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アスペンテクノロジー社 社長兼CEO アントニオ・ピエトリ 氏
「資産運用において、すべてのワークプロセス機能を満たすための
ソリューションを過去、20~25年間に渡って提供しています」
2016.6.3
石油・石油化学産業向けにプロセスシミュレータなどのソリューションを提供するアスペンテクノロジー(アスペンテック)。ポートフォリオの中で多くを占めるのは、既存のプラントのパフォーマンスを改善するソリューション。
このため、2014年半ば以降の原油価格下落の影響も比較的に軽微だ。そのアスペンテックが今後の事業のとして打ち出してきたのがプラントを有効に活用する資産運用の管理だ。新ビジネスを打ち出した社長兼CEOのアントニオ・ピエトリ氏に聞いた。
Antonio Pietri(アントニオ・ピエトリ)氏
1996年、アスペンテックによるセットポイント社の買収とともに、入社。
入社後は、統合ソリューションの導入を主に担当、2002年にビジネスコンサルティング副社長としてシンガポールに赴任し、アジア大洋州地域上席副社長兼マネージングダイレクター・リージョナルオペレーションを担当。
現在、アスペンテック社長兼CEO。
原油価格値下がりの影響は軽微
ENN
:
2014年の半ばから、原油価格が下落しました。石油・石油化学産業向けにソリューションをお持ちの、アスペンテック社も影響を受けたのではないでしょうか。
アントニオ
:
たしかに、原油価格の値下がりに伴い、新規のプラント建設は減少しました。また、関連企業の中には大量の人員解雇を実施したところもあります。
しかし、当社は既存のプラントのパフォーマンスを改善するソリューションを持っていますから、売上高については、大きな影響を受けていません。
この10年間で新設されたプラントの件数と、既存のプラントの件数を比べれば、既存のプラントの方が多いわけですから、今後も、設計・運用に力を入れます。
同時に、モデリングソフトウェアを使った資産の最適化に加え、メンテナンス・ソリューションを提供することによって、お客様に付加価値を提供できるようにしたいと考えています。
ENN
:
最近の原油価格の値下がりの一因には、北米におけるシェールオイルやシェールガスの産出があると思いますが、シェール関連で御社の業績も伸びたのではないでしょうか。
アントニオ
:
当社のソリューションは、陸上のプラントで使用されるもので、石油の分離に主に使われます。たしかに、シェールオイルやシェールガスにより売上高は若干増加しましたが、それほど大きく伸びたわけではありません。
仮に、石油のサプライチェーンを上流・中流・下流と分けると、シェール関連は中流に位置づけられます。しかし、その構成比は5%にすぎません。
ですから、売上高が増加したといっても増収幅はわずかです。
ENN
:
地域的な状況はいかがですか。
アントニオ
:
この5年間で、最も成長している市場はアジア・パシフィック地域です。今後も、この状況は続くと思いますが、その成長を牽引しているのが中国、
次いでインドです。
また日本も成長している市場の一つです。その理由は二つあります。
一つは、バルクケミカルを対象にしてきた化学メーカーがスペシャリティケミカルに替わってきています。
もう一つは、日本のEPCカンパニーがLNGプラントに特化したことです。他の国のEPCカンパニーは、原油価格の値下がりの影響を大きく受けましたが、日本のEPCカンパニーはLNGに特化していたため、影響が軽微だったと見ています。
ENN
:
最近の事業環境をどのように御覧になっていますか。
アントニオ
:
最近の5~10年間で、業界のダイナミクスが非常に変わってきています。
20~30年前、ソリューション業界には、グローバルという考えはあまり無く、地域に特化したビジネスでした。それが現在では、エネルギー価格の変動に伴い、ボラティリティが高まりました。加えて、気候変動への対応、環境規制、安全性への規制も強化されました。
こうした環境変化もあって、最近では、20年前にオプションでしかなかった資産の最適化が、ビジネスにおいても必須のものになりました。一連の環境変化に伴い、企業が安全性を担保することが難しくなっていますが、同時に大切なことにもなっています。
そしてこの10~20年間、それに対して、資産投資に対する強化、オペレーションの最適化、組織の最適化を図りながら対応してきました。この対応に伴い、当社のソリューションの導入により、コストメリットを生み出しています。
また最近の変化に伴い、お客様の求めるものが変わってきています。資産を維持するためには、統合的な課題に対処し、継続的なイノベーション、積極的な人材育成を含む開発が必要です。
元来、当社は資産の設計・運用・最適化について、非常に強いものを持っていました。そして、その延長線上として、自然にこの資産の保守というソリューションもお客様に提供できるようになりました。
ENN
:
資産の保守に対応するソリューションをお持ちなのですか。
アントニオ
:
当社は、資産運用において、すべてのワークプロセス機能を満たすためのソリューションを過去、20~25年間に渡って提供しています。
しかし資産の保守という観点において、これらのワークプロセス機能を満たすために「AspenOne Maintenance&Analytics」という新しいソリューションを発表しました。
従来、「AspenOne」で提供していたプラントを立ち上げ、運用するために使っていた予知能力のナレッジとデータアナリティクスの解析能力を併せて、予知的解析だけではなく、処方的解析も行えるソリューションを準備しています。
また解析については、単なる解析ではなく、ビッグデータの解析に併せて、この業界で長年に渡って培った業務モデルを持ち合わせています。
そして、この資産最適化には、組織がエクセレントであることが不可欠です。それは企業の中にある知見のトランスファー、ナレッジワークの自動化、ベストプラクティスの成熟度モデルに加え、企業の方々のトレーニングが重要です。
当社は35年間、この業界で、イノベーションを提供しており、資産最適化においては、お客様にとっての、最適なポジションにいると考えています。そして、それは、ナレッジワークの自動化をベースに成り立っています。
一括した資産管理ソリューションを提供
ENN
:
資産を最適化するソリューションには、すでにEAM(エンタープライズ・アセット・マネジメント)システムが普及していますが。EAMシステムとの違いは何ですか。
アントニオ
:
たしかに、資産管理という点では、EAMシステムがあります。しかしこれらのシステムの多くは一つにまとまっていません。当社が提供するソリューションのメリットは、それを一社で統括して提供できることです。この点が新しいところです。
ENN
:
ソリューションはプロセス産業向けに提供されるのですか。またプロセス産業のプラントは、高温高圧下で稼動します。どのような点が特徴になるのでしょうか。
アントニオ
:
プロセス産業を対象にソリューションを提供します。
その特徴は、アナリティクスの領域からソリューションを提供できることです。他社のソリューションには、一つ一つ異なる領域をカバーするものもありますが、当社のソリューションは、それを統括したものとして提供すると同時に、今現在は、お客様がそれらの解析結果を受けて、それに対応しています。
当社はそれを事前に予知しながら、積極的に自主的な保守活動ができるようなソリューションを提供します。それが差別化だと考えています。自主的に処方することで、結果的に、保守・メンテナンスの周期を減らし、コストダウンにつながると考えています。
プラントの設計を手掛けている方々が資産の保守、信頼性の観点を取り込むことができるわけですから、メンテナンス周期を延長させるための設計改善がその時点から行えることになります。そのための施策を設計段階から取ることが、事前に手を打つことになることです。
ENN
:
ありがとうございました。
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