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 シュナイダー・エレクトリック 上級副社長 Ravi Gopinath 氏
 プロセス産業での優位性を強化
 今後の開発では、モバイル端末への対応を重視
         2015.9.25

2013年にインベンシスを買収したシュナイダー・エレクトリック社。制御システムとともに、プロセスシミュレータを持つインベンシスを買収することで、プロセス産業と従来以上に密な関係ができた。
プロセス産業において、積極・果敢な取組を展開するシュナイダー・エレクトリック社のソフトウェア部門のトップであるRavi Gopinath 氏に聞いた。



Ravi Gopinath (ラビ・ゴピナス) 氏
ボンベイ工科大学でケミカルエンジニアの修士号を取得後、ニューヨークのレンセラー工科大学で高度制御と最適化によりケミカルエンジニアリングの博士号を取得。

1994年~2006年、インドのTata Consultancy Services に勤務後、2006年PLM and Engineering Services 傘下のGeometric Limited にマネージング・ダイレクター兼CEOとして入社、2009年まで勤務。

2009年10月にインベンシスに入社、2011年4月、ソフトウェアビジネスの最高責任者に就任。2014年4月、ソフトウェア事業部の上級副社長に就任。


E N N : 2013年にインベンシスを買収されましたが、現在、ソフトウェア部門でどのような製品をお持ちですか。

Gopinath : 石油のアップストリーム、石油精製など、資本集約的な業界をはじめ、食品や飲料などのプラントのライフサイクルを対象とした幅広い製品群を持っています。

あるプラントのライフサイクルを上流から下流までのすべてを考えた場合、お客様は生産の目的を達成するために、設計を行います。その後、プラントが完成すると設定を行い、当初の目的を達成するために、試運転と稼働を行います。さらに、プラントの運転段階に入れば、プラントに実際に使う機器や装置が最適な稼働を行うために、信頼性の高い形でメンテナンスを実施しなければなりません。

これらは、情報管理や資産管理の問題になりますが、当社としては、テクノロジーをお客様に提供することで、お客様が設計から運用を行うのに伴い、一連の業務をサポートします。


プロセス産業での優位性を狙う


E N N : 今年7月に、プロセス系エンジニアリングのCADを持つ英アヴィバの株式を53.5%持ち、シュナイダーのソフトウェア部門と統合することで合意したと発表されました。この狙いは何ですか。

Gopinath : 7月の発表は、事前合意です。まだ買収自体は完了していないので、今後、具体的な評価・査定といったプロセスを経て、当局に申請し、承認される必要があります。そのうえで、正式に株式を取得することになります。

E N N : シュナイダーは、インベンシスを買収するなど、プロセス系に力を入れていますが、その狙いは何ですか。

Gopinath : たしかに、2013年にインベンシスを買収しましたが、その狙いは、石油、ガス、石油化学、発電、鉱山といった分野で強みを持つインベンシスを買収することで、これらの分野でプレゼンスを高めようとする狙いがあります。

プロセス業界は、上流から下流まで、連続するステップが複雑に絡まっています。このため、綿密な統合がプロセス間で必要になります。技術的な特徴は、加工・組立型産業とは異なり、物理的な特性が変化することです。つまり、ある原料があった場合、それが物理的かつ科学的な変化を起こし、最終的な製品に仕上がっていく分野です。

高度な数学を用いたプロセスが裏にあるので、これらのプロセスを提供することで、お客様が行う、エンジニアリング、コントロール、管理をサポートできます。これらをサポートする製品に、プロセスシミュレータがあります。

E N N : プロセスシミュレータで幅広い産業に対応できるということですか。

Gopinath : 当社では、シンプルなプロセスから複雑なものまで、幅広い分野のプロセスに対応できる製品を用意しています。石油の上流から石油化学、製薬、鉱山、食品、飲料など、複雑な製造プロセスを持つ企業にニーズに対応できます。

E N N : 現在、どこの地域が大きなシェアを獲得していますか。

Gopinath : 現時点で、最も大きな市場は北米です。次いで、欧州、環太平洋地域と続きます。今後の成長戦略という点では、アジア大洋州、中東、ラテンアメリカの各地域に力を入れます。

E N N : そうした中で、日本市場はどのように位置づけられますか。

Gopinath : 日本は、重要な市場です。特に、プロセス設計、シミュレーション、リアルタイムの最適化の3分野において、重要だと考えています。当社では、エンジニアリング企業とオーナーオペレータの双方に、「SimSci」というシミュレータを提供しています。

このソフトウェアを活用すれば、お客様は機器を実際に使用する以前に、どのようにプロセスを流すべきか、シミュレーションできます。お客様は、プロセス設計を行いながら、生産活動をシミュレーションできます。同時にオペレータのトレーニングも行えます。

E N N : 日本では、プロセスプラントのオペレーションコストの低減や省エネへのニーズが高まっていますが。

Gopinath : そもそも、シュナイダー・エレクトリック自体、省エネに関するソリューション提供のスペシャリストですが、ソフトウェア部門のソリューションを融合することで、独自の優位性を持ったソリューションを提供できると思います。


今後はモバイル端末への展開を重視


E N N : 幅広い産業を対象にしたソフトウェアをお持ちですが、昨年後半以降の原油価格の値下がりは、事業にどのような影響を与えていますか。

Gopinath : たしかに、原油価格の値下がりにより、上流部門のプロジェクトは遅れ気味です。反面、原油を消費するような下流側については、石油精製や石油化学では、影響を受けていません。しかし原油価格の低迷が長引けば、おそらく、石油、ガスの業界のすべてのバリューチェーンにプレッシャーがかかると思います。

ただ、原油価格の低迷により、新規のプロジェクトの具体化が遅れれば、お客様としては、既存のプラントを延命させたり、オペレーションの効率をいかに向上させるかが課題になります。こうしたニーズについては、当社がエンジニアリングをサポートすることで対応できます。

実際に、当社はお客様のプロセスを変更せずに、効率を向上し、スループットの改善が可能です。その場合には、プロセスの業務的なコントロールのやり方を改善することもできます。

当社には、様々な製品を統合したソリューションがありますが、これが強みになっています。例えば、エンジニアリングや業務の改善、リアルタイムでの業務のコントロールもツールの中に含まれていますが、様々な使い方をお客様に提供できる柔軟性が本当の意味での差別化だと考えています。

E N N : 最近、IoTやクラウドが話題ですが、どのように対応されていますか。

Gopinath : IoTには、二つの問題があると思います。一つは、接続したデバイスから、いかに情報を取るかということ、そしてもう一つは、様々なデバイスから得た情報をどのように管理・分析するかという問題です。

当社がターゲットしているプロセス産業においては、生産分野においては、すでに、デバイスの接続に関しては、技術的に担保されています。現在、リアルタイム・コネクティブのプラットフォームによって、すべてのデバイスに対して、接続性は担保されていますから、必要な情報は入手できる状況にあり、意思決定にも活用できます。

今後は、これに加えて、分析および意思決定のサポート部分を提供することで、獲得した情報を効率的に業務環境の中に提供することに焦点を当てていきたいと考えています。

また当社では、ほぼすべてのプラットフォームがクラウドに対応できます。重要なことは、お客様がどのように当社のテクノロジーを使いたいかということです。実際のプラントのコントロールは現場で行わないといけないと考えているかもしれませんが、実際のエンジニアリング活動はクラウドの方が良いと考えているケースもあります。様々なエンジニアの方が協業的な形で情報を共有できるクラウドにおける情報を提供したいと考えています。

IoT、クラウドへの対応もありますが、当社が今、重視しているのは、モバイル端末への展開です。モバイルへの展開は今後の課題と思います。

E N N : ありがとうございました。




















㈱重化学工業通信社
 

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