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 インターグラフ PP&M CEO ゲルハルド・サリンジャー 氏
 幅広いポートフォリオで難局を乗り切る
 データマネジメントソリューションでBIM市場も視野
    2015.9.4

「オイル&ガス」分野のプロセスエンジニアリングを中心に事業展開するインターグラフにとって、昨年来の、原油価格の値下がりは収益にも影響する。しかし「オイル&ガス」分野の事業構成比は全体の50%。最近では、データマネジメント関連のソリューションで対象領域を拡大、原油価格の値下がりの影響は以前よりも小さくなった。
最近では、データマネジメントによりBIM(ビルディング・インフォメーション・マネジメント)への進出も図る。インターグラフPP&M(プロセス・パワー&マリン)のCEOである、ゲルハルド・サリンジャー氏に聞いた。



Gerhard Sallinger
(ゲルハルド・サリンジャー)氏


プロセス産業で30年以上のキャリアを持つケミカルエンジニア。インターグラフに入社する以前は、火災防止システムに特化したエンジニアリング企業を経営していた。

インターグラフに入社後は、ワールドワイドのマーケティングとビジネス開発部門の責任者を経て、1985年にPP&M部門の
CEOに就任。


















原油価格値下がりで市場環境悪化でも先行きには「明るさ」

ENN 原油価格の値下がりで、プロジェクトにはどのような影響が出ていますか。

サリンジャー 原油は、幅広い価格レンジで存在しているので、影響は地域によって、様々です。中近東の油田であれば、バレルあたり15~20ドルで採算が取れますが、海底油田では、もっと高い水準にないと採算の確保ができませんし、カナダのオイルサンドプロジェクトの場合、80~90ドルの水準まで価格が上昇しないと経済性が確保できません。このため、大手エンジニアリング企業の中には、思い切ったリストラを決めた会社もあります。

現在のように、原油価格がバレルあたり48~50ドルの水準で推移した場合、世界のプロジェクトの30~40%くらいがコストに見合わないのではないでしょうか。

ENN 御社の事業には、どのような影響が出ていますか。

サリンジャー 来年の半ばまでは、低水準の原油価格が続くと思います。現在は、最初の予兆が出始めた時期ですから、もう少し様子を見れば、今後、どのように影響してくるか、はっきりと見えてくると思いますが、3次元デザインのライセンスシート数については、減少すると見ています。

ENN インターグラフは最近、インフォメーション・マネジメントの製品を増やされています。こうした製品は、原油価格下落の影響が小さいのではないでしょうか。

サリンジャー 原油価格値下がりの影響を受けるのは、あくまでも「オイル&ガス」の分野です。この分野が売上高の50%を占めますが、残りの50%は発電や石油化学で占められます。発電や石油化学の分野は、原油価格下落の影響により市場が活発化します。これらの分野が活発化することで、「オイル&ガス」分野と相殺されます。

当社は幅広いポートフォリオを持っていますから、仮に原油価格が値下がりしても、全体の50%を占める「オイル&ガス」分野に影響が出るだけです。仮に8~10%の価格低下が直撃したとしても、オーナーオペレータ、産業分野、BIM(ビルディング・インフォメーション・マネジメント)に展開していますから、原油価格下落に伴うリスクを分散できます。

たしかに最近、市場環境は悪化していますが、いくつかの成果により、明るい見通しが見えています。一つは、クラウドをグローバル展開している大型案件である「LNGカナダ社」のLNGプラント建設プロジェクトに導入することができたことです。現在、プロジェクトのFEEDを受注したCFSW(千代田化工, Foster Wheeler,Saipem, WorleyParson)で取り組まれています。

このほかにも、既存設備の未整理のデータをキャプチャする製品「SmartPlant Fusion」が大きな成功を収めているほか、シェルと共同で開発したものですが、様々なルールで検証して信頼性あるデータを取り込むことができるツール「SmartPlant Data Validation」があります。プラントの中には、ケーブルを絡ませるものもあり、「SmartPlant Electrical」と連携が必要なこともあります。こうしたニーズにも対応できます。

一方、お客様の方で、プロジェクトの将来の見通しが見えてきているので、従来のリース契約を製品に切り換えていただいています。3~4年の使用量が見えてきているため、リース契約を継続するよりも、製品を購入して不足分をリース契約にする方が効率的です。こうしたことが売上高を伸ばすきっかけになっています。


「IoT」「BIM」も視野

ENN 最近、IoT(モノのインターネット)が話題になっています。この分野にいち早く取り組まれたのは、機械設計のCADを持つベンダーでした。プロセス系のCADを中心に展開するインターグラフがこの分野に参入して優位性を持てるのでしょうか。

サリンジャー たしかに、機械設計に実績のあるCADベンダーがIoTに取り組んでいます。しかし当社もこの分野にはお客様とともに過去10年間に渡り取り組んできました。

ENN その開発はどのような物ですか。

サリンジャー 「SmartPlant Materials」という資材管理の製品があるのですが、システムの管理のもとRFID・バーコード・GPSを活用したリアルタイムでの資材の搬入・搬出を実現しております。数千億円規模の大型プロジェクトでの資材管理で特に有効と考えています。このため専門性の高い要素技術を有するブルーアイアン社を買収しております。

また、当社の電気・計装設計ソリューションから各種コントロールシステムへ設計情報を提供できる事により、IoTによるリアルタイムなプラント運転管理の実現に貢献しております。

さらに、IoT化を加速させる環境として、数年前からクラウド環境での活用を目標とした開発を始めており、当社製品の運用に最適化されたクラウド環境を目指しております。

ENN BIMへの進出も明確にされていますが、その狙いは何でしょうか?

サリンジャー BIM市場への参入については、勝算があると考えています。当社には、何百万という多くのプラント構成要素を扱うソリューションがあります。

このソリューションにより、大型船の建造、プラットフォームの建設などに取り組んでいます。大規模な設計・建設をハンドリングするためのソリューションをしっかりと揃えています。これらをBIMの世界に活用すれば、生産性が向上するはずです。

ENN インターグラフが目指すのは、世間で言われている「BIM:ビルディング・インフォメーション・モデリング」ではなく「ビルディング・インフォメーション・マネジメント」ですね。

サリンジャー たしかに世間で言われているBIMの分野は、AEC(アーキテクチャ・エンジニアリング・コンストラクション)を対象としたもので、すでに7~8社のCADベンダーが市場に参入しています。当社のBIM市場への考え方は、AECのビジネス市場に、インフォメーション・マネジメント・ソリューションを提供することです。データマネジメントの世界を対象にするわけですから、「BIM」の意味も「ビルディング・インフォメーション・マネジメント」になります。

この分野をカバーできる当社の製品には、「SmartPlant Materials」「SmartPlant Construction」「SmartPlant Foundation」の3つのソリューションです。これらのソリューションを駆使して、BIM市場にデータマネジメントに関するソリューションを提供します。

ENN 現在、最も重視している開発テーマは何でしょうか。

サリンジャー クラウド、モバイル、コレボレーションの3つです。

クラウドは、アマゾンやマイクロソフトでも取り組まれていますが、ここでは、ある程度、標準化されたサービスとして提供されています。当社では、当社製品に最適化されたクラウド環境を提供しています。

モバイル環境、コレボレーションについても、同様に自前で提供しています。こうした方法でソリューションを提供することで、お客様の要望に的確に応えられるようになります。

ENN ありがとうございました。




















㈱重化学工業通信社
 

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