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 ベントレー「i-model」による情報一元化でプロジェクト生産性を向上
 各種フォーマットを格納、効率を引き出す
             2015.6.19

 原子力発電プラントの建設プロジェクトのような大規模プロジェクトでは、様々なフォーマットのエンジニアリングITツールが使用される。各ツールはそれぞれ特徴があり、優れてはいるが、様々なフォーマットのデータを統合的に扱うには、新たなソリューションが必要になる。

  
  ラリー・リンチ (Larry Lynch) 氏
  米ベクテルでパワー部門のプラントEPCに従事した後、Shawグループに転じプロジェクトオートメーションの仕事を手掛ける。
これまでに40年以上に渡り、原子力発電とハイドロカーボン分野のプラント建設プロジェクトを経験している。現在、EPCオートメーション・コンサルタント。

 この問題を解決するソリューションとして、ベントレー・システムズのデータストレージシステム「i-model」がある。米国のベクテルやShaw グループでプロジェクトオートメーションの仕事に従事した経験を持つEPCオートメーション・コンサルタントのラリー・リンチ氏は「i-model」の活用による情報一元化の有効性を強調する。リンチ氏の主張には、大規模プロジェクトを効率的に遂行するために必要なエッセンスがある。

 CADには、多くの種類がある。プラント・エンジニアリング業界が使用している物だけでも、配管設計、架構設計、機械設計、建築設計など、様々な種類が存在している。しかも各設計分野においても、初歩的な機能しか持たない安価なCADから、ハイエンド製品、さらに2次元と3次元など、多種多様なCADがプラント・エンジニアリング業界では使用されている。

 ところが、CADのフォーマットはそれぞれ異なり、データを一元的に扱うことは難しい。しかもデータが一元的に管理されていないために、エンジニアが必要なデータを捜すのに膨大な時間を割いていることもある。エンジニアが「設計をしている時間よりも、データを捜している時間の方が圧倒的に多い」と話すのを耳にすることも珍しいことではない。

 特に、原子力発電プラントやLNGプラントのように、規模が大きなプロジェクトであれば、様々なフォーマットのCADが使用される。その場合、データの管理方法でプロジェクトの効率や生産性は大きく変わる。この問題に解決策は無いのか。


「i-model」の活用で生産性を大幅に向上

 この問題について、EPCオートメーション・コンサルタントのラリー・リンチ氏は、ベントレー・システムズの「i-model」を活用することの重要性を指摘する。

 リンチ氏は、米国のベクテルやShawグループ (2013年に米CB&Iが買収) で原子力発電プラントの建設を多く経験。この経験の中で、「i-model」を有効に活用することでプロジェクトの生産性を向上し、この成果を2013年にベントレー・システムズが主催する「Be Inspired」のファイナリストにも選ばれた。現在は退職し、EPCオートメーション・コンサルタントとして活躍している。

 ラリー・リンチ氏は「CB&Iでは、インターグラフのPDSやSmartPlant、アヴィバのPDMS、ベントレーのPlantSpaceなど、様々なCADが使われていたが、重要なことはエンジニアリングコンテンツをいかにまとめるかだった」と振り返る。「データには、システムナンバー、サイズ、アイソレーション、厚さなど、様々な情報が入力されているが、重要なことは、これらの情報をいかに整理するかだ」と指摘する。

 リンチ氏が取り組んできた原子力発電プラントの建設には、何千人という多くの要員が関わる。この要員は、プロジェクトマネジャー、プロジェクトエンジニア、フィールドエンジニアから配管工まで、幅広い職種の人材から構成される。こうした様々な要員に対して、いかにしっかりとした形でエンジニアリングコンテンツを提供するかが大きな問題になる。

 人間は、同じ物を見ても、感じ方も考え方も違う。しかし、実際のプロジェクトでは、多種多様なフォーマットのツールが使われているために、「同じ物を見る」という必要最小限の前提にも到達できない。

 そこで、リンチ氏は、あらゆるフォーマットの情報を格納できるベントレーの「i-model」の活用による、情報の一元化を行った。これを行うために、まず、そのデータが正確かどうかを見極めるクリーンナップの手続きが必要だった。その次に必要なのが、ストレージという手続きだが、これができれば、後は、「i-model」が毎日、作られるようになる。このシステムができれば、ストレージを行えば、2,000名のプロジェクト関係者が同じ情報を共有できるようになる。

このシステムは、プロジェクトマネジャーやサイトマネジャーのように、意思決定を下す立場にあるトップには重要だった。特に原子力発電プラントに特有なコンクリートの配筋の干渉チェックには有効だった。
「i-model」で配筋の干渉チェックもできる

 原子力発電プラントには、何千、何万という配筋が使われている。これだけの数の干渉チェックには、たいへんな労力が必要とされる。しかし、リンチ氏は「われわれが『i-model』を活用したシステムを作ると、干渉チェックが簡単にできた」。

 しかも「『i-model』を活用することで、すべてのフォーマットに対応できた」と言う。このシステムの使い方は簡単で、3次元CADを活用したことが無い人でも2時間ほどの教育で使うことが可能だった。

 プロジェクトにとって、このシステムが使えるようになったことは、生産性を著しく向上させた。スケジュール管理ソフトの「Primavera」と連携すれば、どのような手順で作業を進めるかが分かる。また、見たい箇所のアイテムやラインのナンバーを入力すれば、そのアイテムやラインが容易に見つかる。

 「i-model」は、2次元、3次元の区別なく、データを扱うことができる。実際のプロジェクトでは、必ずしも3次元データがすべて揃えられているわけでもない。2次元データを組み合わせたデータが活用されていることもある。しかし「i-model」では、2次元でも3次元でもデータを格納できる。シニアのエンジニアの中には、3次元CADを使いたがらず、2次元CADを使う者もいる。サブコンの中にも2次元CADしか使えないケースもある。こうしたケースにも、「i-model」は問題なく対応できる。

「i-model」プロセスワークフロー 

 こうした特徴は、メガプロジェクトにとって、非常に大きなインパクトを持つ。
 データを一元化できないと、プロジェクトのスケジュールを立てる場合、すべてのデータを把握せずに、スケジュールを立てることになる。しかし一元化できれば、エンジニアリングコンテンツと各コンテンツが持つ属性を分かったうえでスケジュールを立てることができる。このことは、プロジェクトの意思決定にも影響し、プロジェクト全体にも大きなインパクトを与えることになる。


データを属性とともに格納できる「i-model」

 リンチ氏は、「i-model」の優れた点について、管理性・倉庫性・付属性の3点を挙げる。

 実際、3次元コンポーネントのデータは、ほとんどが3次元CADデータから提供されている。このため、「i-model」のデータのほとんどが属性を持っている。リンチ氏は「属性やラインを分かりながら、スケジュールを決められることが大きい」と指摘する。そして「このインパクトは、技術的な物よりも、プロジェクトの効率に与える影響が大きい」と言う。

 例えば、プロジェクトマネジャーがメインコントロールシステムに問題を発見した時、モデルを持ってきて、メインコントロールシステムを選択すれば、そのコマンドを捜すことで問題を発見できる。この方法を使えば、かつては問題を見つけるのに3日間ほどかかっていたかもしれないが、短時間で問題を捜しだせる。

 プロジェクト・シミュレーション
 リンチ氏は「配筋と他の機械の干渉チェックができるのは、『i-model』が初めて。『i-model』では、属性情報が提供されているため、接続方法など、詳細のチェックもできる」と指摘する。

 また「i-model」は、一つのコンポーネントにスケジュールを振ることで、プロジェクトのシミュレーションにも対応できる。

 データを属性とともに格納できる「i-model」。この活用方法で、プロジェクトはまだまだ生産性を向上させることができそうだ。



















㈱重化学工業通信社
 

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