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 2017.1.19
FETEC、設備管理システム「PLANTIA」の最新バージョンをリリース
ユーザーの声を反映、「使いやすさ」を追求

富士通エンジニアリングテクノロジー(FETEC)は、昨年3月に、日揮が日揮情報システム(J-SYS)の全株式を譲渡したことにより生まれたICTサービスインテグレータだ。そのFETECがこのほど、J-SYSが発売し、わが国で最も普及した設備保全管理システム「PLANTIA」の最新バージョンを発売した。
J-SYS時代から取り組まれたバージョンアップだが、ユーザーへの直接ヒアリングによりもたらされた要望を開発テーマに反映。「使いやすさ」を追求したバージョンに仕上がった。今後は、FETECとともに富士通も営業活動を行い、富士通グループの製品として、さらなる普及にドライブがかかる。

富士通エンジニアリングテクノロジーズ(FETEC)はこのほど、設備保全管理システム「FUJITSU Enterprise Application PLANTIA」の最新バージョン「VOL4L30」を発売した。そして、今回のバージョンアップとともに、富士通も販売を開始。FETECのみならず、富士通グループとして営業活動を展開するようになった。

47件のユーザーにヒアリング

FETECは昨年3月に、日揮が子会社の日揮情報システム(J-SYS)の株式を100%、富士通に譲渡し、再スタートを切った新会社だ。今回の「PLANTIA」のバージョンアップは、FETECとして再スタートを切って初めてのもの。すでに、初バージョンがリリースされてから35年以上が経過した「PLANTIA」だが、わが国で最も普及したCMMS(Computerized Maintenance Management System)だ。自他ともに認める、わが国のCMMSのデファクトスタンダードで、当初は石油・ガスや石油化学産業といったハイドロカーボン系のユーザーに普及したが、進化とともに、加工・組立産業のほか、学校や病院の設備管理にも採用されるようになり、その対象分野は産業界のみならず、社会インフラへも広がった。

そして今回のバージョンアップは、J-SYS時代の2013年10月以来、ほぼ3年ぶりだ。バージョンの呼び方もJ-SYS時代の「4.3」ではなく、富士通流の「VOL4L30」となった。

初バージョンのリリースから35年以上を経た「PLANTIA」だが、前回のバージョンアップまでに、開発側が考えうる機能向上もほぼ出尽くした感があった。

そこでFETECでは、2015年10月から「M-NEXT」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げた。ここでいう「M」には、「未来」「メンテナンス」「マーチャンダイジング」など、「PLANTIA」の事業を取り巻く、様々な頭文字「M」が想定された。

「M-NEXT」の一環として行われたことは、ユーザーの声を聞くこと。実際、47件のユーザーにFETEC(当時はJ-SYS)の社員が出向き、要望をヒアリングして歩いた。

47件には、営業担当者が頻繁にコンタクトしているユーザーもあれば、なかなかコンタクトできていない企業もあった。あまり使用されていないユーザーには、「どうすれば、使えるようになるか」を尋ねた。様々な使用状況のユーザーに耳を傾けることで、開発者の盲点となっている問題点を知ることもできた。「ユーザーとともに進化する」を合言葉に、ヒアリングは精力的に進められた。

このヒアリングを通じてリストアップされた開発されたテーマは28件。誌面の都合上、ここですべてのテーマを紹介することはできないが、その中の一つに「操作の手間を減らしたい」という要望が浮かび上がった。

「操作の手間を減らしたい」という要望は、「クリック数の削減」と言い換えられるが、ユーザーが求める「使いやすさ」を追求するうえで、いくつかの機能向上が浮かび上がった。

そこで、実際に取り入れた機能向上は、①承認依頼内容を画面を切り替えずに参照したい、②案件の新規登録画面などをログイン直後に聞きたい、③よく使う機器の情報にすばやくアクセスしたい、④機器をまたいだ複写をしたいなど。

承認依頼内容を、画面を切り替えずに、見られるようにすることで、確認のための切り替え作業が必要になる。これにより、無駄な作業によるミスの発生を防ぐことが可能になる。

また「よく使う機器の情報にすばやくアクセスしたい」という要望には、アクセスする頻度の高い機器が優先的にリスト化されるようにした。ここでは、検索サイトで頻繁に検索される用語が頻度に応じて浮かび上がってくるのと同様に、アクセスしやすくした。

図1.機器台帳画面
図2.日常点検のグラフデータ画面

一方、カレンダーから行う作業に直接、飛べるようにした。日付欄に実施予定の作業が記されているが、個々の作業方保全カレンダー(星取表)にリンクできるようにすることで、保全周期が分かりやすくなり、作業忘れを無くし、メンテナンスに必要な作業が確実に行えるようにした。

このほか、各データには、自動的に取り出すための口を用意しており、設定変更だけで取り入れられるようになり、カスタマイズがより容易になった。また、タブレット端末にもグラフ表示が可能になり、データのモビリティが格段に改善された。

そして、ユーザーの要望を開発テーマに反映して、それを実現した「VOL4L30」バージョンアップだが、ボタンやデザインを変更し、見た目も変わった。

初バージョンのリリースから35年以上を経た「PLANTIA」だが、富士通傘下のFETECの製品になりつつも、J-SYS時代に培われた製品としてのDNAは残しながら、進化したと言える。

ICT企業の富士通と、プラントエンジニアリングの伝統を持つJ-SYSがうまく融合したバージョンアップが実現されたと言える。

設備管理システムのデファクトスタンダード

そもそも「PLANTIA」は1980年代に、日揮がアルジェリア向けガス処理プラントについて、建設とメンテナンスの両方を受注したのに伴い、そのメンテナンスを効率よく行うために開発された。

その後、J-SYSがCMMSとして、石油・ガスや石油化学産業に売り込み、普及してきた。

ITを活用したメンテナンスソフトは、欧米でも開発され、わが国にも様々な形で入ってきた。1990年代後半から、米国のMRO社、データストリーム社、インダス社などが日本市場に参入してきた。3社ともに、2000年代半ばに、大手のIT企業に買収され、MROはIBM、データストリームはインフォア、そして、インダスは、ファンドにより買収され、ベンティクス社となり、さらにABBが吸収した。

この他にも、わが国では、ERPベンダーのSAPやオラクルがEAM(企業資産管理)ソフトを発売したが、欧米系の設備管理システムの日本国内でそれほど普及しなかった。理由は、日本と欧米のメンテナンス業務のフローの違いにあった。欧米系のメンテナンスはワークオーダー通りに現場が動くという形で進められるが、わが国のメンテナンスの現場は、計画段階から仕事を始める。このため、欧米系のEAMシステムを導入しても、業務フローに合わなかった。このことが普及しなかった最大の要因だ。その中で、「PLANTIA」は、わが国の設備管理システムの「デファクトスタンダード」と呼ばれるところまで普及した。

35年以上に渡り普及してきた「PLANTIA」だが、これまでの納入実績は180社360サイト。

その特徴は、①保全作業員の使いやすさを重視したインタフェース設計、②保全履歴情報を活用し、生産設備の計画的な保全をサポートできる、③写真や図版などをデータベースに登録し、保全業務をビジュアル管理、など。

設備の稼働場所、機器の種類、詳細仕様などの設備情報を直感的に把握できる画面設計となっており、誰でも簡単に保全情報の登録、検索を行うことができる。同時に、スマートデバイスへの対応などにより、保全現場でのデータ入力や閲覧といったユーザビリティを高めることで、より効率的な保全業務を支援できる。

またデータベースに蓄積された膨大な保全履歴情報を活用し、保全周期の見直しや業務改善に役立てることができる。過去の修理実績と保全周期に基づいた星取表の作成や実施計画の立案、コスト管理も行うことができ、中長期に渡る保全業務をサポートする。

さらに現場写真や図面、仕様書などのドキュメント類を紐づけて、データベースに登録できるほか、日々の点検データをグラフ表示することで、リアルタイムに状況を把握でき、ToDo画面へ警告表示をして精密点検を促す仕組みも装備している。

同時に、エクセルを介して、過去の点検データや個人管理されていた点検データを一括登録できる機能を持ち、データ資産を有効に活用できる。

今回のバージョンアップ「VOL4L30」は、J-SYS時代の「M-MEXT」プロジェクトがベースになっているが、次のバージョンアップはFETECによって実施される。「PLANTIA」のさらなる進化はFETECの手に委ねられることになる。



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