドサービスへとポートフォリオを拡大した。

 そして、昨年のYII2019では、4Dデジタルツインを発表。これにより、インフラの各専門分野にまたがり、共同で作業する、反復可能な自動デジタルワークフローを実現した。

 インフラストラクチャーのライフサイクルを包括的に扱うことができるベントレーのソリューションだが、この「包括性こそ、差別化のうえで非常に重要」とグレッグは力を込める。

 こうした36年間の取組を経て、ベントレーはグレッグの言う通り、「インフラストラクチャーソフトウェアの世界的なリーダーになった」。


今後の狙いはアジア市場

 36年間、絶え間なく進化してきたベントレーだが、これからも狙うはインフラ投資だ。

 ベントレーでは「2016年から2040年までの25年間に、全世界で総額79兆ドルのインフラ投資がある」と言う。年平均、3.2兆ドルの投資があるわけだが、そのうち半分はアジア地域で投資される。しかも中国では全世界の投資の30%が集中すると見られており、ベントレーはこの市場にも注力する。

 9月に上場を果たしたベントレーだが、パンデミックに見舞われた今年、4~5月頃に一時的に売上高が前年に比べ4~5%下がったが、その後は回復し、前年並みの業績を確保した。

 また世界各地にいる約4,000名の社員は、すでに在宅で仕事をできる環境にあり、パンデミックによる業務上の影響は軽微だった。

 グレッグは上場に伴い、投資家からベントレーについての説明を求められると「経済と環境の改善を同時に提案する、すべての可能性を備えたインフラストラクチャー向けのエンジニアリングソフトウェアを提供している」と応えている。

 環境を無視した企業の事業運営が困難になった現在、経済と環境の改善を同時に提案できるソリューションを持つことは、今後も大きな意味を持つ。

 上場は、将来に向けた成長を投資家に対して約束することでもある。ベントレーはこれからもインフラストラクチャーを扱うソフトウェアベンダーとして成長を持続させるはずだ。


有望なサードパーティを支援する「Bentley Acceleration Fund」

 ベントレーは、サードパーティがデジタルツインに投資するのを支援するため、「Bentley Acceleration Fund」による支援にも乗り出している。

 Bentley Acceleration Fundについて説明するSantana Das氏

 この取組により、①環境・テレコムなどの新しいセクターの拡大、②中国で急成長している変電所分野、③特定の産業に向けたソリューションに取り組んでいる企業の情報分野のとりまとめ、④アプリケーションのERPとの連携、などを対象に支援している。

 投資した企業は、アイデアを生み出す「Development Stage」から、アイデアが取り入れられて目に見える最小単位の製品が創出される「Growth Stage」、また多くのクライアントを生み出し、十分利益が創出され、ベントレーもしくは他の外部機関に利益が還元できる段階である「Profit Stage」や「Accretive Stage」へと4段階のステージで発展する。

 すでに、複数社の企業に投資が始められているが、その中に、ノルウェーのインフラストラクチャーのソフトウェア開発企業で深海のエネルギー開発向けソリューションを20年以上に渡って提供している「FutureOn」がある。同社はベントレーと戦略的パートナーシップ契約を締結して、石油・ガス産業のデジタル化に取り組む。

 具体的には、「FutureOn 」のフィールドデザインアプリケーションと、その中心のコラボレーションプラットフォームである「FieldTwin」をベントレーの「iTwinプラットフォーム」と組み合わせて、顧客に次世代のデジタルを提供を始めている。そのデジタルとは、次の10年間のサブシーのアップストリーム・プロジェクト開発手法を推進できるツインソリューションだ。「FutureOn」のプラットフォームとベントレーのプラットフォームはいずれも、複雑な統合とカスタマイズを容易にするために、オープンWeb標準を使用しており、すでに、統合された製品は深海の探査および生産のワークフローに実装されている。

 また今回のYII2020では、マイクロソフト社のCEOであるSatya Nadella氏が登壇しているが、マイクロソフト社との関係もより強化されている。

 イベントの期間中には、従来の両社の提携関係を「スマートシティ都市計画とそのインフラストラクチャーの進歩に焦点を当てた戦略的提携に拡大する」と発表した。このアライアンスにより、マイクロソフト社の「Azure IoT DigitalTwins」と「AzureMaps」をベントレーの「iTwinsプラットフォーム」を組合せて、エンジニア、アーキテクト、コンストラクター、都市計画担当者が包括的な都市規模のデジタルツイン内で作業できるようにすることで、意思決定の向上、運用効率の最適化、削減を実現する。

 またイベントの最後には、「YII2020」のアワードの受賞プロジェクトが発表された。

 このアワードはベントレー製品のユーザーの使用方法によるコンペティションで、今年は60を超える国の330以上のユーザー企業・団体から400件を超える応募があった。この応募者の中から57組がファイナリストとして選定され、「YII2020」期間中にプレゼンテーションを行い、そこでコンペティションが行われた。その結果、19件の受賞プロジェクトと14件のレコグニションアワードが選定された。



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