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 2019.12.5
 日本インターグラフ ダイレクター 大坂 宏 氏
 属人的なプラントオペレーションをデジタル化
 オペレータの経験不足を補う運転管理ソフト「j5」

今年1月、エンジニアリングITソリューションのヘキサゴンPPMが、プラントの運転管理ソフトのj5インターナショナル社を買収した。この買収により、EPCに関するソリューションを豊富に揃えるヘキサゴンPPMはプラントの運転管理を対象にするソリューションを獲得したことで、プラントの稼動後のO&Mに対応できるようになった。この「j5」だが、属人的なプラントのオペレーションをデジタル化できるという特徴を持つが、これにより、未熟なオペレータもベテランのノウハウを検索することで学ぶことができるようになった。日本国内でもすでに70事業所に納入されているが、「j5」を初めて日本に紹介したのが、ヘキサゴンPPMの日本法人である日本インターグラフの大坂宏ダイレクターだ。大坂ダイレクターに「j5」の特徴について語ってもらった。



大坂 宏(おおさか ひろし)氏

1979年新潟大学工学部化学工学科を卒業。石油精製エンジンニア、産業用リアルタイムシステム構築システムエンジニアを経て、1992年にプロセスエンジニアリングとシステムエンジニアリングを融合させたエンジニアリング・サービスを提供する大坂システム計画を創業。2009年、国内にj5を導入する。現在は国内j5ビジネスの責任者を務めるとともに、コンサルタントとして製造業の生産現場に入る。


















国内70事業所に納入

ENN 「j5」は、どのようなソリューションですか。

大坂 運転のマネジメントシステムです。運転の方針に従って運転を実行し、それをマネジメントレビューして、運転が計画通りにできているかを管理するシステムです。これまで運転に携わる人間が個別に管理する方法がとられてきましたが、それを情報ベースで管理します。

石油精製や石油化学のプラントでは、6割の人が運転部門で働いていますが、これら運転を担当する人にフォーカスしています。

ENN 日本では、すべての石油会社が導入したと聞いていますが。

大坂 すべてではありませんが、8割以上の石油会社が導入されました。現在は、主に石油化学・化学メーカーに働きかけています。これまでに国内の70事業所に納入しました。

ENN 多くの事業所が導入されましたが、その決め手は何だったと思われますか。

大坂 一つには、コンサルティングを重視しているからだと思います。

当社で「j5」導入前にコンサルティングを行い、問題点を洗い出し、その問題点をお客様と共有したうえで、ソリューションを提供するようにしています。このやり方が評価されていると考えています。

お客様の業界では、1960年代から70年代にかけて新入社員として入社したベテランの方たちが仕事のやり方を構築しており、昔のやり方がずっと引き継がれていました。このため、属人的に行われてきました。

こうした方々に現場で接する中で、全体をまとめるプラットフォームの必要性を感じました。「j5」自体、元々、プラットフォームを構築するという目的で作られています。ベースにフレームワークという全体の情報を統合するレイヤーがあって、その上に必要なアプリケーションが構築できて、なおかつ、アプリケーション同士のデータ連携ができるのがメリットと言えます。現場で欲しかったプラットフォームの要求と「j5」のソリューションのアーキテクチャが合っていたので、非常に広がりました。

ENN ENN:システムはどのように進化したのですか。

大坂 当初は、運転管理だけでした。現場は装置を持っていますから、設備管理をやらなければなりません。そのうえ、安全管理にも対応しなければなりませんから、設備との連携、安全との連携についても対応する必要があります。また日本導入当初は、プロセス安全管理が注目されていましたから、ヒヤリハット、変更管理、着工許可など、安全情報管理のニーズが高まっており、「j5」もこの方向に向かって進化を遂げてきました。ここで重視されるのは、やはり現場です。現場に一番近い運転員がしっかりとした情報を上げなければなりません。そこで運転員のツールとして、情報を上げる仕組みが必要です。

こうしたニーズに対応するため、当初は5~6個しかなかったアプリケーション数が現在では、約20個に増えました。

同時に、お客様の要求を簡単に実現できる開発環境も整ってきていますから、アプリケーションを開発しやすくなっています。

ENN 「j5」の「申し送り帳」はどのように使われているのですか。

大坂 : 日本の石油会社の一般的なケースだと、交替勤務者は4つの班が2交替制で、12時間で回します。化学会社は3交替制で、8時間で回します。一つのチームをシフトと呼んだり、直と呼んだりします。6~8人くらいが、一番コミュニケーションが取れて、全体の管理ができると言われています。

この直で運転すると、DCS(分散型制御システム)操作や現場作業など1日当たり100件くらいのイベントが出てきます。例えば、「このポンプにトラブルがあった。サンプリングを取った。」などの情報があります。この情報は非常に重要で、次のシフトに正確に伝える必要があります。この仕組みを「申し送り帳」と呼び、以前は紙の「申し送り帳」を使っていました。「j5」ではさまざまなイベントをタイムリーに電子的に記録することで、「ここで何をやったのか」というデータが残ります。これが元になって、運転に関するデータベースができます。ですから、「申し送り帳」は最早、「申し送り帳」ではなくなっていて、運転そのものと言うことができます。

ENN 最近の若手のオペレータは、プラントの建設を経験していませんし、若手であれば経験不足でもありますから、そういった運転データは重要ですね。

大坂 : 昔のように紙の「申し送り帳」ではデータの検索ができませんが、デジタルになっていれば、容易に検索できます。

そこに正確な情報が書いてあれば、「ポンプの1番で何があった」ということが検索できます。

昔は、ベテランの頭の中に情報がありましたが、最近は、そういう人がいなくなりましたから、適切なアドバイスがもらえません。そこで「現場で何が起こったか」という出来事のデータベースは非常に重要です。


利害が一致、ヘキサゴンPPMグループ入り

ENN ヘキサゴンPPMが今年1月に「j5」を買収されましたが、その狙いはどこにあったのでしょうか。

大坂 「j5」は全世界で導入されていて、サイト数も約500に達しており、プラントの運転管理ソリューションのリーダーだと自負しています。

しかし、ビジネスを一歩拡大するには、大きなパートナーと連携することが必要だと感じていました。

その一方で、ヘキサゴンPPMもEPCについては非常に強いが、O&M(オペレーション&メンテナンス)に課題を持っていました。それでも、Mについては、アセットデータを扱っているので、対応できますが、Oの部分を強くするには、自ら対応するのでは時間がかかるし、対応できる領域も制限されます。

これらを背景に、互いの利害が一致して、M&Aが成立したと思います。

ENN EPCとプラントの運転は密接に関わっているということですね。

大坂 : EPCで出てきたデータの大部分は、プラントの運転でそのまま使います。

ヘキサゴンPPMが現在、積極的に売り込んでいるソリューションに「SDx」という商品があります。これは、スマート・デジタル・トランスフォーメーションと言うソリューションで、エンジニアリングデータと運転データが連携します。

例えば、「ポンプの1番」と言えば、P&ID上の「ポンプの1番」がデータシートとともに、出てきます。また、過去の「ポンプの1番」の運転記録がj5を介して検索できます。ですから、データ・マネジメント・プラットフォームのように活用できて、モバイルにもつながりますから、現場にいる作業員に適切なデータをいつでも提供できます。

ENN 「j5」の今後の展開については、どのようにお考えですか。

大坂 様々なシステムと連携する必要があると思います。SAPなどのERP、OSIsoftのPIなどのヒストリアンやヘキサゴンの他のソリューションとの連携はあると思います。

「j5」のフレームワーク上で他のソフトとの連携も取りやすくなっています。時代や顧客ニーズの変化にも的確に対応できるのが強みでもあります。

ENN ありがとうございました。



㈱重化学工業通信社
 

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