インターグラフPP&M、SDAソリューションの再構成に着手
「2016 USER CNFERENCE」を開催 2016.9.12 |
9月8・9日の2日間、インターグラフPP&Mは、パシフィコ横浜で「2016 USER CNFERENCE」を開催した。昨年のカンファランスでは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)への参入を発表し、話題を集めたが、今年はSDA(スマート・デジタル・アセット)の開発への取組を明らかにした。インターグラフPP&Mは、インフォメーションマネジメントをBIM、SDAへと幅広く展開する計画だ。 |
去る9月8・9日の2日間、インターグラフ・プロセス・パワー&マリン (インターグラフPP&M)は、パシフィコ横浜で、「2016 USER CNFERENCE」を開催した。
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2016 USER CONFERENCE |
これまで、PDSや「Smart Plant 3D」といった3次元CADでプラント・エンジニアリング業界に浸透してきたインターグラフPP&Mだが、最近の業容はインフォメーションマネジメントのソリューションプロバイダーといった方が的確だ。
2014年半ばから始まった原油価格の値下がりに伴い、世界のEPCコントラクターの多くが業績を悪化させている。
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フランツ・クフナー氏 |
これに伴い、アジア大洋州地区担当の上級副社長、フランツ・クフナー氏は「大型の設備投資は減ったが、オーナーオペレーターは既存設備を改良して、いかに利益を上げるかを考えるようになった。EPCコントラクターもオペレーターの要望に対応しながら、プラントの改良を提案している」と、油価下落に伴う市場環境の変化について説明する。
この状況変化に伴い、インターグラフPP&Mの業績についても「影響がないと言えば嘘になるが、オーナーオペレーターの開拓を進めている」と、新たな局面への対応を強調した。
オイル&ガスやマイニングのオーナーオペレーター多くは、既存設備を効率化するという傾向にある。そこで、医薬品、食品など、過去にも挑戦したものの、成果が得られなかった分野の開拓にも取り組んでいる。
クフナー氏は「以前よりも、当社のソリューションは確実に充実している。新規顧客を開拓できる可能性はある」と期待を込める。また火力発電プラントなどのインフラ関連の投資は堅調で、「プロジェクトが進行しており、この分野のEPCコントラクターは忙しい」と、事業分野によりコントラクターの持つ環境が違うと指摘する。
クフナー氏が担当するアジア大洋州地域の状況も世界の市場環境と同様だ。「外向きに新しいプロジェクトを追いかけるのではなく、内向きに既存の設備をいかにうまく使うかが課題になっている」と言う。
大手の顧客の状況は厳しいが、インターグラフPP&Mが持つ中堅ユーザー向けの「CADWorx」の実績は確実に上向いている。クフナー氏も「日本市場でも売れているが、アジア大洋州地域でも好調」と言う。特に、日本国内では設計サブコンでよく売れている。また日本市場向けの「EyeCAD」についても堅調に推移している。
油価下落に伴い、インターグラフPP&Mの対象とする市場環境は厳しい状況にあるが、影響が出ているのは、大規模プロジェクトに関わる、オーナーオペレーターやEPCコントラクターだ。中小規模のプロジェクトに関わるユーザー向けの業績は堅調に推移している。
インターグラフPP&Mの持つソリューションを活かせる分野を開拓して、売上の確保に取り組んでいるところだ。
市場環境は厳しいが、インターグラフPP&Mは、設備のライフサイクルを視野に入れた、製品のラインナップの見直しを行っている。
クフナー氏は「現在、プラントライフサイクルの中に、20くらいのインフォメーションマネジメントのソリューションがラインナップされている」と言う。20のソリューションは、ライフサイクルの様々な局面で使用されるが、この製品群を統合して、今後は6つくらいのモジュールを、スマート・デジタル・アセット(SDA)という製品に再構成して発売する計画だ。
現在、SDAの製品化は鋭意進められているが、その一つとして開発されているのが「Smart Collaboration」だ。これは、オーナーオペレーター、EPCコントラクター、機器サプライヤーが情報を共有するソリューションだ。石油メジャーの要望に応じて、開発された製品だが、来年の第3四半期にはリリースされる。
一方、マテリアルマネジメント(資材管理)ソリューションについては、2015年9月に買収により獲得したプロジェクトコントロールソフトの「Ecosys」と「SmartPlant
Materials」を統合して、スケジュールとコストを扱えるようにする計画だ。現在、顧客の要望を聞きながら、開発のためのロードマップを作っているところだが、二つのソリューションをつなぐことで、資材などのマテリアルとスケジュールの双方を扱うことができる。
マテリアルとスケジュールを一元的に管理することで、プロジェクトの可視化、効率性の向上が図られる。
一方、インターグラフPP&Mは今年6月にフィンランドのNESTIXを買収することで合意したが、NESTIXはファブリケーションのインタフェースを高めるソフトを持っている。現在、両社はマレーシアで「Intergraph
Smart Yard」を使用した統合化製品計画/実行システムがパイプスプール工場をより効率よく管理するうえで、どのように役立つか調査中だ。
昨年の「2015 USER CONFERENCE」で、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)への参入を打ち上げたインターグラフPP&Mだが、今年6月、インターグラフPP&Mの親会社である、スウェーデンのヘキサゴンが「SMART
Build」をリリースした。
「Smart Build」による、BIMへの参入について、クフナー氏は「ヘキサゴングループでは、グループ企業のライカがBIMに投資するなど、活発な事業を展開している。グループの事業部も協力している。参入した理由は、ヘキサゴンの方針」と、参入した経緯を説明する。
ただ、インターグラフPP&Mは「BIMに参入した」と言っても、先行して参入している、オートデスクやベントレーシステムズと競合するわけではない。3次元モデルには参入せず、インフォメーションマネジメントに特化して取り組んでいる。
最近は、建設分野でも空港建設などのインフラ投資では大型プロジェクトが具体化している。これら大型プロジェクトの遂行や竣工後の維持管理を効率よく行うことを「Smart Build」は目的としている。クフナー氏も「大型で複雑なプロジェクトをライフサイクルで対応することを狙っている。ヘキサゴン全体として、どのような風を吹き込めるかを見届けたい」と言う。
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ヘキサゴン「Smart Build」はプロジェクトのライフサイクルに寄与 |
実際、「Smart Build」は、ヘキサゴンが長年に渡り、世界中で実施されてきた巨大で複雑なプロジェクトで発揮したリーダーシップと技術力を基に開発されており、建設プロジェクトにおける、リアルタイムな状況提示や情報管理により、建設プロジェクトの計画と実施の統合化を支援する。
このソリューションを使用することで、建設企業の経営者は、進捗や変更、現場作業員の状況について、視覚的に確認することができ、作業員は日々現場で必要となる最新の関連情報にリアルタイムで簡単にアクセスできる。今後は、リリースされた製品について、ユーザーから寄せられるフィードバックを見ながら、必要に応じて、改良する。
今後、インターグラフPP&Mは、リリースした「Smart Build」の販売に力を入れるが、クラウドによるソリューションの提供にも取り組む。またこれまで通り、企業の買収も継続して行う。
また最近になって注目されるIoT(インターネット・オブ・シングス)についても、プラットフォーム「Predix」の市場投入で先行するGEとは協業について話を始めている。ユーザーの動向も参考にしながら、IoTにも取り組む。 |
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