2019.12.5
属人的な運転管理をシステム化した「j5」
国内では日本インターグラフが提供、70サイトに納入 |
今年1月、ヘキサゴンABは、運転管理システムのj5インターナショナルを買収した。これまでヘキサゴングループでは、ヘキサゴンPPMがプラントのEPCに対応するソリューションを提供して多くのユーザを獲得してきたが、O&M(オペレーション&メンテナンス)のOには特に弱かった。そこを補う目的でj5インターナショナルの買収に踏み切った。その「j5」だが、申し送り帳に対応するなど、そのソリューションは運転現場におけるアナログ的な作業のシステム化だ。これが受け入れられ、日本はもとより、全世界で普及している。 |
日本国内で70サイト、1万6,000人のユーザを獲得 |
「j5」は、1989年に開発された、運転管理ソフトウェアだ。それまで、デジタル化が進んでいなかったプラントの運転管理にフォーカスしているのがその特徴だ。
運転部門から発生する大量の人間系のデータをデジタル化して、運転管理の業務プロセスを適正に回すソフトウェアとして開発された。全世界で多くのユーザを持つが、日本ではすでに、70サイト、1万6,000人のユーザを持つ。資源開発、石油精製、石油化学、化学などのプロセス産業を中心に普及している。
「j5」は今年1月、ヘキサゴンABに買収され、現在はヘキサゴンPPMファミリー製品となった。ヘキサゴンPPMは、「SmartPlantシリーズ」など、プラントのEPCについては、多くのソリューションを持ち、全世界にユーザを持つが、O&M(オペレーション&メンテナンス)の特にOの部分の弱点を補う目的で「j5」を買収した。プラントの新設プロジェクトは、いつまでも、多くの需要を持っているわけではない。時代とともに、プラントの稼働後のオペレーションやメンテナンスに対応できるソリューションに対応できないと、事業は先細る。そこでヘキサゴンABが手を打った。
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「j5」製品コンセプト |
「運転管理ソリューション」と言うが、その中には、「申し送り帳」など、デジタル化が困難と考えられてきた機能もある。従来、アナログとしてしか存在しえなかった機能をデジタル化した点も、受け入れられる要因の一つだ。
プラントの運転は、すでに、プラント建設を経験していない、若い世代が担う時代になった。ベテランは引退時期を迎え、ベテランが蓄積したノウハウがデジタル化されれば、ノウハウの伝承にもつながる。
「j5」は先進国の製造業が直面する、技能・ノウハウ伝承の問題を解決するうえでも、大きな意味を持つ。
「j5」は、製造業の運転現場に求められる多様な業務に包括的に対処できる「運転管理システム」だ。
共通のプラットフォーム上に、各種アプリケーションを構築する構造で、運転ログや申し送り帳といった運転管理領域の機能に加えて、モバイル、プロセス安全、コンプライアンスといった、新たな領域もカバーする30を超える運転管理とHSEアプリケーションを提供している。
アプリケーションには、「運転指示」「運転ログ」「運転報告」といったコア機能に加え、「掲示板」「運転ダッシュボード」「InduatraForm」「巡回点検」「ヒヤリハット」「SOP(StandardOperating
Procedure)」「作業許可」「変更管理」「設備台帳」「工事要求」「翌日工事予定」「ヒストリアン連携」がある。
運転管理のみならず、「設備台帳」や「作業許可」にも対応しており、運転とメンテナンスに対応できるソリューションが装備されている。
コア機能である「運転指示」では、運転現場への運転指示とその実態状況を管理するフレームワークを提供する。運転部門で日常的に実施される特定目的の作業や定期的な作業を効率的に計画し実行する。
もう一つのコア機能である「運転ログ」は、運転現場で発生する各種運転作業データを記録・分類し、時系列に管理するもの。分類には、部門、エリア、ロゴタイプ、重要度、ステータスなどがあり、記録するデータはカスタマイズできる。
さらにもう一つのコア機能である「運転報告」は、運転現場のシフト間の申し送り帳を対象に、確実で一貫した、効率的な申し送り帳を実現するためのフレームワークを提供する。運転員は申し送り事項の記録のほか、主要運転データ、巡回点検結果など申し送りに有効なデータを添付できる。
このほか、ヒヤリハットをシステム化した「ヒヤリハット」、パトロールをシステム化した「巡回点検」などのアプリケーションも用意されている。ヒヤリハットした経験がシステム化されることで、安全な運転に役立つ。
設備管理についても、「設備台帳」「工事要求」などのメンテナンスにアプリケーションにも対応している点が注目される。「設備台帳」は、機器の仕様を管理する作業記録や不具合リストなどのアプリケーションと連携し、「工事要求」は工事要求をシステム化したアプリケーションだ。
そして「ヒストリアン連携」は、運転レポート、イベント記録、巡回点検データを書き込む機能を提供している。ここに書き込まれることで、その後の運転において、トラブルに遭遇した時、その事象を容易に検索できる。「j5」には、運転から設備管理までのアプリケーションが用意されており、プラントの稼働後に必要な機能が網羅されている。
ヘキサゴンPPMの日本法人である日本インターグラフでは、「j5」を運転高度化コンサルテーションを実施したうえで、「j5」とともに組み合わせて、納入している。
現在、製造業の生産現場では、①企業存続の必須条件であるコンプライアンスの徹底と安全・安定操業の確立、②生産計画に基づくさらなる品質と生産性の向上、③生産設備老朽化に伴う設備保全管理の強化と生産設備の信頼性の維持、④要員の若返りに伴う人材育成と現場力の向上、などの問題に直面している。これらの問題に対応するために、業務量が増加しているケースも散見される状況にある。
これらの課題に対して、生産活動の中核をなす運転部門では、操業要件に向けて、運転部門の各種リソースを適正に配分し、運転のマネジメントシステム(運転方針、業務プロセス、役割と責任などを管理し、継続的に改善するための枠組み)を確実に回す、運転マネジメントシステムの適正化が求められている。
日本インターグラフでは、ユーザと課題を共有し、①運転管理高度化コンサルテーションの実施、②運転管理システム「j5」の導入を組合わせた運転管理ソリューションを提供している。「運転管理高度化コンサルテーション」は、日本インターグラフの経験豊富なコンサルタントが運転部門の日常業務を詳細かつ客観的に分析し、運転管理の課題を洗い出すとともに、ユーザと合意した高度化目標を達成する提案を行う。
コンサルテーションは、①現状調査の実施、②課題の整理、③あるべき姿の整理、④問題の明確化、⑤問題解決の目標の設定、⑥問題解決のコンセプト決定、といった手順で行われる。
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日本インターグラフのコンサルテーションフロー |
そのうえで、要件定義を行い、その定義に見合ったシステムとして「j5」を納入する。「運転ログ」「申し送り帳」といった運転管理領域に加えて、モバイル、プロセス安全、コンプライアンスといった、新たな領域の要求にも応え、30を超える運転管理・設備台帳とHSEアプリケーションを提供する。
一連のコンサルテーションも、ユーザから高く評価されており、「j5」がプロセス系産業に浸透したとも言われている。
課題を的確に洗い出し、そのうえで提案する。この方法で、「j5」は日本国内でも順調に売上を伸ばしている。
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