2020.11.5
アスペンテック、「aspenONE V12」を発売
AIで安全性・環境影響・信頼性および収益性を改善 |
アスペンテックはこのほど、「aspenONE」の最新バージョンである「aspenONE V12」を発売した。「Aspen Hybrid Models」を組込み、AI機能により、プロセス産業の環境影響・信頼性・および収益性を改善し、目標達成のあり方を変革した。AIはプラント操業の自動化の切り札のように思われるかもしれないが、アスペンでは「あくまでも意思決定をサポートするのが役割」と位置づける。プラントのライフサイクルをカバーするシステムで、プラントを最適化できるが、最後に意思決定するのは人だ。 |
アスペンテックはこのほど、プロセス産業向けソフト「aspenONE V12ソフトウェア」を発売した。
アスペンテックの旗艦ソフトである「aspenONE」の最新バージョンだが、ポートフォリオ全体に渡って、人工知能(AI)が組み込まれ、クラウドを活用して安全性、持続可能性、および利益率の改善につながる企業規模のアナリティックスと洞察を提供する。アスペンテックの産業用AIソリューションは、価値の最大化を実現し、自己最適化プラントへの重要な一歩となる。
「aspenONE V12」ソリューションは、プロセス産業やその他の資本集約型の業界に特化した、業界初の産業用AIハイブリッドモデル機能を搭載している。
特に、「Aspen Hybrid Models」は、企業全体の資産からデータを収集し、AI、エンジニアリング、さらにはアスペンテックの専門知識を適用して、より正確で包括的なモデルを企業規模のスピードとスケールで実現する。
この「Aspen Hybrid Models」について、インドの大手石油・石油化学メーカーである、リライアンス・インダストリーズ社のテクノロジー・センター・オブ・エクセレンス担当のバイスプレジデントであるカルナ・ポッター氏は「『Aspen
Hybrid Models』は化学工学分野における重要な進歩だ。ハイブリッドプロセスモデルは、アスペンテックのプロセスモデルと機械学習の集約に向けた大きな一歩であり、プロセスエンジニアリングやプラントの改善の考え方を根本から変える」と言う。
アスペンテックが40年に渡って培ってきたプロセス産業やその他の資本集約型業界向けソリューション構築に固有の課題に関する知識に基づく「aspenONE V12」は、データサイエンスの専門知識が不要で、重要プロセスへのAIの応用を可能にし、プロセスの知識や経験が浅い新規ユーザーをより的確にサポートできる。
プロセス産業は、増加する人口のニーズや持続可能性への期待に応えるために、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を利用して、オペレーショナル・エクセレンスやイノベーションを推進している。こうした状況に「aspenONEV12」に搭載されたソリューションは、モデリング精度の向上、洞察の深化、コストの削減により、業界固有の課題に対処し、ビジネスニーズへの進化への対応や新たなデジタル世代の労働力の活用を実現する。
「aspenONE V12」の発売にあたり、アスペンテックのアントニオ・ピエトリ社長兼CEOは、「プロセス産業やその他の資本集約産業は今、これまでにない激しい需給変動に晒されており、あらゆる市況に俊敏に対応するには、資産最適化に対する新たなアプローチが必要だ。さらに、効率化と収益性向上に対する期待や持続可能性目標の達成を求める圧力の高まりにも直面している。この新世代の産業用AIソリューションはプロセス産業のあり方を変えるものだ。自己最適化プラントは未来のオペレーショナル・エクセレンスの姿であり、アスペンテックは、その実現に向けた顧客の取組を加速できる革新的なソリューションの提供に引き続き、力を入れる」とコメントした。
また米国の調査会社であるARCアドバイザリーグループのシニアアナリストであるピーター・レイノルズ氏は「AIは多くの業界の作業プロセスを強化する可能性を秘めているが、ほとんどの企業はAI自体の導入に向けた体制整備が十分ではない。AIが組み込まれたアスペンテックの特定業界向けアプリケーションは、DXの加速をサポートするが、資産オーナーが複雑なプラットフォームやデータサイエンティストに投資する必要がある他のテクノロジー戦略とは異なり、AIが組み込まれているため、収益性の改善効果が直ちに現れる」とコメントした。
さらにイタリアの石油精製会社であるサラス社のプロセスおよびテクノロジー担当デジタルプラットフォームマネジャーであるフランチェスコ・ムラ氏は「『aspenONE
V12』はプランニングモデルの更新に役立つと考えている」と語るが、さらに「『AspenHybrid Models』は、Aspen HYSYSの厳密な反応器モデルから情報を取得しながら、極めて効率的な非線形計画法によるプランニングが可能で、プランニングモデルの更新に新たなアプローチとして、非常に有望」と付け加え、ソフトウェアを高く評価している。
「aspenONE V12」は、プラント設計の3次元CADとも連携が可能だ。提携関係にあるヘキサゴンPPMの「SmartPlantシリーズ」や「PDS」などとは、スムーズにつながる。またCADデータの標準フォーマットである「ISO15926」の規格に準拠したソフトであれば互換性が確保できる。
「aspenONE V12」は、プラントの設計、操業、メンテナンスのライフサイクルすべてをカバーしているため、3次元CADの作成された設計データは、ライフサイクルに渡って、有効に活用できる。
ライフサイクルをカバーする「aspenONE V12」 |
この他にも、「aspenONE V12」には、新しい機能が満載だ。
特に、「A s p e n D M C 3 」「A s p e nMtell」の新機能により、経験の浅いユーザーでも、特定のモデルまたはエージェントの構築方法をガイドすることで、より精度の高いモデルの迅速な開発を自動化できる。
またAIも、ソフトウェアを強力にサポートしている。
「Aspen Deep-Learning IQ」は、より正確なモデルと予測の構築を可能にするし、「Aspen Verifyfor Planning」は、AIを活用して知識を収集し、計画と照合することで、ミスの発生を防止する。
「Aspen Multi-Case」は、数千種類のシミュレーションケースをオンプレミスまたはクラウドで容易に同時実行することで、より完全な解析を実現し、その結果を使用して運転上の複雑さをナビゲートし、より迅速かつ的確な意思決定を行うことを可能にする。
「Aspen Event Analytics」は、生産事象に対する洞察を素早く提供する。予期しない生産事象の迅速かつ容易な検証により、是正措置や意思決定を加速化する。また、事象をリアルタイムに監視・検出することで、迅速な早期介入を可能にする。
「Aspen Cloud Connect」は、高いパフォーマンスとセキュリティを備えた柔軟な接続により、エッジからクラウドにデータを転送する。
「Aspen Capital Cost EstimatorInsights(AACE)」は、「AspenEnterprise Insights」との統合により、ハイブリッドクラウド環境内での可視化と協調ワークフローを実現することで、ユーザーエクスペリエンスを合理化する。
AIを活用することで、完成度の高いソフトウェアに仕上がっているが、アスペンテックでは、「AIはあくまでも意思決定をサポートするもの。最終的に、人間が意思決定をする」と言う。
インテリジェンスを持っているため、操業データをその後のオペレーションの改善に活かすことができる。また予測が可能なため、計画外のプラントの停止を防ぐことも可能だ。同時にメンテナンスコストを下げることもできる。
ただ、現時点では、ソフトウェアが自らプラントを最適化するレベルには達していない。これを実現するのが、将来の課題と言えるだろう。
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