2017.12.21
より手軽に高度な活用が可能になったプラント3次元計測
「第5回 プラント3次元計測フォーラム」開催 |
近年、3次元計測は急速に普及している。その背景には、かつて高額だった3次元スキャナーの価格が下がったのに加え、スキャニングデータを処理するソフトも、ユーザーニーズに的確に応えられるようになったことがある。今回の「第5回
プラント3次元計測フォーラム」でも、比較的に価格が抑えられた高機能の3次元レーザースキャナーが紹介されたり、軽量でハンドヘルド型のレーザースキャナーも出展されていた。また、点群とVRにフォーカスした発表もあり、3次元計測の世界が確実に高度な技術により多様化している状況が実感できた。
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昨年12月6日、みなとみらいの日石横浜ビルで「SPAR2017P第5回 プラント3次元フォーラム」(主催:SPAR JAPAN、本誌後援)が開催された。
毎年この時期に開催される、プラント分野に絞り込んだ3次元計測フォーラムだが、年々、参加者が増加、一昨年、昨年のイベントでは、午前中は参加者が会場に入りきらないほどの盛況ぶりだった。
今回の「SPAR2017P」の展示会場に集まった、スキャナーやソフトウェアも、「容易に使用できる」といった点が売り物の製品が多かった。
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独Z+Fの「IMAGER5016」 |
3次元レーザースキャナーメーカーとしては草分け的な存在である、独Z+Fの出展した「IMAGER5016」は、軽量かつ低コストでレーザースキャニングが可能な新製品だ。
Z+Fと言えばこれまで、スキャナーとしては一流だが、重量が重く、使い勝手に難があるという問題があった。
しかし「IMAGER5016」は、バッテリーを除いた時の重量が6.5㎏ 以下と、従来機種「IMAGER5010」の9~10㎏よりも大幅な軽量化を実現した。
また本体サイズも従来機種よりも3.0%の小型化を実現。これにより、IATA(国際航空運送協会)規格の航空機内に持ち込み可能なサイズがとなった。さらにバックパックでハンドフリーで高所移動が可能になり、本体、バッテリー、アクセサリー類を一つのケースに収納して持ち運べるようになった。これまで、重量や大きさの問題で手軽に持ち運びできなかったZ+Fのレーザースキャナーだが、「IMAGER5010」はこの点が大きく改善された。
もちろん、可搬性能だけではなく、スキャニングおいても、改善されている。
「IMAGER5016」は、複雑かつ大規模な設備を超高速・超高解像度&高精度でスキャンして、低コストで3D化する。各種プラント・製造ラインから文化財保護や科学捜査に至るまで、これまで実現困難だった3D計測への新しいソリューションを提供する。
Z+Fが誇る位相差方式による高精度・高スキャンレートおよび低レンジノイズのアドバンテージを妥協することなく、ホワイトバランス調整可能な内蔵HDRカメラ、夜間でもカラー撮影が可能なLEDライトが標準装備され、そのうえ内蔵のナビゲーションシステムや高速「WiFi」の機能と性能を標準装備しながら、さらなるコンパクト化と軽量化を実現した。
このほか、① 内蔵のポジション認識システムなどによりマーカーレスで合成できる
② スキャナー搭載の高速WiFiでスキャン結果(3D点群)をリアルタイムでタブレットPCに転送・表示できる ③ タブレットPC用に開発されたソフトウェア「LC
Scout」にて、スキャン現場でスキャンをしながら、その待ち時間中にノイズ処理、カラー化、合成処理を実現 ④ スキャン中の待ち時間を効率的に使用し、スキャン後のオフィスでの作業を大幅に短縮 ⑤
現場で確認でき、スキャン漏れを防ぐことが可能、などの機能面での充実も図られている。
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ハンドヘルド型レーザースキャナー
「ZEB-REVO」 |
デジタルカメラ画像から3次元モデルを生成するソフトウェアである、米ベントレー・システムズの総代理店として3次元計測分野「Context Capture」ではよく知られているみるくる。そのみるくるは今回、英GeoSlam社のハンドヘルド型レーザースキャナー「ZEB-REVO」を出展した。
「ZEV-REVO」は、スキャニング容易にしたレーザースキャナーで、100Hzスキャナーと360°視野で、高速・高精度・高品質のデータキャプチャが可能だ。
また登録については、自動SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)クラウド・ツー・クラウド登録のGeoSLAMデスクトップ処理、またはGepSLAMの「pay-asyou-go」処理のいずれかを使用できる。
さらに点群は「.laz」(「.las」の圧縮形式)形成で生成され、軌跡ファイルも生成される。抽出された「.las」はすべての主要業界標準の後処理ソフトウェアと互換性がある。
「ZEB-REVO」は、従来機種の「ZEB1」の成功を基盤に、より高速なスキャナーに加え、簡単な操作性と優れた汎用性を備えている。
「GeoSLAM」のコアは、業界をリードするSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)アルゴリズムで、これはGPSを必要とせずに、閉鎖環境の迅速なモバイルマッピングを容易にするものだ。
「ZEB-REVO」の特徴として、汎用性が挙げられるが、センサーヘッドの自動回転により、ハンドヘルドでの使用に加えて、ボール、バックパック、自律車両でも使用できる。
解像度にも優れており、100Hzのラインスピードで、従来機種「ZEB1」より2.5倍のスキャンラインを生成し、より構造化された点群を取得する。
また手動でセンサーヘッドを動かす必要は無く、小型である「ZEB-REVO」は、より微妙な調査作業を提供する。
さらに、より高い解像度により、特徴抽出の改善を容易にし、一つの閉ループで、より正確な自動SLAMを完結できる。
「点群+VR」活用を提案した日鉄住金テックスエンジとエリジオン |
今回の「SPAR2017P」では、「点群とVRのつながり」も一つのテーマになった。
このテーマに即した発表を行ったのが、日鉄住金テックスエンジだ。「デジタルリアリティがもたらす設計改革」について、機械事業本部エンジ2部プロジェクト管理グループの村山亨氏が発表した。
日鉄住金テックスエンジは2013年から点群計測に取り組んでいるが、最近はCADモデルに入りながら、より感覚的に分かるVR空間の活用に取り組んでいる。
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「点群VR」について発表したエリジオン |
この試みを実現させているのが、スキャニングデータの処理ソフトを開発しているエリジオンだ。同社プロダクトマーケティングの渡辺友彦氏は「点群+VRにより、限りなくリアルにデジタル再現した実世界を体験。ここにない場所に『入る』という行為・感覚」により「実世界通りに、バーチャル空間を漢字、捉えることができる」という。
こうした「点群+VR」の活用により、現場作業の作業内容を事前に、VR空間で打ち合わせ、実際の作業現場での効率的な作業の打合せや、危険な作業のより安全な進め方を事前に確認でき、現場の安全確保につなげることができる。
かつて、レーザースキャニングによる点群データの取得はモデルを生成するために避けては通れない通過点だったが、点群からVR空間を生成することで、これまでには予想もしなかった作業の効率化や安全確保が実現できる。
レーザースキャニング計測の進化はとどまる所を知らないようだ。
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