2018.1.25
プラント業界でより普及した3次元計測
スキャナーの低価格化、ソフトの技術的進化が普及を加速 |
プラント業界において、レーザースキャニングを活用した3次元計測は定着した。かつては高額だったスキャナーの価格が下がり、スキャナーで得られる点群処理のためのソフトウェアも格段に進化。データの出力も「点群」「モデル」「図面」と幅広くなった。昨年12
月に開催された「SPAR 2017 プラント、プラント3次元計測フォーラム」において実施されたアンケートの結果には、わが国の3次元計測の普及の歴史が凝縮されている。
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スパー・ジャパンは昨年12月6日、「SPAR 2017 プラント、プラント3次元計測フォーラム」を開催した。この時に参加者に「3次元計測」に関するアンケートを実施、その集計結果をまとめた。
このイベントは、レーザースキャニングを実際に使用しているか、関心を持っている人が主な参加者。このため、レーザースキャニングによる3次元計測に関心の高い参加者が回答している。
所有しているレーザー機種で、最も高い構成比となったの、シェア41%のFARO。数年前に価格500万円の機種を発売した。それまで3次元スキャナーの価格は1,000万円を超える水準だったが、FAROの廉価な機種が市場に投入され、これが普及のきっかけとなった。
次いで高い構成比となったのが、33%のZ+F。ドイツの伝統あるスキャナーメーカーだが、これまで価格が高かった。しかし最近はFAROを意識した廉価な機種をリリースしており、こうしたことも構成比の拡大に効果的に働いたと見られる。
3番目の構成比となったのが、18%のライカジオシステムズ。光学機器では伝統あるメーカーだが、レーザースキャナーも普及している。
以下、トリンブル、その他と続いた。
スキャナーは価格本位で選択されていると見られ、廉価機種を最初に発売したFAROが引き続き高いシェアを誇っている。
また「3D計測:効果が得られた」については、「Yes」が77%、「No」が23%だった。
効果が得られた最大の理由は、「調査時間(の短縮)」が最も多く28%を占めた。次いで「(設計の)後戻り(の防止)」が19
%、「品質向上」が17%となった。また「工程短縮」13%、「コスト削減」12%となった。
成果内容は、いずれも効率向上やコスト削減が上位に上げられている。
反面、「効果が無かった際の課題・問題点」は、「コスト」が35%で最大シェアを示した。次いで「ソフト連携」30%、「精度・品質」15%と続いた。「コスト」が問題視されたのは、スキャナーが廉価なものでも価格が500万円で、まだ高い。またレーザースキャナーは施工図を作成しやすい「EyeCAD」(インターグラフ社製)が使用されているケースが多い。
「EyeCAD」の場合、スキャナーのデータを取り込む時に、中間ファイルに変換するためのソフトが必要になる。こうした状況が「ソフト連携」を問題視する回答につながったと見られる。さらに「精度・品質」については、スキャナーの精度は改善されているものの、完璧なレベルではない。このため、スキャナーの利用者は「使えるケースに使う」という意識で、スキャナーの選択を決めている。このため最近では「精度」を問題視する傾向は下がっている。
3次元レーザースキャナーから得られるデータは、まず点群で得られる。かつては、点群データを3次元CADのモデルに変換して使用するのが一般的だったが、採寸などの場合、点群だけでも十分に目的を果たすことができる。このため最近では、3次元モデルにまで変換しないケースもある。
それでも「成果物の活用形式」では、最大シェアとなったのが43%の「3D CAD」。多くのユーザーが点群データを3D CADに取り込み、モデルとして活用している。
また「点群」もシェア37%で比較的に高い構成比となった。モデルに変換しなくても用途を満たすことができるケースは以前から多かった。しかしモデルへの変換により多様な用途に対応するケースは意外に多い。また最近はソフトウェアが改良され、点群でデザインレビューが可能になっている。ソフトの改良により、点群の活用領域が広がったと言うこともできる。
さらに「図面」も16%と比較的に高いシェを持つ。レーザースキャニングデータを点群からモデルに変換し、さらに図面を出力して施工に役立てるケースもある。
今回のアンケートは、プラント分野における3次元計測の使用状況を反映したものである。プラントで使用する場合、施工図面が必要になることもある。この状況が反映された。
「点群」「3D CAD」「図面」と、3次元計測には様々な出力形式があるが、使用用途に応じて、出力形式を選択できる。
また「インテリジェントCADソフトの利用状況」では、「Plant3D(オートデスク社製)」の使用が22%で最も高いシェアとなった。
次いで高いシェアとなったのが「SmartPlant 3D(ヘキサゴンPPM社製)」で16%。比較的にハイエンドなCADで、大型プラントの設計を手掛けるエンジニアリング企業で普及している。 3
番目に高いシェアとなったのが、「E3D(アヴィバ社製)」「PDMS(アヴィバ社製)」「EyeCAD(ヘキサゴンPPM社製)」で、いずれもシェア15%になった。「E3D」は、点群処理機能を搭載しており、ハイエンドのユーザーに利用者が多い。また「PDMS」はアヴィバ社の「3D
CAD」の旧バージョンだが、プラント業界では根強い支持者がいる。
プラント分野における3次元計測は、モデルを持たないプラントをレーザースキャニングして点群を取得、その点群からモデルを作成することが目的の一つだった。
3次元計測が始まった当初は、点群の処理が難しく、頭痛の種だったが、3次元CADベンダーや専門のソフトウェア開発会社が新たなソフトを開発することで、点群処理が比較的に容易になったり、点群そのものを活用するソフトウェア技術も生まれた。
こうしたソフトウェア技術の技術的な進歩とレーザースキャナーの低価格化が進んだことが、3次元計測技術の普及に弾みを付けたともいえる。
また最近は、ハンディスキャナーも開発され、部分的に計測するために手軽にスキャニングできる技術も確立されている。
しかもスキャナーは低価格化したため、3次元計測技術は普及に向かった。こうした経緯を持つ3次元計測だが、今回のアンケートにも約20年間に渡る3次元計測の歴史が凝縮されていると言える。
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