プラントコストインデックス 「ENN-PCI」 2024年 第2四半期
AACE International 日本支部
ENN-PCI 委員会 |
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2024年第2四半期(4〜6月期)のプラントコストインデックスENN-PCIを算定し、2000年からの推移を図1に示した。ここ直近の7四半期は各期で1ポイント前後の緩やかな上昇であったが、今期は4.7ポイントの上昇となった。
年初から世界中で総合のインフレ率は減速する過程にあったが、各国とも各種のサービス価格を主体とするコアインフレ率(*1)は下げ止まっている。高止まりした賃金によるインフレ圧力にはまだ注意が必要である。なお、IMF、OECDは世界全体の実質成長率の見通しをほとんど変えていない(最新見通しIMF3.2%、OECDは3.2%で前回予測から0.1ポイント上方修正)。
*1 コアインフレ率:総合のインフレ率からエネルギー、食品を除いたインフレ率。
インフレの基調を示すとされる。
図1 プラントコストインデックス ENN-PCI の推移 |
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米国では労働市場に弱い指標が現れ始めたため、FRBは予防的措置として9月に0.5%の大幅な利下げを行ったが、その後の雇用統計は市場予想を上回り、景気の先行きへの不安感は後退した。一方、欧州は春先に景気が底をうった後若干の回復が見られたが再び景気の指標は悪化している。
中国の9月時点での不動産販売額は前回(2024年第1四半期)の推定以上に前年比で3割を超える落ち込みとなり、地方政府の財政も各地で破綻を示す兆候が現れている。
消費者物価もコロナ禍明け後2年近く横ばいのままである。一方、製造業と輸出はその数量を維持しているが、中国政府の経済対策は供給面に偏重しており、デフレの克服に必要な消費を喚起する対策を充分に打ち出していない。
原油は、年末にはOPECプラスの協調減産が終焉する見込みであり、中国の不況もあって需給面の基調は弱いが、価格は中東情勢により強含みに推移している。イスラエルとイランの本格的な交戦にまで悪化する可能性は低いがその推移には引続き注意が必要である。
表1 反応器類(コスト要因PCI) 2000年=100
■プラント計
実質成長率は4-6期にプラス(年率換算2.9%)に転じた。実質賃金も6月に漸くプラスに転じた後、消費も緩やかに回復している。(8月商業動態統計)
設備投資は省力化対応を目的としたものが多く引続き増加傾向だが、人手不足の深刻化に設備投資と雇用両面の対策が追いついていない。製造業では中小企業の景況感の見通しは未だ改善していない。(2024年9月法人企業景気予測調査、日銀短観業況判断DI等)
為替は7月下旬からに急に円高に振れた後に円安方向に戻っているが、円キャリートレード(*2)は解消されたままであり、さらなる円安への戻りは限定的と思われる。
*2 円キャリートレード:低金利通貨の円で資金を借りて他国の金融商品に
投資する投機的取引。マクロ的に大きな円安要因となる。
ENN-PCI(コスト+需給要因)は242.5となり4.7ポイント上昇した。主要材の厚中板はほぼ横ばい、ステンレス板は下げ止まり微増となった。一方、工事材では銅価格が5月に高値になった影響でケーブル価格が大幅高となった。人件費は機材、工事とも引き続き微増だが、企業の営業利益は大きく伸びており前期より大きな増加となった。
・表2 ENN-PCI(コスト要因)PDFをダウンロードする
・表3 ENN-PCI(コスト要因 + 需給要因)PDFをダウンロードする
※PDFを御覧頂くには、ENN 2024年10月25日号(Vol.563)
「プラントコストインデックス ENN-PCI」 50ページに掲載されている
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2024年第2四半期以降の将来予測値を表4に示す。
鉄鉱石、原料炭の先物価格は横ばいで推移しているが、ニッケルはロシアの鉱物輸出制限の思惑で底値圏から上昇へ転じているため注意が必要である。ドル円レートは円安方向に大きく振れて160円台になった後、140円台に戻ったこともあり、材料の先高観はない。
一方、旺盛な設備投資により、人件費の価格への転嫁が継続されると予想され、今後もENN-PCIは緩やかに上昇していくものと考えられる。
表4 ENN-PCIの将来予測値
2000年=100
※ AACE International は米国に本部を置く国際コストエンジニアリング推進協会
(The Association for the Advancement of Cost Engineering International)である。
その日本支部(略称JSCE:Japan Section of AACE International)がENN-PCI委員会を設立し
ENN-PCIの執筆を担当する。 ご参考:https://www.aace-japan.org/ |
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