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 2017.6.28
 スパーポイントリサーチ代表 河村 幸二 氏
 大衆化時代に突入した3次元計測、今重視される「ユースウェア」
 プラントでは、ディメンジョナルコントロールへの活用も視野

レーザスキャニングによる3次元計測は普及し続けている。廉価なスキャナの登場や、データ処理ソフトの技術開発などにより、加速度的に普及し、最近では「大衆化」とも言われるようになった。こうした中で、「今、求められるのは、ユースウェア」とスパーポイントリサーチ社の河村幸二代表は指摘する。
3次元計測の調査会社として米国ボストンに生まれたスパー社だが、同社は10年以上に渡り、イベントを開催し、この分野を注視してきた。日本代表を務める河村代表に普及の背景と3次元計測技術の今後について語ってもらった。





河村 幸二(かわむら こうじ)氏

1942年8月25日生まれ。65年大阪大学工学部応用化学科卒業、67年同大学工学部化学工学科修士卒業後、旭化成工業入社。73年4月旭エンジニアリング(現旭化成エンジニアリング)に転籍、94年4月同社取締役、2002年エーイーシーテック代表取締役社長、15年6月旭化成グループ退社。2007年1月、スパーポイントリサーチ設立とともに代表に就任。


















大衆化する3次元計測

ENN スパーポイントリサーチ社が主催している「3次元計測フォーラム」は今年で第13回となりました。スキャナも小型化・低価格化しており、普及速度もあがり、「大衆化(Democratization)」と言える状況にあります。普及の歴史をどのように御覧になっていますか。

河村 3次元計測の技術には、「採取」「処理」「表示」の3つの要素があります。当初、技術における重点は「採取」にあったのですが、時間の流れとともに、重点は「処理」や「表示」の方へと移っています。スパーの世界大会においても、当初はデータの取得に関するセッションが多く組まれていましたが、最近では、データの処理や表示に関心が変わってきました。

ENN 3次元計測は、急速に普及したと思います。その要因はどこにあったのでしょうか。

河村 この2~3年、この世界では「大衆化」と呼ばれる動きが起こっています。かつては、3次元計測のスキャナも高価でしたし、データの取得も難しかった。このため、3次元計測をサービスとして提供するサービスプロバイダーとしてのビジネスも成り立ちました。

ところが最近は、スキャナも低価格になると同時に小型・軽量化しました。こうした技術的な進歩により、3次元計測そのものが普及しました。これに伴い、3次元計測の専門家であるサービスプロバイダーに依頼する必要もなくなり、誰でも3次元計測が可能になりました。

ENN ドローンに搭載されるようになって、活躍の場も増えたと思います。

河村 ドローンの普及は、3次元計測の普及をより加速しました。ドローンも大衆化ツールで、数万円の廉価な機種から数千万円までの高級機種まで、幅広い製品レンジを持っています。廉価な機種は大衆化を加速しましたが、高価な機種も高度なニーズに応えており、様々なニーズに対応しています。最近では、ドローンを活用して、3次元の地図情報に役立てているケースも多く見受けられます。


ユースウェアの時代に

ENN 最近、「ユースウェア」という用語が使われ始めていますが、この意味をどう捉えれば良いのでしょうか。

河村 ハードウェアやソフトウェアは高性能になり、安価になっていきますが、実際に使用するためには、ユーザの使用する形に合うようにくふうをする必要があります。その使い方で勝負が決まりますから、その使い方を「ユースウェア」と表現するようにしました。

ENN ハードウェアでもソフトウェアでも無いわけですね。

河村 ハードもソフトも最新の技術を買うことができます。しかし、ユースウェアを買うことはできません。ハード、ソフトともに革新を続けていますが、ユーザの仕事のやり方がネックになります。良い道具であれば、使いこなせるようになりますが、組織の在り方や仕事のやり方を変えないと、本当の効果はありません。自社で努力するしかありません。

またユースウェアには、もう一つ別の意味が込められています。ハードもソフトも技術的に進化しますし、価格的にも安くなります。ですから「待った方が得」と言われますが、そうではありません。ユースウェアを重視して、使いこなすことで、会社の生産性を向上させることが重要です。価格が下がったのを見て「損した」と考えるのではなくて、使い方を追求することで蓄積された技術を競争力に転化することが必要です。

そういう意味で、ハードからソフトではなく、ユースウェアの時代になったと強調しています。

ENN 3次元スキャナも安くなりました。米ファロー社が500万円台のスキャナを発売し、今年のスパーの世界大会ではライカジオシステムズが200万円台を発表したと聞いています。

河村 ライカの機種は、まだ日本国内では発売されていませんが、エンジニアリングソリューションを提供しているオートデスク社と共同で開発・販売しています。非常に使いやすく、ボタン一つで操作できます。徹底的に安くして、ユーザ層を広げることを狙った製品です。

ENN 3次元スキャニングが注目された当初、計測精度が問題視されました。あくまでもレーザスキャニングで計測するのですから、実測値と同じになるのは難しいと思います。ただ数年前から精度のことを問題視する人はいなくなった。「精度に今一つ問題があっても、使えるところには使おう」という考えに変わってきたと思います。

河村 3次元計測の目的には、「エンジニアリングレート」と「ビューイングレート」があります。

「エンジニアリングレート」は、プラントの設計や建設に使用されるものです。これに対して「ビューイングレート」は、美観や感性に訴えるもので、人間の創造性に関わるものです。ですから、「エンジニアリングレート」と「ビューイングレート」では、評価尺度が異なります。

評価尺度が異なりますから、使用用途に応じて、3次元計測を活用すれば良いと思います。


設計・プレハブ・現場をつなぐディメンジョナルコントロール

ENN 3次元計測には、レーザスキャニングとデジカメで撮影するフォトグラメトリの二つの方法があります。競合するのかとも思いましたが、共存しています。

河村 十数年前までは、3次元計測と言えば、フォトグラメトリが中心でしたが、レーザスキャニングの技術が評価された時に、一回、衰退しました。しかし5~6年前に、デジタル写真の精度が向上し解析ソフトも技術的に進歩しました。これに伴い「フォトグラメトリで行ける」という領域ができて、復活しました。さらにこの1~2年、フォトグラメトリのソフトウェア技術も進歩しました。特に、写真を重ね合わせて、「どこが対応するか」を三角測量で示す「スラム技術」はフォトグラメトリにおける大きな進歩だと思います。かつては、人間が対応していたことが自動化されたのですから、大きなことです。これにより、ターゲット無しで写真データだけで、3次元データが取れるようになりました。

ENN プラントの高経年化や投資額の圧縮の問題があって、今後、プラント案件はブラウンフィールド化すると思います。そうした中で、3次元計測の出番も増えてくると思います。

河村 これからは、ディメンジョナルコントロールが重要になると思います。 既存設備があり、そのデータに基づいて、設計を行い、プレハブを作ります。そのプレハブを現場に持ち込みます。これらの作業中に、それぞれのフェーズで3次元計測を適用し、データがインターネットでつながっていれば、現場での手直しは無くなるはずです。

現状では、設計通りに、機器は仕上がりませんし、建物も設計通りではありません。図面通りにできていません。しかし設計、プレハブ、現場をオンラインでつなぐことで、設計通りにプラントや建物を建設することが可能になります。これが実現できれば、現場の微調整でプラントや建物を建設できます。

プラント設計における3次元計測の未来は、このディメンジョナルコントロールにあると、考えています。

ENN ありがとうございました。



㈱重化学工業通信社
 

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