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インターグラフPP&M、大規模クラウドを日本でも実装
BIM市場への参入も視野、原油価格下落でも活路
                                               2015.9.4

インターグラフPP&M (プロセス・パワー&マリン) が市場とする、オイル&ガス市場が原油価格の下落とともにプロジェクトの進捗が停滞気味だ。しかし、これまで構想段階にあったクラウドの実装が始まり、多様化するユーザニーズを反映させたソリューションも着実に進んでいる。また今後は、建設業界をサポートするBIM(ビルディング・インフォメーション・マネジメント)の市場へも参入する。事業展開は活発だ。

去る7月29・30日の両日、横浜ベイホテル東急で、「INTERGRAPH PP&M JAPAN 2015 USER CONFERENCE」が開催された。例年、7月下旬に日本で開催される、インターグラフが日本国内で開催する最大のイベントだ。今年も、インターグラフPP&M(プロセス・パワー&マリン)のCEOであるゲルハルド・サリンジャー氏が基調講演を行った。近年、日本などのアジア地域向け売上高が地域別構成比で最大になったインターグラフだが、日本市場への積極的な姿勢が示された。

売上高はこの10年間で270%増

PP&M CEO
ゲルハルド・サリンジャー 氏 
サリンジャー氏は講演の中で、PP&M市場において最大シェアを誇るリーダーであることを強調した。インターグラフの資料によれば、2014年のその構成比は47%で、2位アヴィバ30%、3位ベントレー・システムズ11%、その他12%と言う。しかもインターグラフはシェアを2ポイント伸ばした。

売上高も伸長しており、2004年を100とした場合、2014年は370でこの10年間で売上高は270%増加した。


 ■インターグラフPP&M部門の売上高伸び率推移
■インターグラフ社2014年の
  地域別収益構造 


売上高増加の背景には、市場シェアの拡大という要素もあ
るが、インターグラフのソリューションにおけるポートフォリオの拡大が市場を掘り起こしてきたという側面もある。かつては、プラントを建設するための設計に特化してきたが、現在では、プラントの設計・建設・運転まで、ライフサイクルに渡り、ソリューションを提供できる。具体的には、概念設計・基本設計・詳細設計・調達・製作・建設・運転である。

インターグラフは、プラントを建設するEPCコントラクターのみならず、プラントを操業する立場にあるオーナーオペレータのニーズにも対応、プラントのライフサイクルにポートフォリオを拡大してきた。
 ■研究開発投資の伸び率推移
 

こうした製品ポートフォリオの拡大を実現するために、積極的に研究開発も行ってきた。その投資額は、この10年間で2倍に増加した。


製品ポートフォリオの拡大、売上高の伸長に伴い、テクニカル・ユーザ・フォーラム(TUF)の登録数も増加してきた。特にこの3年間ほどは急激に増加しており、2012年初めに1,000名程度だった登録者数は今年1月には1万6,000名を突破している。

インターグラフPP&Mは、最近の10年間を見ただけでも、着実に成長を果たしてきた。


アジア大洋州地域では、日本が好調

 PP&M アジア太平洋地区担当
 上級副社長
 フランツ・フクナー 氏 
しかし昨年後半から始まった原油価格の値下がりは、インターグラフの事業にも影響し始めている。アジア地域の営業を統括する上級副社長のフランツ・クフナー氏は「オイル&ガス、鉱山分野で、プロジェクトの中断や延期により、機会損失が発生している」と言う。

たしかに、原油価格の値下がりは、オイル&ガスなどのプロジェクトにとっては悪影響を与えるだろう。しかしエネルギー価格が下がることで設備投資が活発化する分野もある。石油化学や火力発電プラントの分野では、設備投資が活発に行われるようになっている。

また、インターグラフPP&Mが扱う造船メーカー向けソリューションも比較的に好調だ。このためクフナー氏は「2015年1~6月のアジア大洋州地域の、売上高は4~8%増収した」と言う。特に、東南アジア地域では、各国の経済レベルの向上に伴い、電力需要が増加している。このため、新たな発電プラント建設の投資にも注目している。

このアジア大洋州の売上高の伸長には、日本の貢献も大きい。
現在、千代田化工建設は、シェル~韓KOGAS~中ペトロチャイナ~三菱商事によるLNGカナダ社が計画する年産600万トン×2系列のLNGプラントのFEEDを受注したが、現在、FEED業務を、シェルを中心とする合弁企業とともに、インターグラフの提供するクラウド環境において行っている。このクラウド環境の提供に伴う売上もアジア大洋州の伸長に貢献している。

アジア大洋州地域を見た場合、原油価格の下落に伴い、期待していたオイル&ガスプロジェクトは延期や中止になっているが、電力、マイニング、石油化学などの投資が堅調に推移していることで、オイル&ガス分野の落ち込みを補っている状況にある。


技術面では積極的なクラウド活用、BIM市場参入も視野

 PP&M CTO
 チャールズ・エバンス 氏 
原油価格の値下がりは、インターグラフのビジネスにとっては、マイナスかもしれない。しかしCTO(最高技術責任者)のチャールス・エバンス氏は「生産性向上を目的とした投資が、当社の業績を支えている」と言う。

こうした印象を持つ最大の事例が、シェルや伊ENI向けの実際のプロジェクトでクラウドを実装できたことだ。これまで試験段階だったクラウドが実際のプロジェクトで採用されたことは、インターグラフの事業にとっても、意味がある。

もう一つの成果として、エバンス氏が挙げるのが「SmartPlant Fusion(SPFN)」だ。SPFNは、既存設備の未整理のデータを取得、マスター定義、そして文書・データ間の関係性の構築を行う製品だが、既存設備のデータの有効活用に幅広く適用されている。

また、新たな二つの製品を提供したことが、成功につながった。その一つ目の機能が「マスター・タグ・レジスター(MTR)」と呼ばれる機能だ。この機能は、シェル、シェブロン、コノコフィリップスなどの有力ユーザの要望に応じて搭載されたものだ。もう一つは「スマート・データ・ヴァリデータ(SDV)」と呼ばれるものだ。これは、様々なルールの中で、適応しないデータはリジェクトして、信頼性のあるデータのみを取り込めるツールだ。


またSmart3Dでは、「3D埋設トレンチ」の機能強化も行い、これにより土木工事にも活用できるようになった。トレンチの中には、ケーブルを這わせる物もあり、「SmartPlant Electrical」とも連携が取れるようになった。

さらに「SmartPlant Interop Publisher」という製品は、アヴィバ社の「PDMS」、ベントレー・システムズ社「MicroStation」をリファレンスして、3D環境で管理できるシステムだ。その拡張機能として、メカニカルCADモジュールを要求に従い用意して、コンポーネントを構成する機械物の外形など、必要な情報だけを取り込んでモデルサイドで仕上げるポータルも用意した。

一方、資機材管理を行う「SmartPlant Materials」の機能を強化するために、RFIDを読み取るインタフェースを持つオーストラリアのブルー・アイアン社を買収した。プロジェクトが大型化している昨今だが、資機材管理にRFIDを活用することで、的確な管理が可能になる。

こうしたソリューションを持つインターグラフだが、今後の市場として注目しているのがBIM市場だ。BIMは日本国内では一般に「ビルディング・インフォメーション・モデリング」という意味で使われるが、インターグラフが狙うのは、「ビルディング・インフォメーション・マネジメント」の分野だ。つまり、プロジェクトに関わるデータ・マネジメントを対象にする。「SmartPlant Foundation」「SmartPlant Materials」「SmartPlant Construction」の3製品により、データマネジメントを中心としたBIMに参入する。















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