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j5 インターナショナル・テクニカルダイレクター Nicholas Hurley 氏
プラント運転管理システムで躍進
新バージョンでは汎用性高め、市場の拡大を狙う
2015.10.10
プラント運転管理システムとして、わが国でも普及し始めた「j5」。かつては、オペレータの属人的な部分に委ねられてきたプラント・オペレーションだが、「j5」には「申し送り帳」などの独自機能が搭載され、オペレータの負担は大幅に軽減された。そんな効果が受け入れられたのが、普及の要因だ。
これまで、誰も目を付けなかった、プラント・オペレーションにフォーカスして、どのようにして、ビジネスが構築されてきたのか、j5インターナショナル社の創業者で、テクニカルダイレクターを務める、Nicholas Hurley氏に聞いた。
Nicholan Hurley(ニコラス・ハーレイ)氏
大学で電気工学を学んだ後、マルチプロセッサ・コンピュータ、プラント運転システムの開発に従事。これまでに、プラント運転管理システムの構築のためのプロジェクトでは、全世界で1,000件以上に関わった経験を持つ。産業界のニーズを設計に反映する能力が、産業界の多くのプロジェクトで、そのニーズを設計に落とし込むことを可能にした。
鉱山プロジェクトでの顧客の要望がきっかけ
ENN
:
「j5」は、プラント運転管理システムとして、日本国内でも、高く評価されています。開発の経緯から聞かせてください。
Nicholas
:
きっかけは、1987年です。当時、私はSCADAをベースとしたソフトウェア開発サービスを行っていたのですが、その時に、オーストラリアの鉱山プロジェクトで「現場のオペレータが何をしているか分からないので、それを分かるアプリケーションを作って欲しい」という、お客様からの要望がありました。それに応えるために、鉱山プロジェクトで、マネジャー、オペレータ、テクニシャンの3人が情報交換可能なソフトを開発しました。これが最初です。
ENN
:
その時に、現在のように高い評価を得て、世界的に広がると予想されましたか。
Nicholas
:
それまで、SCADAが扱う領域は、コントロールサイドが中心で、こうした現場を扱うソフトがありませんでした。どこにもないソフトなので「成長するかもしれない」とは、おぼろげに感じました。しかし、「j5」の重要な機能である「作業指示」「申し送り帳」「運転ログ」「ダッシュボード」などの機能が大きなビジネスになるとは想像していませんでした。
またソフトウェアビジネスの多くの領域には、SAPのような大手のベンダーがいますが、この運転管理ソフトの分野には、そうしたプレーヤーはいません。われわれ自身で基盤を作成するところから、手掛けていますが、このことも成功する要因になったと思います。
ENN
:
現場作業に則したソフトという点が受け入れられたということですね。
Nicholas
:
その通りです。現場のオペレータは、非常に数が多い。にもかかわらず、かつては現場のオペレータの作業を軽減できるようなソフトウェアはありませんでした。また、お客様も装置に投資をしても、オペレータにはあまりお金をかけませんでした。しかし、オペレータの業務が自動化できるようになったので、急速に広まったのだと思います。
ENN
:
「j5」と名付けた理由は、何ですか。
Nicholas
:
元々、南アフリカのセント・ジェームスという町で当社は創業しました。社名も「セントジェームス・ソフトウェア」でした。このため、当社の製品の頭には必ず「j」の文字を付けていました。第5世代のソリューションという意味で「j5」と名付けました。
最新バージョンで狙った汎用性
ENN
:
最近、最新バージョン「j5 2015」を発売されましたが、バージョンアップの内容は、どのようなものですか。
Nicholas
:
これまで、ビジネスの規模が小さかったのですが、今回のバージョンアップでは、ビジネスの拡大を意識しました。
これまで、洋服屋で言えば、一着ずつ、仕立てるようにソフトウェアを開発してきました。この方法では、ビジネスが拡大できないこともあって、バージョンアップでは、まず、プラットフォームを作成して、多くの方がソフトウェアを構築できる環境を作りました。
このプラットフォームを使って、SIerがエンドユーザー向けに開発を行い、販売する。この方法による、ビジネスの拡大を狙いました。数多く販売することを狙ったのですが、「j5 2015」は、当初の目的の70%を達成しました。ある程度、プラットフォームが完成して、ツールのセットもできましたから、2016年には、完成度を100%にまで、引き上げようと考えています。
ENN
:
そうすると、今後の販売は、アプリケーションベンダーや代理店を通じて行うということですね。
Nicholas
:
基本的に、販売はサードパーティーに任せます。理由は、エンドユーザーに近い所にいるのは、アプリケーションベンダーなどのサードパーティーだからです。エンドユーザーのそばにいれば、そのニーズも取り込みやすいはずです。
ただ、全世界にまたがる企業や周到の大手企業から引き合いがあったような場合は、サードパーティーに任せるわけにもいかないので、当社が直接、対応します。お客様のニーズの難易度に応じて、柔軟に対応したいと考えています。
ENN
:
サードパーティーを活用して、成功した事例には、どんな物がありますか。
Nicholas
:
アルゼンチンの国営石油会社YPFの案件を最近、現地のサードパーティーのパートナーが受注しました。ソフトウェアだけで数億円の規模ですから、そうとうに大きな案件です。受注できた最大の要因は、当社のパートナーがエンドユーザーの要望を聞き入れて、的確な対応ができたからです。
ENN
:
どんな企業がパートナーになっているのですか。
Nicholas
:
グローバルパートナーには、IBM、アクセンチュア、シュナイダーがありますが、日本では、千代田システムテクノロジーズ、ダイセック、日揮情報システム、三菱化学エンジニアリングです。
次期バージョンアップでは、モビリティを意識
ENN
:
今後、どのようなことを開発テーマにされますか。
Nicholas
:
基本的に年1回、バージョンアップを行うことにしています。来年は4月に予定しています。
今年の「j5 2015」の完成度は70%程度ですが、来年のバージョンアップでは、100%の完成度を達成して、より簡単に使えるプラットフォームにしたいと思います。これにより、多くの方が開発できるようにします。
次の段階として考えているのが、モビリティです。モバイル環境の所には、様々なニーズがあります。ただ、モバイル端末は、更新周期が非常に速いですから、その対応が課題になります。ただ、SAPが2011年に買収したサイクロン社のソフトを活用すれば、どんな端末にでも、対応できます。
もう一つ、「j5」の特徴の一つである、「ダッシュボード」についても、改良します。ここで求められるのは、不特定多数の方にも意味のある情報を見せることです。ここでは、一つ一つのアプリケーションで見えるような仕組みを作ろうと考えています。
ENN
:
開発には、ユーザーニーズを的確に把握する必要がありますが、そのニーズに関する情報はどのように集められているのですか。
Nicholas
:
パソコンでも、ラップトップでも、コンピュータ上の要求については、これまでの長い経験の中で、ある程度は分かっています。
また、実際の仕事を通じて、お客様が、どのソフトウェアをどのようにつなげたいかを知ることができます。こうしたニーズを確実に具体化していますが、こうした経験がお客様のニーズの把握につながります。
さらに、こちらでも、「モバイルのアイデアを持って行けば、商談を有利に進められるのではないか」と考えれば、それを実現するようにしています。
ENN
:
開発拠点はどこにお持ちですか。
Nicholas
:
開発の中心は南アフリカのケープタウンですが、カナダ、オーストラリアにも開発拠点があります。
ただ最近は、インターネットがつながれば、どこでも仕事ができます。色々な所で開発が行われています。
ENN
:
ありがとうございました。
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