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「CONNECT Edition」によるクラウド環境で機能向上図るベントレー
鋼構造・配管解析の「CONNECT Edition」で画期的新機能
  2016.7.5

去る6月21日、ベントレーシステムズは横浜ベイホテル東急で「鋼構造と配管解析CONNECTION セミナー」を開催した。ここでは、鋼構造と解析ソフトのプロダクトマネジャーによって、ベントレーが目下、力を入れているクラウド環境を活用したソリューション「CONNECT Edition」が紹介された。
鋼構造解析ソリューションでは、ジェネリックアルゴリズム、また配管解析では「ベントレー・コンフィギュレーション・セッティング」などの新機能が紹介された。会場を満員にした来場者もセミナーには真剣に耳を傾けた。

 
  セミナー風景
ベントレーシステムズは昨年11月にロンドンで開催された「The Year in Infrastructure」で「CONNECT Edition」のコンセプトを発表したが、
今年は各ソリューションで「CONNECT Edition」の発売を本格的に始めた。

「CONNECT Edition」は、マイクロソフトのクラウドサービス「Azure」環境で提供される新ソリューションで、クラウド環境でソリューションを提供することにより、各ソフトに新たな機能が加わり、従来は不可能だったソリューションの提供が可能になる。

「鋼構造・配管設計解析CONNECTIONセミナー」でも、「鋼構造解析」の「STAAD PRO」と「配管設計解析」の「AutoPIPE」の新機能が紹介された。


鋼構造解析でジェネリックアルゴリズムを実現

鋼構造解析ソフト「STAAD. Pro」は、「CONNECT Edition」で、ジェネリックアルゴリズムを取り入れた。ジェネリックアルゴリズムは日本語で「遺伝的手法」と言われるものだ。ソリューションには、良いソリューションと悪いソリューションがあるが、良いソリューションを組み合わせることで最適化を行うものだ。

 ジェネリックアルゴリズムのイメージ

 
  カルロス・アグエロ 氏
このアルゴリズムを解析の中に取り入れている。シニアプロダクトマネジャーのカルロス・アグエラ氏は「これまで、解析すれば、その結果を捨てていた。これを繰り返していたが、捨てた物の中から最適な物を選び出そうとしている」と言う。

もちろん、これを実際に行うには、何千ケースという膨大な解析結果を検証する必要がある。その中から、必要のない物をどんどん間引いて、優れた物だけを残していく。それを選択するための観点は、コストや強度など様々だが、それぞれ
の観点で良い物を組み合わせることで最適化を実現する。

ジェネリックアルゴリズムは良い遺伝子を残し、その遺伝子により、良い種族を残すことを目的としているものだ。この手法を設計で活用すれば、最適な結果につながる。これをクラウド環境を活用して、何千ケース、何万ケースと行う。これがまさしく、ジェネリックアルゴリズムの手法だ。

クラウド環境を活用することで、KPI(キー・パフォーマンス・インディケータ:重要業績評価指標)も活用できる。

具体的には、過去のプロジェクトデータを残しておいて、過去のプロジェクトがどのように良いパフォーマンスを記録したか、検討できる。またパフォーマンスの悪かったプロジェクトについては、KPIを活用して、プロジェクトの評価を行い、パフォーマンスが悪化した原因を探ることも可能だ。

また「CONNECT Edition」では、プロジェクトの進捗状況をエンジニアだけではなく、マネジャーもクラウド環境で確認することができる。

さらに「CONNECT Edition」を活用することで、解析データを中間ファイル「ISM(Integrated Structurel Model)」を介して、CADにトランスファーすることもできる。解析データをCADにトランスファーできれば、設計に解析情報を反映しやすくなる。

そして、ISMを「ストラクチャル『imodel』」に変換して、クラウド上に置いておくと、モバイル上でデータの閲覧が可能になる。このほか、コメントを入れることや、朱入れも可能になり、使い勝手がよくなる。

「CONNECT」により提供されるクラウド環境により、ビッグデータを扱うことが可能になる。その環境により、ジェネリックアルゴリズムによる最適化を可能にし、KPIの活用により、プロジェクトのパフォーマンスを的確に知ることができる。


配管解析では、「ベントレー・クラウド・コンフィギュレーション・セッ
ティング」が可能に

配管解析ソフトの「AutoPIPE」もクラウド環境で、これまでに無い機能を活用できる。

ベントレーでは、「AutoPIPE」を使うときに、「どの設計基準を使うか」「どういうライブラリを活用するか」が重要になるが、そのために「ベントレー・クラウド・コンフィギュレーション・セッティング」が推奨されている。

これにより、データをクラウドに上げることで、プロジェクトの関係者がすべて、間違いなく、同じ設定(セッティング)を使用できる。この設定には、ヒトが介在しないため、エラーが起こらない。このことは非常に重要で、生産性の向上につながる。

もう一つ「ベントレー・カタログ・サービス」も活用できる。この機能は、バルブなど配管に使用する機器やパーツなどのカタログ情報で、配管に使用するバルブの仕様プラントモデル(3次元CADデータ)のデータ共有ができる。これらのデータをクラウド上でプロジェクト関係者と共有すれば、効率よく解析モデルができる。

「AutoPIPE」においても、KPIが活用できる。KPIにより、パイプ、パイプサポート、エルボーなどをすべて計算し、類似プロジェクトがあれば、「パイプサポートの数が20%多い」とか「少ない」といったパフォーマンス上の評価が可能になる。

KPIにより、非常に似たプロジェクトがあった時に、仮に、今回のプロジェクトでは1,000個のパイプサポートが必要だったとする。ところが以前、類似のプロジェクトで800個で足りたケースがあった場合、今回のプロジェクトにおけるやり方に問題があると論理的に知ることができる。

 KPIによりプロジェクトを比較できる

「CONNECT Edition」により、「AutoPIPE」では、「ベントレー・クラウド・コンフィギュレーション・セッティング」や「ベントレー・カタログ・サービス」をサポートし、KPIによるパフォーマンスの判断が可能になる。クラウド環境の活用で、その可能性は広がっている。

 
  ルーク・アンドリュー 氏
次の開発テーマについて、プロダクトマネジャーのルーク・アンドリュー氏は「疲労解析、原子力におけるサポートの強化、そして洋上のパイプのサポート強化が、次の開発の3テーマだ」と言う。

現在のように、原油価格が低水準で推移している時期は、洋上のパイプサポートのニーズが増加することはないが、アンドリュー氏は「そのうちに戻ってくる」と言う。

アンドリュー氏は2014年半ばから始まった原油安の影響について「大きな影響を与えている。その影響は、エンジニアリング企業やプラントのオーナー企業にも影響している。これをきっかけに、既存のプラントをいかに延命させるかへの関心が非常に高まっている」と指摘する。

この状況は一見、「AutoPIPE」には関係がないように見える。しかしアンドリュー氏は「この状況下、多くの企業が、どのようにして設計の手順、プロセスを効率化できるかについて模索している」と指摘する。その結果、「『AutoPIPE』についても、他のソフトとのデータ交換を人手を使わずにいかに行うかに関心が集まる傾向にある」と言う。

「CONNECT Edition」によりクラウド環境を得たことで、「AutoPIPE」も機能が向上した。一連の機能向上で生産性を向上させるのは、ユーザーの仕事と言えるだろう。







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