ENGINEERING IT ONLINE



    IT ONLINE トップページ / ENN-net / 購読・サンプルのお問い合わせ / バナー広告について


 2019.11.5
「YII2019」でベントレー・システムズが示した維持・管理ソリュー
ション ~APMシステムが好調、マシンラーニングにも対応

 ベントレー・システムズは10月22日から24日までの3日間、シンガポールのマリーナ・ベイサンズ・コンベンションセンターで、「Year in Infrastructure(YII)2019」を開催した。設備の新設よりも、既存設備の効率的な活用へのニーズが高まる時代を反映して、ベントレーも設備のAPM(アセット・パフォーマンス・マネジメント)関連のソリューションに力を入れる姿勢を明確にした。またAPMソリューションをリアリティモデリングソフトの「ContextCapture」と連携させれば、マシンラーニングにも対応できる。ベントレーのAPM関連製品のポートフォリオの充実度には、目を見張るものがある。

 「Reality Modeling(現実のモデル化) 、Connecte dDataEnvironment(データがつながる環境)、i-Model(データ交換)、DigitalTwins(デジタルツイン)、これらは普及し、デジタルワークフローは大きく改善されました」 ベントレー・システムズのCEO、グレッグ・ベントレー氏は10月23日の基調講演でこう強調した。

シェルが「Digital Construction Solution」で好パフォーマンス

 ベントレーの35年間の歴史において、その技術の始まりは2D CADだった。それが、2.5DのGIS、3DのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と、進化を遂げ、現在のデジタルツインでは、4Dが実現されている。

 4Dとは、3Dに時間軸が加わったものだが、データが時間軸を持ったことで、ワークフローを表現できるようになった。

 そして、そこに取り込まれるのは、プラントのDCSやERPシステムから取り込まれるデータであることもあれば、CADデータである可能性もある。また、ベントレーのリアリティモデリングソフトウェア「ContextCapture」であれば、デジタルカメラや3Dレーザースキャンにより取り込んだデータからモデルを生成できる。このソフトの登場により、それまで、アナログでしか存在しえない物(リアル)がデジタル化された。そして、このテクノロジーはマシンラーニングにも対応でき、AIの時代に、間違いなく重要な役割を果たす。

 重要度を増すデジタルだが、グレッグ・ベントレー氏から紹介を受けて壇上に立った、ゲストスピーカーであるシェルのバイスプレジデントで、プロジェクトエンジニアリングを担
シェルのサダ・イヤン バイスプレジデントと
握手を交わすクレッグベントレーCEO
当するサダ・イヤー氏は「オイル&ガスの分野にも、デジタルの時代が到来した。デジタルツインと言われるが、われわれの世界での意味は少し異なり、資本の効率化。すなわちライフサイクルに渡る最適化を意味する」と指摘した。

 デジタル上で挙動を確認し、リアルな世界に反映するが、デジタルツインは、ヴァーチャルな動きとダイナミックな挙動が対になっている世界を意味している。

 シェルはベントレーが提供する「Digital Construction Solution」を採用しており、そのメリットについて「プロジェクト遂行時に、関係者が同じ情報を共有し、皆で可視化すれば安全性が高まり、より高度な建設計画が立案できる」と語った。

 一方、ベントレーの創業者で、現在もCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)を務めるキース・ベントレー氏は10月24日、テクノロジー・キーノートで壇上に立ち、「デジタルツインのコンセプトは単純だ。デジタルとリアルが融合されるが、これによりリアルの世界の変化をデジタルの世界に反映し、それが仕事のワークフローまでを変え、ひいては、ビジネスプロセスまで変える」と指摘、さらに「デジタルツインのメリットで最も重視されているのは、柔軟性だ」とも付け加えた。

 キース・ベントレーの発言にある「柔軟性」には特別な意味がある。一貫して、インターオペラビリティ(相互互換性)を重視したテクノロジーに取り組んでおり、このためデータが互換性を持ち、フォーマットに関係なく、データを交換ができる。このインターオペラビリティを重視した戦略が、多様なデータを取り込む時代を迎えた今、大きな意味を持つ。

 創業者として一貫して、ベントレーのテクノロジーに関わってきた、キース・ベントレー氏。インターオペラビリティを重視してきたベントレーの創業者が発した「柔軟性」という一言には、重みを感じた。


売上好調な「AssetWise」

 「YII2019」において、一貫して訴えられていたのは、インフラ資産の新設よりも維持・管理の市場が拡大しており、この市場に対応することだった。

 ベントレーでは世界的に、維持・管理ソリューションである「AssetWise」の売上高が伸長している。

 歴史的に早い時期に工業化した欧米のみならず、東南アジア、インド、中東地域で、それぞれ売上高が増加している。

 設備データは、プラントのDCS(分散型制御システム)やERPなどからも取得可能だが、リアリティモデリングソリューションの「ContextCapture」から取り込むこともできる。このリアルなデータをマシンラーニングすれば、AI機能も持つことになる。

 設備系のソリューションでは、その維持・管理を重視しながら事業展開する方針だ。


デジタル・コンストラクションでトプコンと合弁設立

 ベントレーは、これまでに開発や買収などにより獲得してきたテクノロジーの高付加価値化にも取り組んできた。

 10月21日には、ポジショニングやスマートインフラ技術を持つ、わが国のトプコンの米法人であるトプコン・ポジショニング・システムズ社と合弁企業、デジタル・コンストラクション・ワークス(DCW)を設立したと発表した。

 DCWは、建設業者のプロジェクトチームにデジタルの専門家を送り込み、より優れた設計構築結果を提供するために、建設エンジニアリングプロセスを推進および最適化するために設立された。建設業者の既存のプロセスを建設エンジニアリングと結び付けて自動化することにより、プロジェクトをより改善するとともに、建設業者のワークフローをシステム化するのをサポートする。

 すでに、DCWはシェルから仕事を受注し始めているが、ベントレーがプラントオーナーに対して、設備について、デジタルの側面からサポートする。

 DCWの社長には、ベントレーの戦略的パートナーシップのバイスプレジデントであるテッド・ランボー氏が就任した。


「ProjectWise」と「SYNCHRO4D構築環境」を包括的に拡張

 ベントレーはカンファランス期間中に、「Project Wise」と「SYNCHRO4D構築環境」の包括的な拡張について発表した。

 これら2つのソリューションを統合することで、プロジェクトデジタルツインの価値がプロジェクトデリバリーのエコシステム(バランスの取れたモデル)全体に広がり、設計とワークフローが同期しやすくなる。

 また新しい「ProjectWise365クラウドサービス」は、「Microsoft365テクノロジー」とオフィス生産性ツールを活用して、あらゆる規模の組織のBIMおよびインフラストラクチャ設計データの範囲、および拡張を比較的に低コストで実現する。

 さらにベントレーの新しい「SYNCHROクラウドサービス」により、請負業者はプロジェクトおよびフィールド管理、高度な作業パッケージ、Microsoft HoloLens2拡張現実ソリューションの設計データと建設モデルを4Dで視覚化できる。

 「ProjectWise365クラウドサービス」は、設計チーム向けに開発された、SaaSベースの製品で、設計チームが設計を容易に保存、検索し、コンテンツ共有を容易にするソリューションだ。これにより、コラボレーションのワークフロー、フィードバック管理が可能になる。


データベースの強化も検討

 多様なデータを取り込み、ソリューションを提供するベントレーだが、これらを支えるデータベースの問題が出始めている。

 これまで、ベントレーはオラクルが提供する市販のデータベースを活用してきたが、アセットパフォーマンス& リライアビリティ担当のバイスプレジデントであるピエール・デゥイット氏は「オラクルのデータベースでは限界があるのは分かっている。このため、Microsoft の『AzureSQL Databese』やMongoDBの『NoSQL』」へ移行しつつある」と言う。

 扱うデータが増加するのに伴い、そのデータベースが堅牢でないと、システムもスムーズには動かないはずだ。扱うデータ量が増加するのに伴い、システムそのもののベースも強固なものにする必要がある。この点についても、ベントレーは着実に手を打っている。

 また24日最終日の夜には、カンファランス開催中に行われていた、インフラ部門18カテゴリーのファイナリストプレゼンテーションを審査員が審査。その結果として、各カテゴリーのアワード受賞者が発表された。

アワード受賞者

㈱重化学工業通信社
 

このホームページに関するご意見・ご感想をお寄せ下さい。
   E-mailでのお問い合わせ
掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は 株式会社 重化学工業通信社 に帰属します。
Copyright 2002~2019 The Heavy & Chemical Industries News Agency, all rights reserved.