ベントレー・システムズCPO ブッピンダ・シン 氏
クラウド時代にマッチしたインターオペラビリティ
ユーザーニーズを反映したデジタル・ワークフロー作りに軸足 2016.11.18 |
ベントレー・システムズは長年に渡り、インターオペラビリティ(相互互換性)を重視したソリューション開発に取り組んできた。その取組は現在のようなクラウドの時代になって、結実しようとしている。
インターオペラビリティは、クラウド環境で「CONNECT」を実現するための不可欠な要素だ。ユーザーニーズを製品に反映する立場にあるCPOのブッピンダ・シン氏に聞いた。
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ブッピンダ・シン 氏
(Bhuppinder Singh)
1994年、ベントレー・システムズ入社。
南アジア地域の営業、製品プラットフォーム
の開発などを手掛け、今年1月にCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)に就任。 |
ENN : |
現在、CPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)の立場にありますが、
CPOの役割は何ですか。 |
ブッピンダ : |
CPOのミッションは、ユーザーの声を聞いて、ソフトウェアの開発に反映させることです。「どのようなデバイスを活用するか」「製品の機能をどこまでにするか」そのうえで、これらの製品を商品として、いかに市場にデリバリーするかを検討します。まさしく、ユーザーニーズを商品に反映することに責任を持つことが役割です。
CPOには今年1月1日付で就任しましたが、同時に4つのアドバンスメントチームを発足しました。
第1のチームは、「デザイン・モデリング」で、意匠、構造、機械など、3次元モデリングで表現するソリューションを担当します。
第2のチームは、「アナリシス・デベロップメント」です。このチームは、構造・応力解析など、すべてのアナリシスのポートフォリオを担当します。
第3のチームは、「プロジェクト・デリバリー」で、プロジェクトコラボレーションを担当します。製品では「ProjectWise」などが対象になります。
第4のチームは、「アセット・パフォーマンス」で、ここでは、資産の有効活用を提供するソリューションを担当します。「AssetWise」はこのチームが扱うソリューションになります。
社内のプロダクトグループを4つの分野で組織化しました。
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インターオペラビリティが可能にしたソリューション開発 |
ENN : |
「The Year in Infrastructure 2016(YII2016)」を通じて、ベントレー・システムズが「CONNECT(つながること)」「データ共有」そして「データマネジメント」を重視していると感じました。実際のところ、何を重視されているのですか。 |
ブッピンダ : |
重要なことは、ユーザーのデジタル・ワークフローをサポートすることです。日立製作所や三菱重工業でも、プラントを設計・建設していますが、そこで最も重要なことはデジタルでワークフローを作ることです。そのために重要なことは、デジタル化することで情報を失ってはならないということです。
建設する時、あるいは検査をする時に、デジタル化できていなければ、それは情報の喪失を意味します。そこで、当社にとって、重要なことはワークフローを施設のライフサイクルに渡ってデジタル化することです。これを実現するために現在、不可欠な要素になっているのが、クラウド環境です。
建設現場を想定した場合、最近は写真を撮影するのに、タブレットやスマートフォンを使うことが増えています。この方法で撮影されると、画像を容易にデジタルに乗せることができます。そこで、クラウド環境でデータマネジメントを行えば、データは価値の高い物になります。
そして、これらのデータを内部でつなぐことができれば、データの価値はより高い物になります。こうした中で、重要な要素がインターオペラビリティ(相互互換性)です。インターオペラビリティにより、データの価値を高め、データのオープン化が可能になります。
当社がデータについて重視しているのは、①クオリティ(品質)、②コンプリートネス(完全性)、③タイムリーネス、④インターオペラビリティ、の4つの要素です。これら4つの要素をつなげた時、われわれは最もエキサイティングになります。そして、ダッシュボードを使って、データを取得することができれば、それにより、より良い意思決定が可能になります。
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ENN : |
他社と積極的に提携されていますが、その狙いは何ですか。 |
ブッピンダ : |
ユーザーがデジタル化に向かう時、重要なことは、ハードウェアやテクノロジーをシェアすることです。
例えば、「YII2016」の期間中に、日本のトプコン・ポジショニング・グループとの提携を発表しましたが、トプコンの3次元計測技術は、設計から建設へとワークフローをデジタル化するのに役立ちます。ベントレーとトプコンが互いにクラウド環境を持ち、双方の技術を融合して活用できれば、インターオペラビリティによりユーザーのサポートが可能になります。
すでに、マイクロソフト社と提携していますが、同社は、ベントレーにとってのテクノロジー・パートナーですが、クラウドを立ち上げる時に、マイクロソフトの「Azure」プラットフォームを活用しました。このプラットフォームを活用することで、マイクロソフトのパーソナルアシスタントである「Cortana」も利用できます。
メーカーにはユーザーが持つワークフローがありますから、そのワークフローとの連携を強化することを狙います。またマイクロソフトはテクノロジー・パートナーです。ベントレーの戦略提携はこの2種類です。 |
ENN : |
IoTへの対応については、いかがですか。 |
ブッピンダ : |
3つの面で対応しています。第1は、ET(エンジニアリング・テクノロジー)です。ベントレーの「OpenPlant」「AECOSIM」といったソリューションはいずれもETと呼ばれるものです。第2はITで、これはビジネスシステムです。そして第3は、OT(オペレーション・テクノロジー)です。そしてITとOTを統合すると、ETになります。これらの要素の中間にベントレーのデジタル・エンジニアリング・モデルがありますが、これらでライフサイクルにフォーカスしています。
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ENN : |
IoTの取組で、何か問題に遭遇していませんか。 |
ブッピンダ : |
ビッグデータ・プロブレムがあります。企業にはいくつもの成功プロジェクトがありますが、その一方で失敗プロジェクトもあります。データは失敗プロジェクトからも得られますが、このデータが有用であることはありません。これを「ビッグ・データ・プロブレム」と呼んでいます。この問題の解決には現在、マイクロソフトと取り組んでいます。 |
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