2019.7.24
提携・買収で高付加価値化する「AssetWiseスイート」
有力顧客の声も反映、広がる可能性 |
資産管理システムとして「AssetWiseスイート」を提供するベントレー・システムズ。早い時期から、設備のライフサイクルに着目し、稼働後のO&M(オペレーション&メンテナンス)に対応したソリューションを提供してきた。現在では、これまでのソリューションを「AssetWiseスイート」として提供しているが、このソリューションが設備管理システムの核になる。さらに、提携・買収により新たな技術を獲得できれば、ソリューションはさらに進化を遂げる。
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ベントレー・システムズの設備のライフサイクルソリューションは、「AssetWiseALIM」「AssetWise Reliability」「AssetWiseOperational
Analytics」の3つのソリューションで構成される「AssetWiseスイート」により提供される。
同時に、スイート製品をサポートする「AssetWise Enterprise Interoperability」により、複数のデータソースやサードパーティ製のシステムへのアクセスを可能にしている。設備管理の場合、様々なフォーマットでデータが取り込まれることが多いため、互換性を確保できるシステムを介すことは理に叶っている。
そしてベントレーは、2018年8月にシーメンスが9%の出資を果たし、これにより資本業務提携契約を締結、この契約に伴い、シーメンスとのコラボレーションによって、スイート製品の高付加価値化を進め、昨年11月に買収したカナダのソリューションプロバイダーでマシンラーニング技術を得意とする「AI
worx」のテクノロジーの導入による新たな展開も模索されている。
さらに、同社が持つリアリティ・モデリングのソリューションである「ContextCapture」の設備管理分野への活用にも取り組まれており、ベントレーは「AssetWiseスイート」製品を核に、その高付加価値化も進めている。
設備管理ソリューションのコアとなる「AssetWiseスイート」 |
「AssetWise ALIM」の「ALIM」は、アセット・ライフサイクル・インフォメーション・マネジメントの意味だ。資産のライフサイクルを通して、様々なデータへのアクセス、品質、整合性および関連性を、周辺の状況に応じて、総合的に改善できる。記録システムとして利用することで、構造化、非構造化情報、文書記録および変更の管理を行い、正確な情報を確実にエンジニアリングや運用、メンテナンスに活かすことができる。また、「AssetWiseスイート」には、空間対応性を備えたネットワーク認識が可能という特徴があり、デジタルエンジニアリングモデルを活用して、優れた資産パフォーマンスを実現できる。
ベントレーで、プロセス・資源分野
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アンマリー・ウォルタース 氏 |
担当のインダストリ・マーケティング・ディレクターを務める、アンマリー・ウォルタース氏は「『AssetWise』は、BPが洋上で稼働するオイル&ガス施設であるFPSOの設備管理に使われている。ALIMの使用により、以前は古い情報しか持ち合わせなかったが、最新の情報を集められるようになった」と言う。石油メジャーも認める品質を持ち、好評を得ている。
「AssetWise Reliability」は、カナダの製鉄所に設備管理システムを提供していたIvara(すでにベントレーが買収)の技術をベースにしたソリューションだ。
その特徴は、長期的な展望に立って資産の信頼性とパフォーマンスを改善する戦略を策定できること。日常的な資産運用プロセスを最適化し、運用コストを最低限に抑えながら生産能力を最大限に高めることができる。リスクベース検査、メンテナンスタスク解析、信頼性を重視したメンテナンス解析を通じ、資産と資産投資によって、最適な価値、安全性の最大化、規制に対するコンプライアンスの強化を実現できる。近年、メンテナンス分野で、「RBM(リスク・ベースド・メンテナンス)」や「RCM(リライアビリティ・センタード・メンテナンス)」を重視する傾向が高まっているが、こうしたメンテナンスの傾向にも的確に対応している。
「AssetWise Operational Analytics」は、ベントレーの特定用途向けアプリケーションを使用して、有益な潜在情報を集め、より良い意思決定を行い、独自の運用および解析ダッシュボードを作成。そのダッシュボードは、任意のウェブからもアクセスでき、関係者間で情報を共有できる。これまでに、化学メーカの腐食管理や鉄道事業の状況分析に活用された実績がある。
また最近は、プラントの建設データをオーナーオペレータにデータハンドオーバーの国際規格としてCFIHOSが制定されたが、ベントレーはCFIHOSを完璧にフォローしている。
ベントレーは、「AssetWiseスイート」を核とする設備管理ソリューションの提供を進めているが、資本業務提携関係にある独シーメンスや昨年秋に買収した加AI
worx社との協業により、新たなソリューションを開発している。
昨年10月、シーメンスとベントレーは、共同開発したクラウドサービス「PlantSights」を発表した。
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Plantsightsの画像 |
「PlantSights」は、物理的なリアリティデータとエンジニアリングデータを同期して、最新の運用状態を再現したデジタルツインを実現するものだ。稼働中のどのプラントであっても、異種データソースをまたいで包括的なデジタルコンテキストを作成し、矛盾のないデジタルコンポーネントを作成できる。
稼働中のプラントは例外なく、既存の物理的な状態についても、理論上対応するエンジニアリングデータの種類や形式についても、累積的に変化するという性質がある。そのため、運用時状態のデジタルツインは、包括的かつ正確に、信頼できる形で物理リアリティとその仮想エンジニアリング表現の両方が反映されるように同期させる必要がある。また、同期後も必ず、あらゆるプロセスプラントのオーナーオペレータに運用状態のデジタルツインを活用できる。
「PlantSights」では、運用およびプロジェクト関連のエンジニアリングデータが、シームレスに、整合した状態に調整される。このため、すべての部門と関係者が、瞬時にアクセスできる。特に既存プラントの場合は、プラントのドキュメントが最新の状態に維持されるため、資産情報を連携して完成させる時間と手間が大幅に削減される。稼働中にエンジニアリング情報を修正できるサービスで、プラントのライフサイクルに渡った調整に効果的に活用されるだろう。
また昨年11月に買収した、加AIworxは、マシンラーニングとIoT技術のサービスに優位性を持つ企業だ。AIworxは、インフラストラクチャ・エンジニアリングのデジタルツイン情報により、最新のデータを収集し、オペレーション&メンテナンスを最適化するために、収集される情報を常にアップデートすることができるソリューションだ。
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マシンラーニングとIoTでインフラ資産の効率化を実現するAI worxのソリューション |
ベントレーは、AI worxがマシンラーニングやIoT技術に関するサービスを提供することで、顧客の意思決定をサポートしてきたことに着目、今後の資産管理に活用できると判断、買収に踏み切った。 ベントレーは自社の開発部門ばかりではなく、シーメンスとの資本業務提携により、新たな技術と発想に出会い、顧客に有用な製品開発につなげているが、同時に買収によって獲得した技術もその後のソリューション開発に活用できる。
「AssetWiseスイート」はベントレーの設備資産管理ソリューションの核ではあるが、その核は提携や買収により様々な方向に拡大する。
その拡大したソリューションを活用することで、新たな価値を創造している。 またBP、シェブロン、シェルといった、石油メジャーが「AssetWiseスイート」のユーザである。こうした有力顧客の優秀なエンジニアたちの声を製品に反映できれば、新たな価値が生まれる。
様々な価値創造プロセスで、「AssetWise」は今後も進化するはずだ。
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