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 2018.7.24
デジタル化とデータベース強化が共通課題になったエンジITベンダー
アヴィバ・ヘキサゴン・ベントレーに見るデジタル化が作り出す新展開

 7月初旬から中旬にかけて、エンジニアリングITベンダー、アヴィバ・ヘキサゴンPPM・ベントレーシステムズの首脳が相次いで来日した。その機会に小誌ではインタビューの機会を持ったが、3社が今、取り組むのはデジタル化とデータベースの強化だ。これらテクノロジーは近い将来、訪れるIoTやビッグデータの技術に不可欠なもので、将来を見据えた取組が各社のR&D部門で展開されている。

 プラント設計のエンジニアリングITベンダー各社が最近、取組を強化しているのが「デジタル化」だ。

 アヴィバが「Digitalization」、ヘキサゴンPPMが「Digital Transformation」、そしてベントレーシステムズは「Going Digital」を標榜し、デジタル化は各ベンダーが避けては通れないテクノロジーになった。

 デジタル化がエンジニアリングITベンダーにとって、避けては通れないテクノロジーとなった理由は、「Connected(つながる)」環境で、IoTが実現されるからだ。そしてこの数年、プラント設計用のエンジニアリングITベンダーはいずれも、大規模な企業体の傘下に入ったり、資本関係を持った。

 スウェーデンの測量大手ヘキサゴンは2010年にインターグラフ、仏重電メーカーのシュナイダーは2018年にアヴィバをそれぞれ傘下に入れた。また独シーメンスも2016年末にベントレーシステムズに資本参加、現在では戦略的な業務提携関係にある。

 一連の大手企業によるエンジニアリングITベンダーの買収や資本参加は、空間情報を扱う3次元モデルのテクノロジーの獲得と見られる。

 そのエンジニアリングITベンダー各社は今、データベースの強化に力を入れている。

データベース「ダバコン」の強化に取り組むアヴィバ

 アヴィバは今年初めから、シュナイダーの傘下に入った。

 最近、アヴィバが取り組んでいるのが、「ダバコン」と呼ばれるデータベースの拡充だ。

 「ダバコン」はアヴィバの開発したデータベースで、リスト形式で書かれた「1D」、P &IDなどの「2D」、そして「3D」のモデルをデータとして扱うデータベースだ。この「ダバコン」に1D~3Dのデータすべてを取り込めるようにした。一言で言えば「データベースを統合した」だけかもしれない。しかし統合されたことで、データはシームレスに連携
 
アヴィバ エリック・カーナー氏
するため、数多くのメリットがある。例えば、1Dのデータを変更すれば、そのデータと連携する2Dや3Dのデータは自動的に変更される。データのフォーマットには関係なく扱えるため、アヴィバ以外の製品のデータにも対応している。このため、ヘキサゴンPPMの「SmartPlant」やベントレーシステムズの「MicroStation」のデータも扱うことができる。

 1Dのレイヤーには、様々なデータをすべて並べることができるが、これを活用することで、ここに格納されているデータをピックアップして、ラインリストや電気計装の1ラインのリストを作成することもできる。

 アヴィバは2014年にデータをシームレスに扱えるソリューション「AVEVA Engineering」をリリースしているが、このリリースにより、シームレスな連携が可能になったが、今回の開発では、扱えるデータの範囲が広がった。

 データベースには、プロジェクト関係者がアクセスできるため、仮に電気のエンジニアが作成したデータを配管のエンジニアが取り出すことができる。

 データベースである「ダバコン」の統合は、従来のアヴィバのソリューションの延長線上にあると言えるのかもしれない。しかし、シュナイダー傘下となったアヴィバのデータ統合で注目されるのは、シュナイダーの持つ設備管理システムなどのソリューションとの連携だ。

 例えば、リアルタイム操業管理ソフトウェアの「Wonderware(ワンダーウェア)」と連携すれば、設計データをプラントのライフサイクル管理に活用することができる。

 こうした連携が可能になったことについて、製品戦略マネジャーのエリック・カーネット氏は「従来、アヴィバのモデルを使って、あるポンプに振れても、リアルタイムにデータを表示できなかったが、それが可能になった。この技術により、様々な次の展開が考えられる」と言う。

ベントレー、6月開催のアヘマで「iModelHub」が注目の的に

 ベントレーシステムズは今年6月に、フランクフルトで開催された、アヘマで「iModelHub」をPRして、多くの来場者の関心を集めた。

 「iModelHub」を活用することで、いつ、どこで、誰が、といった履歴を自動的に管理できる。

 「iModelHub」は、昨年1 0月に開催された、ベントレー主催のイベント「Year in Infrastructure2017カンファレンス」で発表されたもので、既存のアプリケーションやプロセスに変更を加えることなく、利用できる点が特徴だ。各部門のアプリケーションで加えられた変更を同期し、配信。変更部分に加えられるデジタルコンポーネントを意味的および物理的に調整し、没入型の可視性を維持、すべてのプロジェクト部門および関係者間での包括的かつ継続的な設計レビューが実現されている。もちろん、データのフォーマットに関係なく扱えるため、ヘキサゴンPPMの「SmartPlant」、アヴィバのPDMSなどの3次元CADデータを扱うことができる。

 
ベントレーシステムズ
アンマリー・ウォルタース氏
 この特徴について、プロセス・資源分野担当インダストリーマーケティングディレクターのアンマリー・ウォルタース氏は「ツールに依存せずに、エンジニアリングデータそのものの価値をデータ管理するようにした」と言う。

 またベントレーはこの5年間、シーメンスと提携関係にあるが、ここでもISO15926(設計情報・設備情報標準フォーマット)を導入して、ベントレーの「OpenPlant」「ProjectWise」やシーメンスのプラント・エンジニアリングソフトである「COMOS」の連携が可能になり、使いやすさを実現した。

 ベントレーは創業間もない時期から、データの相互互換性を重視してきたが、その思想は、プロジェクトが多様性と複雑性を増すのに伴い、より有効なものになった。

ヘキサゴンPPMもグループR&D組織がR&Dの新機軸

 
ヘキサゴンPPM フランツ・クフナー氏
 ヘキサゴンPPMは、エンジニアリングに関するデータマネジメントシステムとして「SmartPlantFoudation(SPF)」を提供している。しかし、ヘキサゴンPPMのアジア大洋州地域のトップ、フランツ・クフナー氏は「SPFは、ヘキサゴンの8事業部のR&Dの主導の下、大幅に変わろうとしている」と指摘する。

 理由は、最新技術により、ウェブネイティブで系統図をパブリッシュするのではなく、系統図の上に搭載されている機器を扱えるようになったためだ。この精度が向上し、オブジェクトレベルでの管理が可能になった。

 こうした技術的な革新を可能にしたのは、2010年に旧インターグラフがヘキサゴンの傘下に入り、新たなR&D体制を採ったからだ。

 クフナー氏は「現在、当社はデジタル・トランスフォーメーションに力を入れています。この取組について、お客様によっては、新しいコンセプトとして捉えされていますが、われわれにとっては、長年に渡って取り組んできた課題です」と言う。

 グループには8事業本部に横断的なR&D組織があり、グループとしてのデータ統合のためのリニューアルが検討される。その中で、デジタルツインも意識される。デジタルツインは、リアルとヴァーチャル世界で「双子のように」対になる形で、表現されるものだ。プラント建設現場の場合、リアルの現場にはワーカーがいるが、ヴァーチャルな世界には、コネクテッドワーカーと言われる存在がある。

 こうした時代の変化に対応するため、ヘキサゴンでは現在、IoTのベース技術について、8事業本部で横断的に取り組んでいる。しかし、これらの取組が顧客の価値の最大化につながる必要がある。例えば、モバイルを利用することで、現場で18ステップだったプロセスが9ステップに削減されるなどのメリットが無ければならない。こうした取組を現在、ヘキサゴンPPMでは「お客様のパートナーとして行っている」(クフナー氏)と言う。

 さらにクフナー氏は「最近は、お客様の方が、アップル、オラクル、グーグルの動きに敏感になっている。オイル&ガスの企業の急速な変化に追いついて行こうとしている。この動きに対して、当社も手を打って行けないと、ポジションを落としかねない」と付け加える。

 急速なデジタル化への対応は、ヘキサゴンPPMの今後にとっても、不可欠な要素になっている。



㈱重化学工業通信社
 

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