TOP PAGE  定期購読・サンプル申し込み
  プラントコストインデックス 「ENN-PCI」 2024年 第3四半期
AACE International 日本支部
ENN-PCI 委員会

1. はじめに

2024年第3四半期(7〜9月期)のプラントコストインデックスENN-PCIを算定し、2000年からの推移を図1に示した。最近2年間は各期1ポイント前後の緩やかな上昇が続いた後、前期は4.7ポイント、今期は1.9ポイントの上昇となった。

世界的に減速過程にあったインフレ率は総合、コア(*1)ともに下げ止まった。コアインフレ率はサービス価格の高止まりから、米英等わずかに上昇に転じた国もある。2025年の世界全体の実質成長率は、最新見通しでIMFが3.2%、OECDは3.3%であり、2024年実績(直近の暫定値)とほぼ同じである。コロナ禍前2010年代の平均的な成長率の水準(3.6%程度)をまだ取り戻せていない。

         *1 コアインフレ率:総合のインフレ率からエネルギー、食品を除いたインフレ率。
                     インフレの基調を示すとされる。


 図1 プラントコストインデックス ENN-PCI の推移


2. 世界経済

トランプ政権の減税と規制緩和を軸とする経済対策は中長期的に米国経済に好影響をもたらすと思われるが、政権発足当初は、関税政策次第ではインフレ率を押し上げる懸念もある。トランプ氏が当選早々に明言したメキシコ、カナダへの関税強化は不法移民と薬物流入阻止を目的としたディールの要素が強い。他の国との通商交渉とは分けて捉える必要がある。

中国のデフレ不況は依然として深刻である。消費者物価は前年同月比ゼロ近辺で推移し、生産者物価も26カ月連続のマイナス(2024年11月現在)、新築住宅販売額が漸くプラス(2024年10月)に転じた程度である。中国政府は3月開催の全人代(*2)で具体的な需要喚起策を打ち出すことを予告しているが、その内容・規模が不十分と評価された場合、失望感が拡がる恐れがある。

原油市場は中国の需要不足に加えて中東情勢のイスラエル優位の定着により落ち着きを見せている。米国で脱炭素政策が見直されても、すぐにシェールオイルの増産体制が整う訳ではなく、さらなる需給の緩みは少し先になりそうである。

      *2 円キャリートレード:全国人民代表大会(各国の国会に相当)。
         当年の重要な方針・施策が発議され、形式的な投票だが、その結果を以て承認される。




   表1 反応器類(コスト要因PCI)
                   2000年=100

   ■プラント計


3. 我が国の経済

2024年の実質成長率は0.3%程度に留まる見込みである。昨年6月にプラスに転じた実質賃金はその後ゼロ近辺で推移しており、まだ消費回復に大きな期待は出来ない。

深刻化する人手不足は、景況感の如何に関わらず賃上げを継続しないと従業員を確保出来ない局面になりつつある。賃上げが継続する社会の実現にはプラスだが、企業の体力差により企業間の優勝劣敗が進んで行く。(人手不足感は2024年12月の法人企業景気予測調査、日銀短観で確認)

ドル円は円キャリートレードの本格的な再開は見られないが、米国長期金利の高止まりと日銀の遅い利上げペースから日米金利差は早々に縮まらないとの市場の思惑があり、円安傾向は続くと見る。


4. ENN-PCIの変動要因

ENN-PCI(コスト+需給要因)は244.2となり1.9ポイント上昇した。主要材の厚中板は微減、ステンレス板は引き続き増加となったが総じて横ばい。ケーブルは下落したが他の材料は堅調であった。

人件費は機材、工事とも引き続き増加している一方で、建設業の営業利益が大幅に低下したため工事費は配管工事を除いて下落した。

  ・表2 ENN-PCI(コスト要因)PDFをダウンロードする
  ・表3 ENN-PCI(コスト要因 + 需給要因)PDFをダウンロードする


  ※PDFを御覧頂くには、ENN 2025年1月25日号(Vol.568)「プラントコストインデックス ENN-PCI」
   50ページに掲載されているユーザー名・パスワードの入力が必要になります。



5. ENN-PCIの将来予測

2024年第4四半期以降の将来予測値を表4に示す。

鉄鉱石と原料炭の先物価格は、安値水準付近で横ばい状態が続いている。また、ニッケル価格(LME)は15,000ドル/トン近辺の低水準で推移し、銅価格も8,800ドル/トンを割り込んでいる。これには中国経済の深刻な不況が影響していると考えられ、材料の先高観は無い。

一方、設備投資は半導体関連工場やデータセンターの新増設が活発であり、建設需要は堅調であるため、ENN-PCIの今後も緩やかに上昇していくと予想する。


  表4 ENN-PCIの将来予測値                           2000年=100

  ※ AACE International は米国に本部を置く国際コストエンジニアリング推進協会
   (The Association for the Advancement of Cost Engineering International)である。
   そのAACE日本支部がENN-PCI委員会を設立し、我が国のコストインデックスとして
   ENN-PCIの執筆を担当する。 ご参考:
https://www.aace-japan.org/


  お問い合わせ

 株式会社 重化学工業通信社 編集部 TEL:03-5207-3332 faq@jkn.co.jp